CPUは動作する際に発熱し、性能が高いほど発熱も大きくなる傾向がある。CPUの温度が一定以上に高くなると、動作クロックが落ちるなど本来の性能を発揮できなくなるため、高性能なCPUには高性能なCPUクーラーが必要だ。
CPUクーラーには空冷式と水冷式がある。一般的に、水冷式の方が冷却性能は高い。今回は水冷式のCPUクーラーを紹介しよう。水冷式のCPUクーラーには、パーツ単位で購入して自分で組み立てる「本格水冷」と、あらかじめ組み立てた状態で出荷される「一体型水冷」に分けられる(「簡易水冷」とも呼ぶ)。本記事で扱うのは後者の製品だ。
一体型水冷CPUクーラーの性能を大きく左右する要素は、ラジエーターのサイズとファンの性能だ。特にラジエーターサイズの影響が大きく、冷却性能を重視するならできるだけ大きなモデルを選ぶのがよい。ただし、大きなモデルはPCケースのサイズやデザインによって取り付けられないこともある。冷却性能と互換性の高さのバランスが良いラジエーターサイズは、多くのATXケースが対応する360mmクラス。そこで、今回は360mmラジエーターを搭載した5製品を紹介する。
目次
デザインや取り付けやすさもポイント
製品選びのポイントは、冷却性能だけではない。ここ1、2年で、一体型水冷クーラーは様々な面で進化している。
1点目はデザインだ。一体型水冷クーラーはラジエーター、ファン、ポンプヘッドと、それらをつなぐチューブで構成され、見た目が似た製品が多かった。しかし、現在は本体を白基調にしたホワイトモデルやRGBファンによるライティング、ポンプヘッドの装飾など、各社がデザインに工夫を施している。ピラーレスタイプのPCケースが流行していることもあり、CPUクーラーはPC内部を彩るインテリアとしての機能も重視されるようになっている。
2点目は取り付けやすさだ。一体型水冷クーラーは組み立てや配線の手順が多いという特徴がある。ラジエーターのサイズが大きい場合、2、3基のファンを取り付けることになり、それぞれに電源用とLED用のケーブルが必要になるためだ。360mmクラスの製品なら、ポンプとファン3基それぞれ2本ずつ、合計8本のケーブルが必要。ケーブルが増えればまとめるのも相応に手間がかかる。
そこで、最近はデイジーチェーン接続に対応したファンを付属し、連結させることで配線の手間を減らす、複数のファンを1つのフレームに一体化させるなどケーブルの数を減らす工夫をした製品が増えている。出荷状態でファンがラジエーターに取り付け済みの製品もある。組み立ての手間を減らせるため、ここもチェックしておきたい。
それでは、今回の製品を見ていこう。
ポンプカバーの「インフィニティミラー」が美しいホワイトモデル
Masterliquid 360 Core II White(Cooler Master)
対応ソケット | Intel:LGA1851/1700/1200/1151/1150/1155/1156 AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載)×3 |
ファンの回転数 | 650~1750rpm±10%(PWM対応) |
ファンコネクター | 4ピン |
風圧 | 最大2.1mmH2O |
風量 | 最大70.7CFM |
騒音値 | 最大30dB(A) |
ポンプコネクター | 4ピン+ARGB 3ピン |
ポンプ騒音値 | 最大25dB(A) |
ラジエーターサイズ | 幅394×奥行き119.2×高さ27.2mm |
型番 | MLW-D36M-A18PA-RW |
JANコード | 4719512154861 |
アスクコード | FN2432 |
白を基調としたカラーリングが特徴のモデル。アドレサブルRGB LEDを搭載したファンが付属し、ポンプヘッドに奥行きを感じる「インフィニティミラー」デザインを採用している。改良型の「G9Rデュアルチャンバーポンプ」を備え、静音性を高めている。
付属ファンはラジエーターに取り付け済みで、専用端子でデイジーチェーン接続してある。パッケージから取り出すと上の写真の状態になる。一体型水冷クーラーを使ったことのある人なら、かなり手間が減ることが分かるだろう。
RGBコントローラーは付属しないため、配線する際は付属の分岐ケーブルでマザーボードのファン端子とアドレサブルRGB端子に接続する。ポンプヘッドも電源とアドレサブルRGB用のケーブルがあり、使用するケーブルは合計4本。360mmラジエーターの水冷クーラーとしてはかなり少ない。
付属品の一覧(マニュアルを除く。以下同)。全ソケットでポンプヘッド側の金具が共通なので、付属品は少なめだ。ケーブルは専用8ピン端子からファン用4ピンとアドレサブルRGB用3ピンへの分岐ケーブル。チューブ用のコーム(チューブの位置を整える器具)が付属しているのが特徴的だ。
