どれだけオンラインストレージが発展しても、USBメモリーや外付けHDDなど物理ストレージの役割がなくなることはない。そして物理ストレージが使われる限り、紛失や盗難を原因とした情報流出のリスクもなくなることはない。部外秘の情報を扱う人にとっては、いつも悩ましい課題だ。
そんな人に検討してみてほしいのが「セキュリティストレージ」だ。外付けストレージにセキュリティ機能が搭載されており、保存したデータを守れるという製品だ。製品によっては専用のソフトウェアを併用する場合もあるが、今回紹介する米Apricornの製品はストレージ単体で完結するタイプ。ロックを解除すれば通常のストレージとして利用できるため、互換性のトラブルが発生する心配は少ない。
今回紹介するのは「Aegis NVX」シリーズ。コンパクトな本体と高速な読み書き速度、高いセキュリティ機能が売りだ。筐体に6061アルミニウム合金を使用しており、耐久性にも優れている。
「Aegis NVX」シリーズは堅牢さが特徴の外付けセキュリティストレージ。外装だけでなく、内部に保存したデータも強力に守れる。
パッケージにはUSB Type-Cの延長ケーブルと、USB Type-CからType-Aに変換する変換ケーブル、そして持ち運び用のハードケースが付属している。
写真の通り本体にキーパッドが付いており、使用する際はPINコードを入力してロックを外すという仕組みだ。ロックを解除するまでは、PCからは何も接続されていないものとして扱われる。内部のデータは全て暗号化されているため、もし筐体を開けて内部のSSDを取り出したとしてもファイルを読み出すことはできない。二重のセキュリティ機能で重要なデータを保護できる。
ソフトウェアを使う方式では新しいPCに接続する度にセットアップが必要になり、すぐに使えないが、本体にPINコードを入力する方式ならその手間もない。高いセキュリティ能力に加えて、使いやすさにも優れているのがポイントだ。
「Aegis NVX」を接続して、Windowsのエクスプローラーを開いた。ロックを解除する前は何も表示されない(左)。PINコードを入力してロックを解除すると、ドライブが現れる(右)。
本製品の特徴はもちろんセキュリティ機能だが、NVMeに対応したPCI Express接続のSSDを採用した高い読み書き速度もポイントだ。インターフェースもUSB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)に対応し、端子はUSB Type-Cを採用している。容量のラインアップは500GB、1TB、2TBの3モデルで、読み書き速度は容量によらず読み出しも書き込みも最大1GB/s。同シリーズのこれまでのモデルと比べて大幅に高速化している。
その他の基本仕様は以下の通り。
インターフェース | USB 3.1 Gen 2(5Gbps) |
容量 | 500GB、1TB、2TB |
最大データ転送速度 | 読み込み:最大1,000MB/s、書き込み:最大1,000MB/s |
本体サイズ(ケーブル除く) | 67×120×15mm |
本体重量 | 約200g |
暗号化 | AES 256bit XTS ハードウェア暗号化 |
サポートOS | Windows、Mac OS、Linux、Android、Symbian等 (USB給電可能でストレージがマウント可能である必要があります) |
承認規格 | IP67、FCC、CE、VCCI、RoHS |
保証期間 | 1年(代理店保証) |
※ 記載された製品名、社名等は各社の商標または登録商標です。
※ 仕様、外観など改良のため、予告なく変更する場合があります。
※ 製品に付属・対応する各種ソフトウェアがある場合、予告なく提供を終了することがあります。提供が終了された各種ソフトウェアについての問い合わせにはお応えできない場合がありますので予めご了承ください。
「Aegis NVX」シリーズの強さはセキュリティ機能だけではない。筐体は航空機の素材としても使われる6061アルミニウム合金を採用しており、とても頑丈。さらに内部は硬化エポキシ樹脂でポッティングしてあるため、振動で内部の基板が揺さぶられることもない。もともと衝撃に強いSSDを、さらに強固に守っているのだ。また、筐体を固定するねじはブレイクアウェイファスナーを使っており、ねじ頭やレンチを引っ掛ける面がないため通常の工具では開けられない。
外装はアルミ製。6061アルミニウム合金を採用しており、内部のSSDを衝撃から守る。手に取るとずっしりと重い。
