製品レポート

身近なのに複雑怪奇、USB規格のおさらい【第2回】USB Type-C編

さまざまな機能が利用できるUSB Type-Cをご紹介

前回はUSBの速度と端子についてまとめた。今回はUSB Type-Cについて深掘りしていく。Type-Cは多機能な代わりにオプション仕様が非常に多く、複雑になっている。正しく理解することで対応機器やケーブル選びもしやすくなるはずだ。

USBケーブルは両端で異なる端子を搭載していることもあるため、本稿ではこれ以降、別途補足がない限り両端がUSB Type-C端子のケーブルを単に「USB Type-Cケーブル」と呼ぶ。

身近なのに複雑怪奇、USB規格のおさらい【第2回】USB Type-C編

USBの活用範囲を広げたType-C

USBの活用範囲を広げたType-C

ピン数が一気に増えた

まずはケーブルと端子の構造から解説する。USB Type-CはUSB 3.1と同時期に発表された端子とケーブルの規格だ。特徴は小型で上下対称のデザインを採用した端子形状。上下逆さにつないでも使えるという点が売りの1つとして登場した。しかし、本当の価値はさまざまな機能が利用できる汎用性の高さだ。

これを支えているのが24ピンというピン数の多さ。USB 2.0端子は4ピン、USB 3.x端子は9ピンだったので、2.5倍以上になっている。写真で見ると違いは一目瞭然だ。

USB 2.0端子(4ピン)

USB 2.0端子(4ピン)

USB 2.0は信号用2本、電源用2本のピンで構成されている。

USB 3.x端子(9ピン)

USB 3.x端子(9ピン)

USB 3.x端子のピンは9本。USB 2.0用はそのままで、5本のピンが追加されている。

USB Type-C端子(24ピン)

USB Type-C端子(24ピン)

写真はUSB Type-C端子の内部のプレート。反対側にも同様にピンが並んでいる。

端子のピンアサインは以下の図の通り。同じ役割のピンが複数あるため、ケーブル内部の配線は18本だ。

USB Type-Cの仕様書に掲載されているケーブルのピンアサイン表

USB Type-Cの仕様書に掲載されているケーブルのピンアサイン表。上がレセプタクル(メス側端子)、下がプラグ(ケーブル側の端子)。USB 3.x用のピンが2セットあるのがポイントだ。USB 3.x用の配線を省略したUSB 2.0専用ケーブルもある。

「D+/-」がUSB 2.0用のピン、「TX+/-」と「RX+/-」がUSB 3.x用のピンだ。USB 3.x用のピンが2セットあるのが分かるだろう。これが非常に重要で、USB Type-Cケーブルが他のUSBケーブルとは違った使い方ができる理由となっている。「CC」は「Configuration Channel」を表し、ホストとデバイスがファイルの送受信など以外のやり取りをする際に使うピン。ケーブルが上下どちらの向きでつながれたかもこのピンで認識する。これは従来のケーブルにはなかったものだ。

USB Type-Cケーブルもさまざまな種類があって混乱しやすいが、実はピンと内部配線の物理的な仕様はUSB 2.0用とUSB 3.x用(「Full Featured Cable」と呼ぶ)の2種類しかない。ケーブルによって対応する機能が異なるのは、「eMarker」と呼ぶチップに記録された対応情報による。ただし全ての機能がeMarkerの情報を必要とするわけではない。例えば、最大60WのUSB PDはeMarkerを搭載していないケーブルでも利用できる。

USB Type-Cケーブルは端子に「eMarker」と呼ぶICチップを内蔵している

USB Type-Cケーブルは端子に「eMarker」と呼ぶICチップを内蔵している(USB 2.0ケーブルではオプション仕様)。ここに対応する機能が記録されている。写真はUSB 2.0の100W対応ケーブルだ。

USB Type-C特有の機能

Type-CでもUSB 2.0ケーブルでは利用できない機能もある

USBの機能でありがながら、USB Type-Cケーブルでしか利用できない機能もある。ポイントは先述のCCピンと2セット目のUSB 3.x用ピン。追加されたピンは旧来のケーブルには存在しないため、これらのピンを利用する機能は使えないという単純な理由だ。同様に、両端がType-C端子でもUSB 2.0専用のケーブルでは機能が限定されるほか、一方がUSB Type-C端子、もう一方がUSB Type-C以外の端子のケーブルではUSB Type-C固有の機能は使えない。

速度を2倍にする「デュアルレーン」モード

「デュアルレーン」はUSB 3.x Gen 2x2(20Gbps)などで利用される動作モードだ。「x2」の部分がデュアルレーンを表している。USB 3.x用のピンを2セットとも使うことで高速なデータ転送を可能にしているため、1セットしかない従来のケーブルでは利用できない。また、当然だがUSB 2.0用のUSB Type-Cケーブルでも利用できない。

最大240Wの給電/受電機能「USB PD(Power Delivery)」

「USB PD(Power Delivery)」はUSB Type-C端子でのみ使える給電/受電機能だ。従来のUSB端子は電圧が5Vしか使えず、充電用規格のUSB BC(Battery Charging)を利用しても最大7.5W(5V/1.5A)だったのに対し、USB PDは規格上、最大240W(48V/5A)まで対応しているのが特徴。ノートPCやスマートフォンの充電に使われることが増え、広く普及している。

最大140WのACアダプター

規格上は最大240Wだが、製品としては最大140WのACアダプターが販売されている(2026年3月現在)。

おおまかな仕様として、USB PDには5V、9V、15V、20V、28V、36V、48Vの電圧が設定されている(一部の製品は旧バージョンにあった12Vにも対応する)。5~15Vでは最大3Aの電流を流せるようになっており、20V以上では後述の対応ケーブルを使うことで3Aを超えて5Aまで上昇する。

