製品レポート

初心者必見!自作PCパーツの選び方【電源ユニット編】

安定動作に重要な電源ユニットの選ぶポイントをご紹介

電源ユニットは文字通り各パーツに電力を供給するパーツです。PCの性能に直接影響しないため重要性が分かりにくいですが、安定動作には重要です。製品選びのポイントを見て行きましょう。基本的には、本体サイズ、端子の種類と数、容量で考えればOKです。

より実践的な電源ユニットの選び方は、一問一答形式の「電源ユニットはどう選べば良い?性能や使い勝手Q&A12選」でご紹介しています。具体的な製品選びにステップアップしたら、最適な電源ユニットを絞り込んでいきましょう。

PCパーツの選び方 電源ユニット編

サイズの規格にも種類がある

使うのはほぼATXとSFXのみ

電源ユニットには規格がたくさんありますが、自作PCで使うのは主にATX規格とSFX規格の製品です。規格名を取ってATX電源、SFX電源と呼びます。ほかにもTFXやFlex ATXという規格もありますが、あまり使われていません。

ATX電源の例

ATX電源の例。本体サイズは製品によってまちまちですが、ねじ穴の位置があるため、幅と高さは規格通りに作られています。

SFX電源の例

SFX電源の例。自作PC用以外では同じ規格でもサイズが異なる場合があるため注意が必要です。

ATX電源は規格上、本体サイズが幅150×奥行き140×高さ86mmとされていますが、奥行きは製品によってまちまちです。130mmなど本来よりも小さい場合もありますし、大型の製品では200mmを超えるようなモデルもあります。PCケースの仕様を確認し、取り付けられるものを選びましょう。

自作PCで使うSFX電源は基本的に幅125×奥行き100×高さ63mmとなっています。しかし、規格で定められたサイズが複数あるため、自作ではなく完成品PCの電源ユニットを交換する際などは仕様をよく確認する必要があります。一部のメーカーは独自にSFX-Lという規格を作り、奥行きを130mmなどに拡張した製品も販売しています。

端子の数とケーブルの長さをチェック

ケーブルの種類も重要

製品選びの際は、ケーブルと端子の数をチェックすることも重要です。可能であれば、数だけでなく各ケーブルの端子の配置も確認するとよいでしょう。使用するPCケースの大きさやケーブルを通すスペースの配置、ドライブベイの配置などによって、端子の数は足りているけども届かないといったことも起こり得ます。

まずは電源ユニットにある端子を確認していきましょう。

メイン24ピン端子

メイン24ピン端子

マザーボードにつなぐメイン端子です。昔の仕様の名残りで20ピンと4ピンに分かれていることも多いですが、20ピンだけを使うことはまずありません。

電源端子はこのように一部のピンが分離していることがあり、分離していることを示すために「20+4ピン」という風に表記する場合があります。

ATX 12V(EPS 12V)端子

ATX 12V(EPS 12V)端子

CPU用の補助電源端子です。元は4ピンでしたが、現在はほとんどの場合さらに4ピンを追加した8ピンを使います。8ピンはサーバー向けマザーボードから普及したため、そちらの規格名からEPS 12Vと呼ぶこともあります。ハイエンドマザーボードはこの端子を複数備えていることもあります。

PCI Express電源端子

PCI Express電源端子

主にグラフィックボードで使う端子です。6ピンと8ピンの2種類があり、両方に対応するため6ピンと2ピンを分離してあることがほとんどです。グラフィックボードを使う場合は特に注意が必要です。

グラフィックボードをはじめ拡張ボードはPCI Expressスロットから電力供給を受けるため、追加用という意味を込めてPCI Express補助電源端子と呼ばれることもあります。

12VHPWR端子

12VHPWR端子

主にグラフィックボードで使う端子です。PCI Express電源端子よりピン数が多い12ピンとなっており、1個の端子で大きな電力を扱えるのが特徴です。ハイエンドのグラフィックボードは電源端子を3個備えている製品が多く、そのぶんケーブルが増えてしまうことへの対策として開発されました。

