写真左からJ2Bの金世鐘氏、CEO 金廷均氏、CTAO 古富裕造氏
AI時代で勝ち抜く、"自ら作る"AI戦略
「AIに駆逐される前に、AIを自分たちでつくる選択をしたんです」
そう語るのは、広告と映像制作を軸にAIソリューションを展開するJ2B株式会社のCEO 金廷均氏。生成AIと高性能GPUを活用しながら、広告表現と制作ワークフローの革新に挑む同社にとって、AIとそれを支えるワークステーションは、もはや道具の枠を超え、"ビジネスの中核を担う価値創造の源泉"。同社のクリエイティブを支えるための根幹インフラとして、現場に深く組み込まれている。
舞作家MYSACCAとaimaTV
J2Bが開発を進める2つのプロダクト
朴慧臨氏が見せてくれた舞作家(MYSACCA)のデモの模様。ごく簡単な操作のみで、脚本も自動生成されている
J2Bが現在β版として提供中で、正式ローンチに向けて開発を進めている、同社の中核を担うプロダクトが2つある。「舞作家(MYSACCA)」と「aimaTV」だ。
舞作家(MYSACCA)はAIを活用したストーリーボード生成ツールで、ストーリーの雰囲気やターゲット層、動画の長さ、キャラクターなどを設定するだけで、数分以内に結果が生成される。
企画段階では、ユーザーがアイデアを入力するだけでなく、AIが自動で構成を提案することも可能。さらに、台本に沿ってコンテ・音声・字幕を自動生成し、ビデオコンテとして出力できる。トーンや色味なども自在に調整できるため、複数のバリエーションを効率よく制作し、クライアントに提示するのにも最適だ。
登場人物には、実在の人物だけでなくAI生成の実写モデルや2Dキャラクターも使用でき、BGMも作品に合わせて自動生成される。企画からビジュアル、音声、音楽に至るまで、映像制作のプロセス全体を一貫して支援するツールとなっている。
一方の「aimaTV」は、動画制作の後半工程を担うAIソリューション。
自社開発のAIがコンテンツの内容を自動で生成し、その内容に基づいた映像化を行う。セリフや字幕も自動生成され、さらにAIアナウンサーがナレーションを担当する。最終的には、完成した動画を各種プラットフォームに最適化し、タイミングを指定して自動配信することが可能だ。
つまり、aimaTVを導入すれば、撮影や編集、ナレーション、配信にかかっていた手間をAIが一手に担ってくれ、企業はより多くのコンテンツを、より短時間で届けることができるようになる。
いずれも、広告や映像制作の常識を覆し得る可能性を持ったプロダクト。そしてその開発に欠かせないのは、RTX GPUを搭載したAIワークステーションだという。
AIワークステーション導入の理由は「すごくシンプル」
同社の社屋に設置しているサーバーラック。レノボ製品では、「ThinkStation P8」を2台、「ThinkStation PX」を2台導入しており、うち3台はNVIDIA RTX 6000 Adaを、1台は、RTX 5000 Adaを1枚ずつ搭載している
同社は、NVIDIA RTX 6000 Adaを搭載したレノボ社製AIワークステーション6台と、RTX 5000 Ada搭載のワークステーション1台を社内に設置し、クラスター構成※で運用している。
ローカルに展開されたワークステーション群は、クラウド上の各種AIソリューションとAPIレベルで緊密に連携し、ローカル側での制御判断に基づいて必要な処理をクラウドに自律的に割り振る。処理負荷が一部のノードに集中しそうになれば、クラスター全体が即座に反応し、負荷を自律的に分散。
つまり、ローカルとクラウドが一体となって、ひとつの統合されたコンピューティング基盤として機能しているのだ。このアーキテクチャにより、同社はネットワーク遅延やセキュリティリスクを最小限に抑えつつ、スケーラブルで柔軟なシステム運用を実現している。
※ 複数台のコンピュータ(またはワークステーション)をネットワークで接続し、仮想的に1台の高性能なシステムとして動作させる構成。
J2B 金「社員は、クラスター化したサーバーにリモート接続して業務をしています。複数人が同時にリモート接続して使っているときも、空いているマシンのGPUに負荷を自動的に振り分けてくれ、動作は安定しています。クラスター化には、必要になればマシンを増やして、スケールアウトが簡単にできるというメリットもあります」
ワークステーションを導入した理由は「すごくシンプル」と話す金CEO