独自規格の「iCUE LINK」で一括管理、簡単配線を実現
iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White(CORSAIR)
対応ソケット | Intel:LGA1851/1700 AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | 120mm(iCUE LINK RX120 RGB)×3 |
ファンの回転数 | 300~2100rpm±10% |
ファンコネクター | iCUE LINK |
風圧 | 0.12~4.33mmH2O |
風量 | 10.4~73.5CFM |
騒音値 | 10~36dB(A) |
ポンプコネクター | iCUE LINK |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅396×奥行き125×高さ27mm |
型番 | CW-9061021-WW |
JANコード | 0840006685463 |
アスクコード | FN2354 |
CORSAIRの独自規格、「iCUE LINK」に対応した一体型水冷クーラー。「FlowDriveエンジン」と呼ぶ、三相モーターポンプと流路を最適化したヘッドを採用し、静音化したという。
「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White」の特徴は、やはり「iCUE LINK」に対応すること。機器を専用のケーブルでつなぎ、「iCUEソフトウェア」で一括管理できるという規格だ。機器同士をつなぐデイジーチェーン接続に対応しており、一般的な製品と比べて配線の数を大幅に減らせる。ケースファンやLEDストリップもまとめて管理できるため、使用する対応機器を増やすほどメリットが大きくなる。
本製品もファンは取り付け済み。専用ケーブル1本で「iCUE LINKシステムハブ」とつなげば3基のファンをまとめて配線できる。ポンプヘッドはファンとつなげばファン経由で「iCUE LINKシステムハブ」に接続される。もちろん「iCUE LINKシステムハブ」に直接つないでもよい。こうした配線パターンの自由さも魅力だ。
「iCUE LINK」対応モデルのため、付属品も独特。右上にあるのが「iCUE LINKシステムハブ」だ。「iCUE LINKケーブル」は3種類付属していた。「iCUE LINKシステムハブ」はファンやポンプの電源を供給する機能もあるため、PCI Express用6ピンの電源ケーブルをつなぐ必要がある点は注意が必要だ。
ポンプヘッドにはアドレサブルRGB LEDを搭載しており、淡く光る。トッププレートはマグネットで固定されており、簡単に着脱可能。ポンプヘッドをどの向きで取り付けてもロゴの向きを直せる。また、同社の「CapSwap」に対応しており、別売のポンプキャップと交換することもできる。
ポンプヘッドに液晶パネルを内蔵、シングルフレームファンがユニーク
Kraken Plus 360 RGB v2 White(NZXT)
対応ソケット | Intel:LGA1851/1700/1200/1151/1150/1155/1156 AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | F360 RGB Core EVファン×1 |
ファンの回転数 | 500~2400rpm±250rpm(PWM対応) |
ファンコネクター | 8ピン(ファン+RGB LED) |
風圧(ファン1個あたり) | 最大3.07mmH2O |
風量(ファン1個あたり) | 最大75.05CFM |
騒音値(ファン1個あたり) | 最大31.9dB(A) |
ポンプコネクター | SATA+3ピン(回転数検知用) |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅394×奥行き119.2×高さ27.2mm |
型番 | RL-KR360-W2 |
JANコード | 0810074845359 |
アスクコード | FN2488 |
ポンプヘッドに1.54インチの液晶ディスプレイを搭載したモデル。同社製「CAM」ソフトウェアでCPU温度や画像などを表示できる。独自設計の「Turbineポンプ」により、高いパフォーマンスと静音動作を両立したとしている。
