電源ユニットはPCの性能に影響しないパーツのため、新しく組み直す時や故障した時くらいしか買い替えないという人も多いだろう。しかし、実はきちんと年々進化しており、買い替えることに意味はある。様々なPCパーツが高騰している昨今、現在のパーツを長持ちさせられるように電源ユニットの買い替えにスポットライトを当ててみよう。
目次
電源ユニットも進化している
進化していると言っても、各パーツに電力を供給するという電源ユニットの機能は変わらない。どのような点が変化しているのか、ポイントを見ていこう。
新しい端子とケーブルの登場
高性能なグラフィックボードで必須
2022年に登場した「12VHPWR」端子は、グラフィックボード用の補助電源端子だ。2026年現在、ミドルクラス以上の多くのグラフィックボードがこの端子を採用しており、電源ユニットが対応していないと動作させることができない。変換ケーブルはあるものの、大きな電力を扱うため、ネイティブ対応のモデルの方が安心だ。
2025年には、仕様を改善した「12V-2x6」端子も登場している。デバイス側の端子に安全性を高める工夫が施してあるが、ケーブル側は12VHPWRと同じ端子なので、そのために買い替える必要はない。
「12V-2x6(12VHPWR)」端子は12ピン+サイドバンド用の4ピンで構成されている。サイドバンドは電源ユニットとグラフィックボードの通信を可能にし、接続状況やケーブルの対応電力の確認ができる。変換ケーブルを使う場合は電源ユニット側にピンがないため利用できない。なくても動作はするが、利用できた方が安心だ。
12V-2x6ケーブルには種類がある?
12V-2x6ケーブルは規格上、対応する電力の違いで4種類(150W、300W、450W、600W)ある。ただし、実際に電源ユニットに付属されているケーブルはほとんどが450Wか600Wだ。ハイエンドのグラフィックボードは600Wのケーブルを要求する場合があるため、注意が必要。ケーブルに対応電力が記載されているため、使う前に確認しておこう。
ATX 3.0/3.1への対応
12V-2x6ケーブルを使うなら必須
電源ユニットの規格であるATXの最新バージョンは3.1。バージョン3.0以降は2.xと比べて瞬間的な高負荷や変換効率など仕様への要求が厳しくなっており、バージョン3.0/3.1に対応している時点で信頼性がある程度担保されていると言える。
ATXのバージョンは12VHPWR/12V-2x6ケーブルにも関連している。端子はPCI Express 5.0/5.1で策定されており、規格としては独立しているが、ATX 3.0/3.1ではこの端子を使うことが盛り込まれているため事実上セットで運用されている。
大容量モデルの小型化
大容量=物理サイズも大きい、とは限らない
大容量モデルは奥行きが大きいのが常識だったが、ここ数年で小型化が進み、1000Wクラスのモデルでも奥行き140~150mmという製品が増えている。電源ユニットが小型化すると、PCケース内のスペースに余裕が生まれ、ケーブル配線がしやすくなる。
また、高性能な構成でも電源ユニットに合わせて大型のPCケースを使わなくてもよくなり、小型で高性能なPCを組みやすくなっている。SFX電源も大容量化しているため、小型PCの構成も選択肢が増えている。
ケーブルにも注目
個別スリーブタイプも普及が進む
ケーブルは直付け方式、セミモジュラー方式、フルモジュラー方式の3種類がある。売れ筋はフルモジュラー方式になっており、直付け方式やセミモジュラー方式の製品は減っている。直付け方式は一部の低価格モデルで見られる。
付属ケーブルにもトレンドがある。現在はフラットタイプが主流。平たくまとめてあるため配線しやすいのがメリットだ。一方、個別スリーブケーブルやCORSAIRのデボス加工ケーブルのように、あえてまとめずに固定具のコームを使うタイプも増えている。
電源ユニットを交換することのメリットとは
スペック以外のメリットもある
電源ユニットの交換にどのようなメリットがあるかを見ていこう。もちろん、ここまで見てきたように新しい要素やトレンドを利用できることはメリットだ。一方、かつては一部の上位モデルにしかなかった要素が買いやすくなっているというケースもある。
変換効率の向上
上位の認証を取得したモデルが買いやすくなっている
変換効率は年々向上しており、80PLUS PLATINUMなど上位の認証を取得した製品が増えている。主流は80PLUS GOLDを取得した製品だが、より上位の認証を取得した製品も以前より安く購入できるようになっている。長く使うことを考えれば、価格は高くなるがこうした製品を選択するのもありだろう。
80PLUSのほかに、Cybenetics社の提供する「Cybenetics ETA」認証も採用しているメーカーが増えており、参考になる。より実使用に近い環境でテストされ、「Bronze」から「Diamond」の6段階で評価される。80PLUSのグレードとは直接比較できない点は注意しよう。
また、2024年には別の認証機関による「PPLP(Pro Performance Level Plan)」という認証も登場している。評価は7段階で、「Standard」から「SUPER Ti」。こちらを取得した製品も少しずつ増えている。国内ではMSIなどのメーカーが採用している。