ローカル環境で高度な処理を実現できることから、人気を集めているAIワークステーションだが、その導入にあたっては、もともと、サーバーエンジニアとしての経歴も持つ金CEOならではのポリシーがあった。
J2B 金「僕らがなぜワークステーションを導入したかっていうと、すごくシンプルな理由ですよ。"普通のデスクトップPCと同じように扱える"ってところが大きいです。たとえばラックマウント型とかブレード型のサーバーマシンって、ちゃんとした空調のある環境だったり、データセンターだったり、さまざまな前提条件が必要になるじゃないですか。設置場所も、コストも、技術的な知識も。つまり、ちゃんと環境を整えないと使えないんですよね。
でもワークステーションは違う。もちろんセキュリティ面は考慮する必要がありますが、基本的にはケーブルを差し込めば、すぐ使える。置けば使える。すぐに業務に入れるんです。そこが一番の強みですね。過去に使っていたマシンでは故障も経験していますが、基本的には、普通のパソコンと同じ感覚で修理できます。特別な運用じゃなくて、いつもの感覚で管理できる"パソコンの親分"みたいな存在です」
レノボ ThinkStation PX ワークステーションは、最大でGPUを4枚搭載することが可能だが、同社が1枚のみ搭載のモデルをクラスター化して複数台設置する方針を採用しているのも、ビジネスにおけるリスク管理の観点から。
J2B 金「規模の大きな企業なら、RTX 6000 Adaを4枚搭載したサーバーを複数台導入するのは、十分に考えられる選択肢だと思います。しかし、1台のみの設置で故障が発生すると、そこでビジネスは停止してしまう。GPUを含むハードウェアを複数台に分散させることには、安定した運用だけでなく、ビジネスリスクを軽減する意味合いもあるんです。コンパクトなケースにRTX 6000 Adaを1枚搭載したモデルを複数台置くのが、私たちにとっては最適解かもしれません。インフラって、やっぱり"落ちないのが正義"なので」
長期運用時のコスト面にも魅力
そしてハイブリッド体制で生まれる最大効率
ビジネスの効率性だけでなく、サーバーエンジニアならではのリスク管理の視点も多分に影響している同社の開発環境。金CEOは、AIワークステーションのビジネスへの活用は、コスト面においても大きなメリットがあると話す。
J2B 金「私たちが使っているRTX 6000 Adaのワークステーションは、1台でだいたい150~200万円ぐらいですね。それをいま、うちは8台入れてます。初期投資で1000万円前後。でも、この投資には理由があるんです。MidjourneyとかRunwayをクラウドでゴリゴリ回すと、平均して月に数十万はかかってしまいます。重いタスクを頻繁に回していれば、年間で300万円から400万円は消えてしまいます。はじめに大きくコストをかけた方が、長期的にはランニングコストを削減できると考えました」
クラウドのランニングコストは積み上がりが早く、「必要なときに使えない可能性がある」という"見えないリスク"もある。特にJ2Bのようにプロジェクトごとに即応性が求められる環境では、「一度投資して、あとは自由に回せる」オンプレミス環境と、クラウドを組み合わせる運用が合理的だという。
J2B 古富「私たちのような業態は、思いついたときに即座に試せる環境も必要です。でもクラウドサーバーが混んでいたり、APIの回数制限がかかっていると、そこで思考が止まってしまう。大事なのは、ローカルとクラウドの環境を分けて考えることですね」
ローカルとクラウドを目的別に整理し、どちらも"止まらない"状態を維持する。それがJ2Bの制作体制のコアにある。
J2B 金「広告業界は今後ますます変わっていきます。AIが進化することで、広告の事業そのものが完全に変わると思います。昔は、早くて正確に仕事ができる人が優秀でしたが、"これからは新しいアイデアを生み出せること"が一番大事になってくるでしょう。それ(AIによる変革)がいい、悪いということではなく、この新しい時代に、AIをどう使うかです」
広告や映像制作の現場がAIによって再定義される中、J2Bは創造力とテクノロジーを武器に、次の表現の地平を切り拓いている。その革新を支えるのが「NVIDIA RTX搭載AIワークステーション」。発想を即座にかたちにし、止まることなく成果を生み出すこの環境は、AI時代の同社のクリエイティブに欠かせない"戦略的インフラ"だ。
同社の開発環境をチェック!