筐体の固定にはブレイクアウェイファスナーと呼ぶ特殊なナットを使っており、通常の方法では開けられないようになっている。
インターフェースも特徴だ。USB Type-C端子を採用しており、PCにつなぐ際にいちいち上下の向きを確認する必要はない。ケーブルは直付けなので外出先でつなげられないといったトラブルも起こらない。使わない時は本体側面にケーブルを収納しておけるほか、ハードケースも付属しているのでかばんの中でケーブルが折れて断線してしまう心配もない。
インターフェースがUSB Type-Cになったことで、活用の幅も広がっている。近年のデジタルカメラはUSB Type-C端子を備えており、USBストレージへ直接写真や映像を記録できる機種があるためだ。特に映像を高解像度で記録する場合、高速で大容量のストレージは必須。Aegis NVXシリーズもそうした用途で利用できる。
プロフェッショナル向けのビデオカメラは、USB Type-Cで外部ストレージを接続できることが多い。
Aegis NVXシリーズの特徴には、読み書き速度が大幅に向上した点もある。過去の製品と比べてどの程度速くなったのか、実際に試してみた。使用したのは500GBモデルの「Aegis NVX 500GB(ANVX-500GB)」。SSDは容量が大きいほど高速になる傾向にあるが、本製品は全容量で同じ速度が得られる。
比較に使用したのは「Aegis Padlock」シリーズのHDD搭載モデルとSSD搭載モデルの2機種。HDDモデルは「Aegis Padlock USB 3.0 2TB(A25-3PL256-2000)」で、HDDを内蔵している分サイズが少し大きめ。SSDモデルはコンパクトデザインが特徴の「Aegis Padlock SSD 120GTB(ASSD-3PL256-120F)」だ。いずれもUSB 3.0(最大5Gbps)対応なので、USB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)対応のAegis NVXシリーズはこの時点で有利だ。もっとも、USBの規格上の速度はあくまで最大値。実際の読み書き速度は試してみるまで分からない。
「Aegis Padlock USB 3.0 2TB(A25-3PL256-2000)」。本体が大きめのため、PINコードを入力するボタンも大きく押しやすい。
「Aegis Padlock SSD 120GTB(ASSD-3PL256-120F)」。こちらもUSBケーブルを本体側面に収納できる。
パソコンに接続して、実際にテストした結果が以下のグラフだ。テストには「CrystalDiskMark 8.0.4c」(ひよひよ氏)を利用した。テストのプロファイルは「NVMe SSD」を使用し、テスト結果は「SEQ1M Q8T1」と「RND4K Q32 T16」の数値を使用した。テストはそれぞれ3回ずつ実行し、おおむね中央の結果を採用した。
公称値の通り、Aegis NVXは順次読み書き共に1GB/sを超えている。Aegis Padlock SSD 120GBと比較すると5倍以上の速度だ。ランダム読み書き速度も大きく向上しており、こちらは読み出しでは12倍以上もの差がついている。
順次読み書きの速度は、やはりAegis NVX 500GBが圧倒的。実測で1GB/sを超えているのは圧巻だ。Aegis Padlock SSD 120GBはSSDらしくAegis Padlock USB 3.0 2TBより大幅に高速だが、それでもAegis NVX 500GBの1/5程度。インターフェースだけでなく、内蔵しているSSDの速度がそれに見合うほど大きく向上したことが分かる。Aegis Padlock SSDは大容量モデルであればスペック上最大350MB/sとなっているが、それでもAegis NVXシリーズには大きく及ばない。
また、ランダム読み書きの速度も大幅に引き上げられている。割合で言えば、順次読み書きよりもランダム読み書きの方が大きく伸びた。HDDモデルのAegis Padlock USB 3.0 2TBと比べるとランダム読み出し速度は300倍以上となり、もはや比較にならない。これは容量の小さいファイルを大量に扱う際の処理速度に効いてくる。
ここまでAegis NVXシリーズの特徴を見てきた。従来モデルと比較した際の魅力は、やはりUSB Type-C端子による使い勝手の良さと高い読み書き速度だろう。従来モデルはセキュリティが売りということもあり、読み書き速度は一般的な外付けSSDと比べて少し物足りない面があった。しかしAegis NVXシリーズではインターフェースの限界に近い読み書き速度を備えており、セキュリティだけでなく純粋にストレージとしても高性能になった。より活躍の場が広がったと言えるだろう。