規格上は150W、300W、450W、600Wのパターンがありますが、8ピンのPCI Express電源端子が150Wに対応しているため、実際は300W以上で利用されることになるでしょう。12ピン端子の上に「サイドバンド信号」用の4ピン端子も備えています。

SATA(Serial ATA)電源端子

SATA(Serial ATA)電源端子

元はSerial ATAのHDDや光学式ドライブ用の電源端子でしたが、それ以外の機器もこちらを使うことが増え、汎用の電源端子になっています。

ペリフェラル4ピン端子

ペリフェラル4ピン端子

ペリフェラルは周辺機器という意味で、PCに内蔵する機器で利用する電源端子です。昔は内部用の電源端子といえばこれでしたが、Serial ATAが登場してからは出番が減っています。

FDD用端子

FDD用端子

今は使われていない、フロッピーディスクドライブ用の端子です。備えていないモデルの方が多いですが、まれに変換ケーブルが付属しています。使う機会はほぼありません。

ケーブルの特徴を見極める

ケーブルにもいくつかの種類があります。電源ユニットの性能というよりも、組み立てやすさにつながる要素です。

フラットケーブル

電源ケーブルは1つの端子につき複数のケーブルで構成されています。これがバラバラだと配線時に引っ掛かったり重なってかさばったりし、見た目も良くありません。そこで同じ端子につながるケーブルをまとめて1本の平らなケーブルにしたものがフラットケーブルです。配線がしやすくなります。

ケーブルの被膜を一体化させて平らに成形したケーブルです

ケーブルの被膜を一体化させて平らに成形したケーブルです。ケーブル同士が重なってもかさばりにくく、配線がしやすくなります。

スリーブケーブル

スリーブはケーブル本体の外側にもう1枚取り付けるカバーです。複数本のケーブルを1つにまとめる場合と、1本1本をスリーブで覆う場合があります。後者は別売のオプションパーツになっていることがほとんどです。

ケーブルをスリーブで覆って一つにまとめているタイプ

ケーブルをスリーブで覆って一つにまとめているタイプです。ばらけなくなり、ケーブルの被膜を守れるというメリットがありますが、かさばりやすくなります。

ケーブル1本1本にスリーブを取り付けているタイプ

ケーブル1本1本にスリーブを取り付けているタイプです。見栄えが良いのがメリットですが、ばらけやすいためコームと呼ぶ留め具と併せて使うのが一般的です。

モジュラーケーブル(着脱式ケーブル)

ケーブルが電源ユニット本体から分離しており、組み立て時につなぐ方式です。直付けの場合は余ったケーブルの収納場所に困ることがありますが、モジュラー方式なら不要なケーブルは外しておけるので配線をすっきりさせられます。

端子が本体から出っ張るため、奥行きが伸びる形になります。通常、電源ユニットの仕様の奥行きは端子を含みません。モジュラー方式の電源ユニットを選ぶ場合はPCケースの設置スペースに余裕をもたせると良いでしょう。

電源ユニット本体に専用の端子を備え、ケーブルを着脱できる方式

電源ユニット本体に専用の端子を備え、ケーブルを着脱できる方式です。使うケーブルを選べるのがメリットです。

冷却ファンの仕様にも注目

静音性重視ならファンレスやセミファンレスも

電源ユニットは動作時に発熱するため、基本的に冷却ファンを搭載しています。ファンの回転数が一定の製品はほとんどなく、負荷や内部の温度に応じて回転数を制御するようになっています。ファンそのものが電源ユニットの中にあり、さらにPCケースの中に収めるため特別意識しなくてもうるさいと感じることはあまりないと思われます。

より静かなPCを組みたい場合は、ファンの口径が大きい製品を選ぶとよいでしょう。口径が大きいほど風量が大きくなり、低い回転数で動作させられるためです。多くのATX電源が120mmファンを搭載しており、本体サイズが大きいモデルでは140mmファンが使われることもあります。また、発熱の主な原因は変換時のロスのため、後述する変換効率が高いモデルを選ぶのも良い選択です。