変換効率が高いと、電源ユニットが電流を交流から直流に変換し、PCで使う電圧へ降圧する際のロスが減るのがメリットだ。ただし、消費電力は減るものの、一般的な使い方では電気料金への影響はあまり大きくない。
静音化も期待できる
セミファンレス対応の製品が増えている
変換時のロスは熱に変わるため、変換効率が上がると発熱が減る。その分ファンの回転数を落とす、停止させるといったことができるようになり、動作音も減らせる。低負荷時にファンを停止する、セミファンレスの製品も増えている。大容量モデルではファンが停止する範囲が広く、ゲームプレイ中以外はほぼ動作しないということも珍しくない。
長く使った電源ユニットは経年劣化でファンの動作音が大きくなっている場合もあるため、静音化の効果は期待できる。
PC内環境の見直しにもなる
交換時に掃除もしよう
これは製品のメリットというよりも、交換することそのもののメリットだ。電源ユニットを交換する場合、PC内のほぼ全域に手を入れることになる。そのため、いやが応でもPC全体の見直しをする作業になる。ついでにほこりを払ったり、コネクターの緩みを確認したりと、PCのメンテナンスをする機会になる。PC内を見直し、手を動かすのも自作PCの楽しみの1つだ。
ケーブルの長さには注意
現在のものより奥行きの小さい電源ユニットと交換すると、本体サイズの差でケーブルが届かなくなる場合がある。現在の環境でギリギリ届いている状態のケーブルがあるなら、スペック表でケーブル長を確認し、比較して問題なさそうか確認するとよい。
極端な例だが、ATX電源とSFX電源では付属ケーブルの長さが全く違う。CORSAIRの「RM850x」と「SF850」では、容量は同じ850Wだがメイン24ピンケーブルは前者の610mmに対して後者は300mmと半分しかない。
注目製品を紹介
メーカーごとの特徴もある
各パーツに電源を供給するという役割は同じでも、製品ごとに違いはある。ここでは4メーカーの注目製品を紹介しよう。
SFXでも大容量
V SFX Gold ATX3.1シリーズ(Cooler Master)
| 製品名 | V SFX Gold 750 ATX3.1 A/JP cord | V SFX Gold 850 ATX3.1 A/JP cord |
|---|---|---|
| 最大出力 | 750W | 850W |
| フォームファクター | SFX | |
| 電源規格 | ATX 3.1、SFX12V v3.42 | |
| 搭載ファン | 92mmファン×1 | |
| 80PLUS | 80PLUS GOLD | |
| ケーブルタイプ | フルモジュラー方式 | |
| 本体サイズ | 125(W)×63.5(H)×100(D) mm | |
現在のトレンドは、小型かつ大容量だ。その最たるものがSFX電源となる。SFX電源はサイズが小さいため小型PCケースでは重宝するものの、容量は小さいというのが常識だった。しかし近年はATX電源に負けないほどの容量を備えたモデルもある。
「V SFX Gold ATX3.1」は750W、850Wという大容量のラインアップを備え、12V-2x6ケーブルも付属する。ねじ穴の位置をATX電源に合わせるためのブラケットも付属しているため、ATX電源の変わりとして利用することも可能。Mini-ITXやスリム型のPCケースでグラフィックボードを搭載したPCを組む際に便利だ。ケーブルはフルモジュラー方式のため、不要なケーブルを外しておけるのも小型PCケースと相性がよい。
機能満載の大容量シリーズ
HXi Shift 2025シリーズ(CORSAIR)
| 製品名 | iCUE LINK HX1000i shift 2025 | iCUE LINK HX1200i shift 2025 | iCUE LINK HX1500i shift 2025 |
|---|---|---|---|
| 定格出力 | 1000W | 1200W | 1500W(115~240V) 1200W(100~115V) |
| フォームファクター | ATX | ||
| 電源規格 | ATX12V v3.1、EPS12V v2.92 | ||
| 搭載ファン | 140mm 流体軸受ファン×1 | ||
| Cybenetics | Cybenetics ETA PLATINUM Cybenetics Lambda A+ |
Cybenetics ETA PLATINUM Cybenetics Lambda A++ |
Cybenetics ETA PLATINUM Cybenetics Lambda A |
| ケーブルタイプ | フルモジュラー方式 | ||
| 本体サイズ | 150(W)×86(H)×180(D) mm | 150(W)×86(H)×200(D) mm | |