ファンは取り付け済みではないものの、複数のファンを1個のフレームに収めた「F RGB Coreファン」を採用しており、4本のねじでラジエーターに固定可能。ケーブルも1本にまとまっており、配線しやすい。ポンプヘッドにLED・ファンコントローラーを内蔵しており、ファンのケーブルもポンプにつなぐ。ケーブルの数が少ないだけでなく、まとめやすいのも特徴だ。
25.8dB(A)の静音ファン「CT120 ARGB」を採用
TH360 ARGB Sync V2 Snow(Thermaltake)
対応ソケット | Intel:LGA2066/2011/1851/1700/1200/1151/1150/1155/1156 AMD:Socket AM5/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載)×3 |
ファンの回転数 | 500~2000rpm(PWM対応) |
ファンコネクター | 4ピン |
風圧 | 最大2.23mmH2O |
風量 | 最大57.05CFM |
騒音値 | 最大25.8dB(A) |
ポンプコネクター | 4ピン+ARGB 3ピン |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅396×奥行き120×高さ27mm |
型番 | CL-W365-PL12SW-A |
JANコード | 4713227539241 |
アスクコード | FN2048 |
こちらも白基調のデザインを採用したモデル。ポンプヘッドにインフィニティミラーデザインを採用し、奥行きのあるライティング効果を楽しめる。ポンプキャップ部分が回転するため、取り付けた後にロゴが上下反対になっていたとしても簡単に直せる。
付属ファンは自分で取り付ける方式だが、ケーブルはデイジーチェーン接続に対応しており、取り付けは簡単。ファン電源用とLED用それぞれの延長ケーブルが付属しているため配線の工夫もしやすい。ファンやアドレサブルRGB LEDの制御はマザーボードの機能を使う。
LGA2066やSocket AM3など古めのプラットフォームにも対応しているのも特徴だ。今回紹介する他のモデルは対応していない。既存環境の交換先としても良いだろう。
対応するCPUソケットの種類が多いため、バックプレートも2種類付属している。右下にある白いパーツは、LED用の延長ケーブルを使用した際に取り付ける保護カバー。LED用端子のピンは細いため、あると安心だ。
着脱可能なディスプレイが付属
ALPHA2 DS A36 Black(ZALMAN)
対応ソケット | Intel:LGA1851/1700/1200/1151/1150/1155/1156 AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載)×3 |
ファンの回転数 | 600~2000rpm±10%(PWM対応) |
ファンコネクター | 4ピン |
風圧 | 最大2.01mmH2O±10% |
風量 | 非公開 |
騒音値 | 最大29.7dB(A)±10% |
ポンプコネクター | 4ピン+ARGB 3ピン |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅394×奥行き120×高さ27mm |
型番 | ALPHA2 DS A36 BLACK |
JANコード | 8800263650248 |
アスクコード | HS1508 |
ポンプヘッドに搭載した液晶ディスプレイが特徴的なモデル。「Zalman OZ」アプリで表示する内容をカスタマイズできる。マグネットで固定するため、ポンプヘッドから外して好きな場所に取り付けられるのがユニークだ。
ファンは専用端子でデイジーチェーンに対応している。出荷時点でラジエーターに取り付けられており、ケーブルも接続済みだ。デイジーチェーン用のケーブルが短く、あまり出っ張らないためすっきりしている。ファンの配線は電源用とLED用の2本で済むため簡単だ。
LED・ファンコントローラーユニット「ZM-OZハブコントローラー」が付属し、液晶ディスプレイと同じ「Zalman OZ」アプリで制御可能。ユニットとマザーボードのARGB端子を接続することで、マザーボードのRGBコントロール機能を使うこともできる。
高性能CPUで冷却性能と静音性をテスト
TDP 170WのRyzen 9 9950X3Dを使用
CPUクーラーは、やはり冷却性能が重要。今回はTDP 170Wと発熱の大きいAMDのハイエンドCPU、Ryzen 9 9950X3Dをどのくらい冷却できるかテストした。CPU温度は使用するPCケースや室温の違いなど環境の影響を大きく受けるため、数値はあくまで参考として捉えてほしい。
CPU以外のテスト環境は以下の通り。
AMD Ryzen 9 9950X3D