さらに静音性を求めるならファンレスやセミファンレスという選択肢もあります。ファンレスはファンを搭載していないモデル、セミファンレスは低負荷時にファンの動作を止める機能を備えたモデルのことです。いずれもファンが動いていなければ動作音もありません。

容量選びは難しい

大きいほど良いわけではない

電源ユニットを選ぶ際の指標になるのが容量(定格出力)です。PCの使用する電力が電源ユニットの容量を上回ると、システムがシャットダウンする、再起動するといった現象が起こります。そのため、ギリギリではなく余裕を持った容量の製品を選ぶのが良いとされます。

しかし、容量は大きいほど良いかというとそうとも言えません。電源ユニットはコンセントから供給される交流電流を直流電流に、100Vの電圧を5Vや12Vなどに変換しており、その際にロスが発生します。変換の効率は容量の50%を使っている時が最も高く、そこから外れるほど低くなります。そのため負荷時の消費電力が容量の50%になるようにするのが良いとする考え方もあります。

変換効率が落ちると、例えば100Wの電力をまかなうために110W必要なところが、同じ100W使うために140W必要になるといったことが起こります(その分電気料金が高くなります)。最大まで負荷をかけても50%に届かないようであれば、効率が悪い状態で動作させていると言えるでしょう。

もっとも、自作PCは基本的に構成が全て異なるため、実際に計測しない限り正確な消費電力を知るのは困難です。効率が悪いと言っても電気料金への影響は軽微なので、厳密に考える必要はありません。

CPUとグラフィックボードの選択が目安

PCの消費電力の大半はCPUとグラフィックボードなので、どのモデルを選んだかで目安が分かります。

CPUはグラフィックボードほど消費電力が高くないため、CPU内蔵のグラフィック機能を使う場合はハイエンドクラスのCPUでも最大400W台に収まります。グラフィックボードを使わない、ミドルクラスのCPUを使った構成であれば、電源ユニットの容量は400Wもあれば十分でしょう。ハイエンドCPUを使わない限り、容量不足を心配する必要はありません。

自作PC用パーツの中で最も消費電力が高くなるのはグラフィックボード

自作PC用パーツの中で最も消費電力が高くなるのはグラフィックボードです。高性能なモデルを使う場合、PCの総消費電力の半分以上がグラフィックボードになります。

ミドルクラス以上のグラフィックボードを使う場合、システムの最大消費電力は200W台なら低い部類になり、ハイエンドモデルでは600Wを超えることもあります。大容量の電源ユニットはこのクラスのPCを想定したものになります。

製品選びの際はグラフィックチップ(GPU)メーカーのWebサイトが参考になります。各GPUの仕様に推奨する電源ユニットの容量が記載されているためです。おおまかな目安としては、ミドルクラスで600W前後、ハイエンドクラスで800W前後となります。少し余裕を持たせた容量が記載されているため、この容量以下では動作しないというわけではありません。ただ、その場合はPCI Express電源端子の数が足りていることを確認しましょう。

メディアによるグラフィックボードのレビューも参考になります。同じGPUのグラフィックボードを使う場合、まったく同じではないものの近い消費電力になることが推測できます。

もっと詳しく自分のPCの消費電力が知りたい場合は、簡易的な電力計であれば数千円で購入できます。高い精度は期待できませんが、目安としては利用できます。

電圧ごとの出力をチェック

電源ユニットはコンセントから100Vの入力を受け、PCパーツが使用する3.3V、5V、12Vに変換します。この時、それぞれの電圧で出力可能な電流値の上限が決まっています。消費電力が容量内に収まっていても、特定の電圧が上限を超えるとPCは正常に動作しなくなります。

各電圧の仕様の例

各電圧の仕様の例。各電圧の最大出力を足すと容量を超えるため、全ての電圧を同時に最大まで使うことはできません。

3種類の電圧のうち、特によく使うのが12Vです。CPU、グラフィックボードと消費電力の大きいパーツで使用するため、注意が必要です。

12Vはモデルによって系統(レーン)が分割されている場合があります(「マルチレーン」と呼び、それぞれの系統をV1、V2などと呼びます)。分割することで各系統に流れる電流が減り、システムが安定しやすくなるとされています。一方、分割することでそれぞれに最大電流値が定められ、一方でもオーバーすると正常動作しなくなるという弱点もあります。