最大1500Wのラインアップを備える、CORSAIRのハイエンドシリーズだ。「Shift」はモジュラーケーブルを接続する端子が本体の側面についていることを示す。端子がサイドパネルの方を向くため、組み立てた後でもケーブルの着脱がしやすい。低負荷時にファンを停止する「ゼロRPMモード」を搭載しており、出力が500W(1000Wモデル)から750W(1500Wモデル)でファンは動作しない。
CORSAIRの独自規格である「iCUE LINK」にも対応しており、「iCUEソフトウェア」を利用してファンの動作モードや12V出力のマルチレーン/シングルレーンの切り替えなどを行える。通常、「iCUE LINK」を利用するためには「iCUE LINKシステムハブ」が別途必要になるが、本シリーズはその機能も内蔵しており、本製品に「iCUE LINK」対応機器を接続して利用できるのも特徴だ。
大容量で奥行き140mm
TOUGHPOWER GTシリーズ(Thermaltake)
| 製品名 | TOUGHPOWER GT/0750W ATX3.1 | TOUGHPOWER GT/0850W ATX3.1 | TOUGHPOWER GT/1000W ATX3.1 | TOUGHPOWER GT/1200W ATX3.1 |
|---|---|---|---|---|
| 定格出力 | 750W | 850W | 1000W | 1200W |
| フォームファクター | ATX | |||
| 電源規格 | ATX 3.1 | |||
| 搭載ファン | 120mmファン×1(Smart Zeroファンモード対応) | |||
| 80PLUS | 80PLUS GOLD | |||
| ケーブルタイプ | フルモジュラー方式 | |||
| 本体サイズ | 150(W)×86(H)×140(D) mm | |||
80PLUS GOLDの認定を取得したシリーズ。750~1200Wと大容量でありながら、全てのラインアップで奥行きが140mmとコンパクトな点が特徴だ。容量のバリエーションが豊富で、ホワイトモデルもある。トレンドを一通り網羅したスタンダードモデルだ。ケーブルはフルモジュラー方式で、全ての付属ケーブルがフラットタイプ。
120mmファンは低負荷時に停止する「Smart Zeroファンモード」を備え、背面のスイッチで常にファンを作動させるモードへの変更も可能だ。
80PLUSとCybenetics両方の認証を取得
Steel Legendシリーズ(ASRock)
| 製品名 | ASRock Steel Legend 750w | ASRock Steel Legend 850w | ASRock Steel Legend 1000w | ASRock Steel Legend 1200w |
|---|---|---|---|---|
| 定格出力 | 750W | 850W | 1000W | 1200W |
| フォームファクター | ATX | |||
| 電源規格 | ATX12V v3.1 | |||
| 搭載ファン | 135mm ファン×1 | |||
| 80PLUS | 80PLUS GOLD | |||
| Cybenetics | Cybenetics ETA PLATINUM Cybenetics Lambda A+ |
Cybenetics ETA PLATINUM Cybenetics Lambda A |
||
| ケーブルタイプ | フルモジュラー方式 | |||
| 本体サイズ | 150(W)×86(H)×150(D) mm | |||
マザーボードで有名なASRockの電源ユニットの高耐久シリーズ。マザーボードと同じ「Steel Legend」の名前を使用している。変換効率の認証を80PLUSとCybenetics ETA両方で取得しているのが特徴的だ。さらに騒音値の低さを示すCybenetics LAMBDAではAまたはA+を取得しており、静音性にも優れている。
奥行きは150mmと最小クラスではないが、搭載ファンが135mmと大きいのはメリットだ。本製品も低負荷時にファンを停止する「iCool Intelligent Fan Control Mode」を備え、背面のスイッチで無効にもできる。
電源ユニットが壊れる前に交換しよう
交換にメリットあり
電源ユニットはPCの性能に直接影響しないため、故障するまで使い続けたいという人も多いだろう。しかし、電源ユニットが故障すると、予備がない限り何日にも渡ってPCを使えなくなってしまう。PCをよく使う人ほど、その数日は辛いものになる。ダウンタイムを短くするには、自分のタイミングで交換できるうちに交換してしまうことが重要だ。
また、先述の通り、電源ユニットの交換はPC環境を見直し、メンテナンスする機会にもなる。12V-2x6(12VHPWR)端子が普及を始めたのは2022年から2023年にかけて。それ以前に購入した電源ユニットは対応していない可能性が高く、グラフィックボードを使うなら交換するメリットとしては十分だ。交換する際にPC内部の掃除なども行い、自慢のPCをより長く使い続けられるようにしてはいかがだろうか。
(文・写真=株式会社アスク)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。