ケーブルをつなぐと、ACアダプター側は機器側に利用可能な電圧・電流の組み合わせのリストを送り、機器がその中から1つを選んで充電の仕様を決めるという仕組みだ。この時にケーブルのチェックも行っており、5Aに対応していない場合は最大3Aのリストしかやり取りされない。そのため正しく設計されていれば、過剰な電力が供給されて機器が故障するといったことは起こらない。バージョン3.0からは「PPS(Programmable Power Supply)」という機能が追加され、より細かく電力を調整できるようになった。

これはUSB Type-Cケーブルの基本機能となっており、全てのケーブルで利用できる。またUSBのバージョンとは独立した機能なので、USB 2.0用、USB 3.x用いずれのUSB Type-Cケーブルでも問題なく使える。

注意点は、どのUSB Type-Cケーブルでも利用できるのは60W(20V/3A)までということ。61W以上は最大5Aの電流に対応する「100W対応ケーブル」や「240W対応ケーブル」が必要になる。これらの判別にはeMarkerを利用し、eMarkerそのものがない場合は最大3Aとなる。

USB PDは当初最大60Wと最大100Wの2パターンで登場し、後に最大240Wの仕様が追加された。最大240Wは規格上「Extended Power Range(EPR)」と呼び、240W対応ケーブルは「EPR対応ケーブル」とも呼ばれる。100W対応ケーブルはこのEPR対応ケーブルに置き換えられる予定で、既に店頭で100W対応ケーブルを見る機会は減っている。

ケーブルの種類 最大転送速度 最大電力
USB 2.0 480Mbps 60W
100W
240W
Full Featured Cable 5Gbps、10Gbps、20Gbps、40Gbps、80Gbps 60W
100W
240W

USB Type-CケーブルにはUSB 2.0用とFull Featured(USB 3.x以降用)の2種類があり、それぞれに60W、100W、240W対応のケーブルがありうる。対応する転送速度と電力の組み合わせで非常に多くのパターンがある。

USB以外の信号を扱う「Alternate Mode」

最大の特徴と言えるのが、USB Type-CケーブルでUSB以外の信号を扱える「Alternate Mode」だ。ホストとデバイス両方が同じ種類のAlternate Modeに対応している必要があるものの、USBケーブルを全く別の用途で使えるようになる。

代表的なものがDisplayPort Alternate Modeだ。USB Type-Cケーブルが映像ケーブルになり、DisplayPortケーブルの代わりに使える。この時、USB 3.x用のピンと配線を使って映像を転送する。USB 3.x用の配線が2セットあることで、DisplayPortケーブルと同等の帯域を利用可能だ。

ユニークな機能として、2セットあるUSB 3.x用のピンのうち、片方をDisplayPort、もう片方をUSB 3.xという風に使い分けることもできる。USB Type-C対応の液晶ディスプレイを利用した際、映像とUSBハブをケーブル1本でつなげられる。その場合は映像で利用できる帯域が半分になるため、パソコンの対応するDisplayPortのバージョンによって解像度やリフレッシュレートに制約が発生する場合がある。DisplayPort 1.2など、古めの機器を使う場合は注意が必要だ。USB 2.0は別のピンを使うため、USBハブがUSB 2.0までの対応なら問題は起こらない。

LG エレクトロニクス・ジャパンの「34U650A-B」

製品が対応していれば、USB Type-Cケーブルで液晶ディスプレイへ映像を出力できる。写真はLG エレクトロニクス・ジャパンの「34U650A-B」。

Thunderbolt 3/4/5もAlternate Modeで利用する機能の1つだ。Thunderboltはさまざまな種類のデータをまとめて転送する「トンネリング」という転送方法を採用しており、USB 3.2以前とはベースとなる技術が異なる。

ただし、よく使われているのはこの2つだけ。HDMIの映像を出力するHDMI Alternate Modeは規格の策定はされたものの対応する製品は登場していない。VRゴーグルを想定した「VirtualLink」という規格も作られたが、Valveが対応する変換ケーブルを発表したもののキャンセルとなり、その後製品は登場していない。規格を策定するコンソーシアムも作られたが、現在は活動していないようだ。

自作PCでも少しずつ身近に

普及はベアボーンPCが先

自作PCにおけるUSB Type-C端子は扱いが難しい。ケーブル長の制限があるため、前面端子で使う場合は高速な転送モードで使いにくいためだ。I/Oパネルにある場合も、使う際は取り回しのために結局長いケーブルがほしくなる。USB PDやDisplayPort Alternate Modeに対応せず、ただのUSB端子となっていることも多い。

第12世代Coreシリーズ以降に対応したマザーボードはThunderbolt 4端子を搭載していることがあり、その場合は映像出力もできる可能性が高い。USB PDは製品によって対応していないこともある。また、ケーブル長の心配がない小型ベアボーンPCでは活用できる製品が増えている。

MSIの「MEG Z890 GODLIKE」

上位モデルを中心に、Thunderbolt4端子を備えたマザーボードも増えてきている。写真はMSIの「MEG Z890 GODLIKE」。

独自の機能はCCピンがカギ

ここまでUSB Type-C端子の構造と機能を見てきた。USB Type-Cならではの機能は、CCピンの通信が基準になることが多い。CCピンはUSB PDやAlternate Modeを有効にする際の通信を担当しているためだ。反対に言うと、CCピンを持たない従来のケーブルではこれらの機能を有効にできないため、片側がUSB Type-C以外の端子のケーブルでは利用できないということになる。

次回はUSB Type-Cケーブルの選び方について解説する。

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(文・写真=株式会社アスク)

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