次回はより具体的に、どんなセキュリティ機能を備えているかを紹介する。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
PINコードを入力しないとPC等の機器から認識されないということは前回紹介したので、今回はその手順を見ていく。
Aegis NVXはUSB Type-C接続のコンパクトな外付けSSD。セキュリティストレージのため、本体のキーパッドからPINコードを入力しないと使えない。
Aegis NVXをPCにつなぐと、まずセルフテストが始まる。3色のLEDが順番に光った後、緑のLEDが3回光り、赤のLEDが点灯した状態に移行する。この赤が点灯しているのがロック状態だ。ここでAdmin PINコードまたはUser PINコードを入力し、最後に「アンロック」ボタンを押す。これでロックが解除される。バッテリーを内蔵しているわけではないため、PC等につなぐまで操作はできない。
キーパッドには12個のボタンがあり、その上に3個のLEDがある。赤いボタンは「ロックボタン」、緑のボタンは「アンロックボタン」だ。LEDは色と光り方で動作モードなどを示す。
PINコードは、出荷時点では設定されていない。初期設定のまま使い続け、それが原因でセキュリティを突破されてしまっては意味がないからだ。PINコードは必ずユーザー側で、Aegis NVXの初期設定で決めることになる。使用できるのは数字のみで、7~16文字の間で設定する。
アンロック状態はAegis NVXをPCから外す、または「ロック」ボタンを押すまで続く(一定時間アクセスしないとロックする設定も可能)。ロック状態になった場合は再度PINコードの入力が必要だ。
Aegis NVXはストレージながら、ユーザーと権限の概念がある。管理者権限を持つ管理者ユーザー(Admin)と一般ユーザー(User)だ。それぞれAdmin PINとUser PINを設定し、いずれでもAegis NVXをアンロック可能だ。Admin PINのみ「Adminモード」に移行する際にも利用できる。1人で使うのであれば使い分けは不要だが、例えばシステム部で管理するAegis NVXを別の部門に貸し出す際などに一般ユーザーを利用できる。
User PINコードではAegis NVXをアンロックしてファイルの読み書きができるほか、一部のセキュリティ機能が利用できる。一方Adminモードでは全ての設定にアクセスできるほか、一般ユーザーが変更した設定を上書きすることもできる。User PINは4個まで設定可能だ。
一口にセキュリティ機能と言っても、対応するリスクによってさまざまな種類がある。例えばPINコードなら、紛失や盗難などの際に保存したデータの流出を防げる。ここではそれ以外の保護機能を紹介する。
セキュリティワイヤー用のスロットも搭載している。これも通常の外付けストレージではあまり見ない機能だ。
リードオンリーモードは保存したファイルの読み取りだけができる動作モードだ。この機能はPCから外しても無効にならず、解除するまではファイルの書き込みや書き換えができない。管理者ユーザー、一般ユーザーのどちらでも設定可能で、それぞれ異なる利用シーンが想定できる。
管理者ユーザーのリードオンリーモードは、データをオリジナルのまま渡す必要があるシーンで有効だ。受け取った相手はファイルを書き換えられないため、内容の正しさを保証できる。
一般ユーザーでは、外出先のPCにつなぐなど、セキュリティレベルを担保できない場面で役に立つ。つないだだけで感染するマルウェア等からAegis NVXを守れる。
管理者ユーザーが設定したリードオンリーモードは管理者ユーザーしか解除できないのに対し、一般ユーザーの設定したリードオンリーモードは管理者ユーザー側で解除できる。
リードオンリーモードは、一見通常通りに動作しているように見え、保存してあるファイルも開ける。しかしファイルを書き込もうとするとエラーが出て実行できない。既存ファイルの上書きも不可能だ。
パスワードを総当り方式で順番に試して突破してしまう攻撃方法をブルートフォースアタックと呼ぶ。コンピューターで実施すると短時間の間に膨大なパターンを試せてしまうため、古典的ながら強力な攻撃方法だ。Aegis NVXもPINコードで使えるのは数字のみなので、順番に試していけば、時間はかかってもいずれ突破されてしまう。そこで、Aegis NVXには対策としてPINコード入力の試行回数に上限を設けている。この機能は標準で有効になっており、無効にはできない。