レノボ製ワークステーションの強みとは?
最後に、同社の開発環境を改めてチェックしよう。
レノボ製品では、優れた信頼性とパフォーマンスが特徴のワークステーションThinkStation Pシリーズから、「ThinkStation P8」を2台、「ThinkStation PX」を2台導入。うち3台はNVIDIA RTX 6000 Adaを、1台は、RTX 5000 Adaを1枚ずつ搭載。ほかにも、RTX 6000 Adaを搭載マシンを3台導入しており、6台のRTX 6000 Ada搭載モデルはクラスター化して運用している。
J2Bの金廷均CEO、ワークステーションやGPUの調達を支援しているアスクの大竹諭、レノボの高木孝之氏に、改めてコメントを求めた。
「以前は3台でクラスターを組んでいました。最近になって、クラスターに入れる台数を増やすことで、処理能力は単純に2倍になり、遅延が減りましたし、静止画の生成もスムーズになりました。レノボのThinkStation Pシリーズは、高級スポーツカーのアストンマーチンとデザインコラボしたという赤と黒が基調のデザインも、スタイリッシュでいいと思いますよ」(J2B 金廷均氏)
「レノボのThinkStationは、製品を購入された国だけでなく、海外に持ち込んだ場合にも、 購入された国の保証期間内であれば持ち込み国の保証サービスに準じたサービスを現地の修理センターにて受けられます。 (※Lenovo国際保証サービス International Warranty Service)J2Bさんを例に挙げると、国内で使用している環境を韓国のオフィスに持っていっても、韓国のレノボ修理センターで対応いただけます」(アスク 大竹諭)
「AIだけでなく、デジタルツイン、点群データ解析、ARやVR、高度シミュレーションなど、昨今のコンピューティングは、凄まじいCPU/GPUリソースとワークロードを必要とします。これは、かつてなかったレベルの熱が発生するということです。レノボは冷却技術に徹底的にこだわってきたワークステーションベンダーでもあります。常に冷えた状態が保てることで故障率は下がり、ファンノイズも低減できるでしょう」(レノボ ワークステーション&クライアントAI事業部 シニア・プロダクトマネージャー 高木孝之氏)
(出典=ASCII.jp:AIワークステーション "Lenovo ThinkStation"は「効率的で、しかも安い」価値創造の源泉)
採用製品のご紹介
- ●J2B株式会社 概要
- J2B株式会社は、高度なAIおよびCG技術を基盤に、企業やプロダクトの新たな価値創出を目指して設立されたトータルコンテンツソリューション制作会社です。クリエイティブな力を通じて社会に貢献し、これまでに見たことのない、新しい世界の創造を追求しています。
- ウェブサイト:https://www.j2b-inc.com/
- ●レノボについて
- レノボ(HKSE:992/ADR:LNVGY)は、売上高620億米ドルの世界的なテクノロジー企業であり、Fortune Global 500の217位にランクされています。世界中で7万7000人の従業員を抱え、180市場で毎日数百万人の顧客にサービスを提供しています。レノボは、すべての人にスマートなテクノロジーを提供するというビジョン「Smarter Technology for All」を掲げ、世界最大のPCメーカーとしての成功を収めるだけでなく、サーバー、ストレージ、モバイル、ソリューション、サービスといった「New IT」技術(クライアント、エッジ、クラウド、ネットワーク、インテリジェンス)の発展を促進する新たな成長分野へも進出しています。世界を変革するテクノロジーを提供することで世界中のあらゆる場所のすべての人にとって、より包括的で信頼できるデジタル化社会を創出します。
- メーカーウェブサイト:https://www.lenovo.com/jp/ja/
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