CPU | AMD Ryzen 9 9950X3D |
メモリー | AGI UD858 DDR5 TURBOJET RGB DDR5-7200 32GB(16GB×2) |
マザーボード | ASRock B650 Steel Legend WiFi |
SSD | AGI AI818 M.2 PCIe Gen4 SSD 1TB(AGI1T0G43AI818) |
グラフィックボード | なし |
PCケース | なし |
電源ユニット | Thermaltake TOUGHPOWER GT/0750W ATX3.1 |
OS | Windows 11 Home(24H2) 64ビット |
テスト時の室温は24度。CPUの負荷には「CINEBENCH 2024」(MAXON Computer)の「CPU(Multi Core)」テストを使用し、10分間の連続テストを実行した。CPU温度は「Ryzen Master」(AMD)の「Temperature」の値を使用した。PCケースには収めず、テストはベンチマーク台で行った。
CPUクーラーにファンコントローラーが付属する場合は使用し、付属しない場合はマザーボードのファン端子を使用した。マザーボードのファンコントロール機能はBIOS設定画面で「AUTO」設定にした。テストの際は、メーカーの提供するアプリがある場合はそちらのファンコントロール機能を使用し、冷却性能重視の設定と静音性重視の設定でテストを行った。「Kraken Plus 360 RGB v2 White」はファンコントロールの参照先をクーラント温度からCPU温度に変更している。
冷却性能をテスト
ファンの設定でも大きく変化
テスト結果をまとめたのが以下のグラフだ。製品名の後ろのかっこ内はファンの動作モードを記載した。アイドル時の温度はWindows 11が起動してから10分程度操作せずにCPU温度が落ち着いた状態。負荷時の温度はテストの10分目付近の数値を採用している。いずれのモデルも負荷時に70度台に留まり、仕様上の最大値(Tjmax)である95度まで余裕を持った状態で動作していた。
CPU温度(℃) | アイドル時 | 負荷時 |
---|---|---|
MASTERLIQUID 360 Core II White |
46.4 | 77.6 |
iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White(最速) |
46.2 | 71.3 |
iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White(静か) |
46.7 | 75.0 |
Kraken Plus 360 RGB v2 White(パフォーマンス) |
45.4 | 73.2 |
Kraken Plus 360 RGB v2 White(サイレント) |
46.4 | 74.8 |
TH360 ARGB Sync V2 Snow |
48.3 | 78.1 |
ALPHA2 DS A36 Black(Performance) |
47.1 | 72.6 |
ALPHA2 DS A36 Black(Silent) |
47.8 | 73.2 |
負荷時のCPU温度はいずれのモデルも70度台に収まった。ファン設定を冷却性能重視にすると、静音性重視よりもCPU温度を1~3度下げられた。
アイドル時は「TH360 ARGB Sync V2 Snow」が少し高めだが、最も低かった「Kraken Plus 360 RGB v2 White」の「パフォーマンス」モードと比べても差は3度ほどだ。
負荷時の温度は製品間でばらつきが出た。最も冷えたのは「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White」の「最速」モードで、唯一71度台。一方、ファンが「静か」モードの時は75度と、CPU温度が高めのグループに入った。最も温度が高かったのは「TH360 ARGB Sync V2 Snow」。ただし他のモデルの静音重視設定と比べると3度ほどの差となっており、騒音値と併せて評価するべきだろう。
今回のテストでは、静音設定でも十分な冷却性能が得られた。ただ、テスト時の室温は24度。室温が上がればCPU温度も上がるため、より暑い時期になったらファン設定を上げるという運用をしても良いだろう。こうした使い方ができるのも、高い冷却能力があるからこそだ。
付属ファンのスペックは冷却性能への影響が大きい。回転数が高ければそれだけ動作音も大きくなりやすく、冷却性能とのバランスも重要な要素だ。続けて騒音値の計測結果も見てみよう。
騒音値をテスト
静音設定は大きく効果あり
