
AIの進化を振り返ると、その歩みは「頭脳」から「行動」へと確実に進化してきたことがわかります。
2010年代初頭、画像認識を革新したAlexNetの登場で「知覚型AI(Perceptive AI)」が幕を開けました。カメラやマイクを通じて現実を理解する能力が向上し、AIは"見る""聞く"といった感覚を手に入れたのです。
その次に広がったのが「生成AI(Generative AI)」の時代です。ChatGPTをはじめとする生成モデルが登場し、AIが文章を書き、絵を描き、アイデアを生み出すようになりました。私たちの生活やビジネスにAIが自然に溶け込む「知的なパートナー」となったわけです。
続いて登場したのが「エージェントAI(Agentic AI)」。会話しながら自律的に判断し、タスクを遂行するAIで、コード作成やカスタマー対応、医療支援といった現場にも進出しています。
そしていま、注目を集めているのが次のフェーズ「フィジカルAI(Physical AI)」です。AIがスクリーンの中だけで考える存在から、現実世界で"動き""働く"存在へと変わろうとしています。
目次
「知る」「考える」「動く」をつなぐ知能

フィジカルAIを支えるのは3つの要素です。
カメラやLiDARなどのセンサーで環境を"知り"、AIという頭脳が最適な判断を"考え"、ロボットアームや車両のアクチュエーターがそれを"行う"。この「認識→判断→行動」のサイクルを、リアルタイムで繰り返すのがフィジカルAIの特徴です。
つまり、知能がついに"身体"を得たといえます。
なぜ今、フィジカルAIなのか
少子高齢化で人手不足が深刻な日本では、危険・過酷な作業をAIが代替できることへの期待が高まっています。医療や介護、物流、災害対応など、物理的な現場こそAIの活躍が求められる領域です。
世界に目を向ければ、スマートファクトリーや自動運転など"AIが現実を動かす"取り組みが加速中。フィジカルAIはエネルギー効率、リスク削減、サービス革新の鍵技術として注目を集めています。
テクノロジーの裏側にある仕組み

フィジカルAIを動かすには、さまざまな技術が組み合わさっています。
センサー群による環境認識、高速推論AIによる意思決定、そしてアクチュエーター制御による滑らかな動作。さらに仮想世界でのシミュレーションや学習、いわゆる「デジタルツイン」がその発展を支えています。
NVIDIAのCosmosやOmniverseなどでは、重力・摩擦・因果関係までを再現。AIは仮想空間で安全に"経験"を積み、現実のフィールドでその学びを応用します。まさに現実と仮想が行き来する、学習する知能です。
フィジカルAIが動く現場

実際の応用はすでに始まっています。
- 自動車メーカーや製造業の自律ロボット
- 倉庫での自動搬送・ピッキングシステム
- 災害救助や原発廃炉現場での遠隔操作ロボット
- 医療・介護分野の支援アシスト機器
- 自動運転車両やレベル4バスの実証実験
工場から街、家庭までAIが直接「手足」を動かし始めています。
越えなければならないハードル
一方で、課題も少なくありません。
誤動作が命に関わる分野では、安全性と信頼性が最優先です。AIの判断が説明しづらい「ブラックボックス問題」や、センサーデータのプライバシー保護も避けて通れません。
また、現実空間のあらゆる情報を取り込んで完全なシミュレーションを行うには、膨大なコンピューティングリソースが必要となり、現実的ではありません。スケーラブルな仮想空間の構築が求められ、その実現には制度設計の重要性が増しています。
さらに、現実空間と仮想空間の「ギャップ」を完全に解消することは実質的に不可能です。だからこそ、明確なストーリーを描くとともに、そのギャップから生じる「ゆらぎ」の本質を理解しておくことが重要です。
社会実装を進めるには、標準化や法整備、説明可能なAI設計とガバナンスの強化が求められます。AIが人間社会の一員として受け入れられるための"ルールづくり"が欠かせないのです。
AIと人間が共に働く社会
2030年代、フィジカルAIはあらゆる社会基盤に広がるでしょう。交通・物流・医療から街の管理、教育現場まで、AIが自律的に判断・行動し、人とともに働く世界が見えてきます。
日本では特に、人材不足や高齢化という社会課題を背景に、政府と企業がこの領域へ積極的に投資しています。新しい産業、新しい働き方、そして"安心して暮らせる未来"を形づくる原動力。それがフィジカルAIです。
フィジカルAIが切り開く未来:知能が現実を動かす新しい時代へ
フィジカルAIは、知能に「身体性」を与えることで、AIの可能性を新しい次元へ引き上げます。技術だけでなく、安全・倫理・社会受容という総合的な挑戦のもとに、人とAIが共生する未来を築く基礎となるものです。
AIが現実世界を動かし、人間の「働く」「生きる」を再定義する。その一歩が、いままさに始まっています。
このように、注目されているフィジカルAIですが、その第一歩として、ロボット導入を検討しているものの、どこから始めて良いのかわからないという声も多く耳にしています。そういった声にお応えして、弊社では、株式会社i4labo(アイフォーラボ)と協力のうえ、ロボット導入に必要となる様々なサポートをご提供させていただいております。ロボット導入に関して、弊社に何なりとご相談ください。
取り扱い製品の詳細は下記ページからご覧いただけます。
監修者:株式会社アスク 井上 康人
※ 記載されている会社名および商品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っています。
製品に関するご質問や納期のご確認、お見積り依頼など、お気軽にお問い合わせください