分割しない「シングルレーン」を採用する製品も多く、こちらは容量内で電力不足になる心配がないというメリットがあります。マルチレーンの弱点がそのまま強みになる形です。現在はシングルレーンが主流になっています。

80 PLUSについて

販売されている電源ユニットの多くが80 PLUS認定を取得していることを売りにしています。これはその電源ユニットが一定以上の変換効率を備えていることを示すもので、「80 PLUS」「80 PLUS Bronze」「80 PLUS Silver」「80 PLUS Gold」「80 PLUS Platinum」「80 PLUS Titanium」の6段階があります。製品価格に影響するため、PlatinumやTitanium認定を取得しているのはハイエンド製品が中心です。

「80 PLUS Bronze」のロゴ

「80 PLUS Bronze」のロゴ。ロゴが印刷されている製品は変換効率が高いことが認定されています。

総容量に対する消費電力の割合 10% 20% 50% 100%
80 PLUS 80% 80% 80%
80 PLUS Bronze 82% 85% 82%
80 PLUS Silver 85% 88% 85%
80 PLUS Gold 87% 90% 87%
80 PLUS Platinum 90% 92% 89%
80 PLUS Titanium 90% 92% 94% 90%

認定に要求される変換効率の一覧。負荷が20%、50%、100%の時の変換効率が基準を上回る必要があります。「80 PLUS Titanium」のみ10%時も対象になっています。

ランクが上がるほど変換効率はよくなります。ただ、上がるほど一つ下のランクからの伸び幅は小さくなる一方で、認定を得るためのコストは上がっていきます。そのため、コストパフォーマンスが高いのはSilverやGoldを取得した製品になります。低価格帯ではコストダウンのためにどれも取得していない製品もありますが、取得していないからといって変換効率が低いとは限りません。

高級モデルは保護回路も豊富

異常時に事故を防ぐ

最後に製品の安全性について紹介します。電源ユニットは、普通の使い方をしていても何かしらの理由で異常な電圧や電流が流れる、内部温度が高くなり過ぎるといった現象が起こることがあります。そうした時に自動的にシャットダウンし、危険な事故を防ぐ機能が必要です。

代表的な機能としては、過電圧保護回路(OVP)、低電圧保護回路(UVP)、過温度保護回路(OTP)、ショート防止回路(SCP)、過負荷保護回路(OPP)などがあります。ほとんどの製品が備えている機能ですが、仕様に明記されていると安心です。

コンデンサー(電解コンデンサー)の仕様を売りにしている製品もあります。コンデンサーは電流を滑らかにする働きがあり、品質が電源ユニットの寿命に影響します。日本メーカー(日本ケミコンやニチコンが代表的です)のコンデンサーは高品質と言われており、「日本製コンデンサー採用」はセールスポイントとしてよく利用されています。

また、コンデンサーの寿命は温度の影響を強く受け、仕様上の最大温度と使用中の温度の差が大きいほど寿命が長くなります。電源ユニットで使われるコンデンサーには最大温度が85℃のものと105℃のものが多く、後者の方が寿命は長くなります。そのため「105℃コンデンサー採用」もセールスポイントとして使われています。

最大負荷時にきちんと動作すればOK

見た目の好みも重要

電源ユニットはCPUやグラフィックボードと異なり、どれだけ高価で高品質な製品を使っても実感できる機会はほとんどありません。それだけに、製品選びの基準に趣味やこだわりの占める割合が大きいパーツと言えます。必要な端子の数と容量さえ押さえておけば、後は好みで選んでしまってもよいでしょう。PCケースは電源ユニットを隠してしまうデザインがトレンドですが、RGB LEDで光る電源ユニットを使ってあえて隠さないというアレンジもできます。好きなものを選べるという意味では、自作PCらしいパーツと言えます。

(文・写真=SPOOL

※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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