一体型水冷クーラーの騒音値は、ほぼファンの動作音と考えてよいだろう。実際はポンプの動作音もあるが、今回使用した製品は全て120mmファンを3基搭載しているため、そちらに埋もれてほとんど気にならなかった。設定の違いでどの程度変化するかも見ていこう。
騒音値の計測にはサンワサプライの騒音計「CHE-SD1」を使用した。計測範囲は35~135dB(A)となっているが、下は30dB(A)まで表示できたためその数値を採用している。公称スペックの範囲外のため、35dB未満は参考値としてほしい。騒音計はラジエーターとほぼ同じ高さで、約20cmの距離に設置した。暗騒音は表示下限未満だったため、30dB(A)とする。
騒音値(dB(A)) | アイドル時 | 負荷時 |
---|---|---|
MASTERLIQUID 360 Core II White |
34.5 | 50.1 |
iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White(最速) |
49.0 | 54.7 |
iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White(静か) |
32.9 | 37.6 |
Kraken Plus 360 RGB v2 White(パフォーマンス) |
43.3 | 54.6 |
Kraken Plus 360 RGB v2 White(サイレント) |
33.4 | 44.6 |
TH360 ARGB Sync V2 Snow |
30.2 | 43.0 |
ALPHA2 DS A36 Black(Performance) |
47.7 | 49.7 |
ALPHA2 DS A36 Black(Silent) |
37.0 | 42.2 |
騒音値はファンの設定で大きく変化する。静音設定では負荷時にも100%まで回転数が上がらず、騒音値を大きく抑えられた。
グラフの通り、製品、設定によって大きく傾向が分かれた。CPU温度が70度台にとどまり、静音性重視の設定では負荷時でもファンが100%の回転数で動作しなかったためだ。反対に性能重視の設定では、アイドル時でもファンの回転数が上がり、静音設定の負荷時より騒音値が高い場合もあった。ファンコントロール設定の効果が顕著に現れたと言ってよいだろう。ファンをマザーボードに接続した2製品は、アイドル時にはしっかり回転数が落ち、負荷時は100%付近で動作していた。そのため騒音値の幅が広くなっている。
最も騒音値が低かったのは「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB White」の「静か」モード。負荷時でも40dB(A)に達しておらず、頭一つ抜けて静かだった。一方、「最速」モードでは最も騒音値が高かった。「最速」モードは負荷時のCPU温度が最も低かったことを考慮すると、騒音値に応じた冷却性能を発揮できるということだろう。
負荷時のCPUの温度が最も高かった「TH360 ARGB Sync V2 Snow」は、静音性では優秀だった。アイドル時の騒音値は騒音計の表示下限付近。負荷時も他のモデルの静音設定に近かった。静音設定をしなくとも静かというのは魅力だ。
ファンの回転数はBIOSの設定やマザーボードのユーティリティーでも調整できる。ただ、どのように設定すればよいかを理解するのにはある程度の慣れが必要だ。設定アプリが提供されているモデルを選び、動作モードごとのファンカーブ設定を参考にするのもよいだろう。
水冷クーラーも進化している
ケーブル周りの工夫は要チェック
一体型水冷CPUクーラーを5製品見てきた。ラジエーターやファンの構成が同じでも、見た目、取り付けやすさ、冷却性能、静音性と選ぶポイントがたくさんあるのが分かる。
もちろん、CPUクーラーなので冷却性能が重要なのは当たり前だ。しかしPCケースの中で存在感のあるパーツだけに、見た目も重要な要素。魅せるPCを組むためには、見せるための機能だけでなく、配線のしやすさやケーブルの隠しやすさといった見せないための機能もポイントになる。メーカーごとのさまざまな工夫は組み立てやすさにもつながっている。最近の製品は、初めての人にとっても手を出しやすくなっていると言える。
夏になると気温と共にCPU温度も上昇する。これを期に、ハイエンドCPUもしっかり冷やせる一体型水冷CPUクーラーに挑戦してはいかがだろうか。既に使っている人にも、最新モデルを体験してみてほしい。進化ぶりに新鮮な驚きがあるはずだ。
(文=宮川 泰明、写真=渡辺 慎一郎)
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