標準設定では、PINコードの入力を10回間違えるとAegis NVXがロックされ、それ以上PINコードの入力ができなくなる。その状態で所定の操作をするとあと10回の余地が与えられ、それも消費すると自動的に暗号化キーを削除するという仕組みだ。ここまで進むと初期化以外のいかなる操作もできなくなり、再度Aegis NVXを使えるようにするには内部のデータごと初期化するしかない。つまり、後半の10回の試行でも正しいPINコードを入力できなかった場合、保存したファイルには二度とアクセスできなくなる。
間違えた回数はアンロック状態にできればリセットされるため、通常の使用環境であれば事故でデータを失うことはないだろう。とは言え、万一の際の救済方法がないという点ではシビアな機能だ。もっとも試行回数の猶予を延々と増やせてしまうのであれば、この機能の意味がない。PINコードがうろ覚えの場合は、いたずらに試すのは控えた方が良いだろう。
合計20回では多過ぎると思った場合は、ロックされるまでの試行回数を減らす設定もできる。例えば8回に設定すると、前半で8回、後半で8回と合計16回の試行回数になる。設定可能な最小回数は2回ずつの合計4回だが、あまり減らすとそれもリスクになり得るため注意しよう。ただし、1文字や2文字など極端に少ない文字数での試行は誤入力と判断し、間違いの回数には含まれないようだ。
ロック状態を表す赤のLED。ブルートフォースアタック対策が働いた場合は速いペースで点滅を繰り返す。
User PINを忘れてしまった時に再設定するためのPINコードだ。実行すると既存のUser PINが無効になり、新しいUser PINを作成する「User Forced Enrollment」モードに移行する。ワンタイムの名前の通りこのPINコードは1回しか使えず、使った後は自動的に消去される。
ワンタイムリカバリーPINはAdminモードであらかじめ設定しておく必要がある。AdminモードにはそもそもUser PINを再設定する機能があるため、Adminモードでアクセスできるのであればこの機能を使う必要はない。User PINのみで利用しているユーザー向けの機能と言ってよいだろう。ワンタイムリカバリーPINは最大で4個まで設定しておける。
これはAdmin PINとUser PINを両方忘れてしまった時の保険にもなる。新しくUser PINを作成できるので、ファイルを救出できる。ただしこの方法ではAdminモードに入れないため、ファイルの救出後は初期化して始めから設定し直す必要がある。
いくらAegis NVXがセキュリティ機能を備えていると言っても、PCにつないでアンロック状態になっている間の不正な操作からデータを守ることはできない。ちょっと離席した間にPCを勝手に操作されてしまうようなケースだ。離席する際にはロック状態に戻しておくのが望ましいのだが、絶対に忘れないとは言い切れない。
そんな時に利用できるのがこの機能だ。設定した時間の間にAegis NVXへのアクセスがなかった場合、ロック状態に戻る。ロックまでの時間は5分、10分、20分から選べる。
セキュリティ機能として、最後の手段も用意されている。あまりないとは思われるが、誰かにロックを解除するよう強要された場合のための機能だ。
自己破壊PINの使い方はAdmin PINやUser PINと同じだ。しかし入力するとデータと設定されたPINコードを全て消去し、自己破壊PINを新しいAdmin PINとして設定する。ロック解除を強要した人はもちろんデータにアクセスできない。操作がロック解除と全く同じのため、自己破壊PINを入力したことすら判別できない仕組みだ。
通常の利用シーンでは、この仕様はリスクにもなる。間違って自己破壊PINを入力してしまうとデータは全て失われ、復旧する手段はない。そのため必要がない限りは有効にしない方がよいだろう。初期設定では無効になっており、Adminモードでのみ有効にできる。機能が有効になっている場合、一般ユーザーでも自己破壊PINコードを設定することは可能だ。
Aegis NVXの搭載しているセキュリティ機能を見てきた。暗号化によるデータ保護、PINコードによるアクセス制限、ブルートフォースアタック対策など、さまざまな方向からデータを守る機能を満載している。これらの機能がAegis NVX本体だけで成立しているのはとても便利だ。セキュリティストレージにとって大切なデータを守るのは最も重要な機能だが、ファイルを読み書きするという基本機能が使いにくくなっては良い製品とは言えない。その点、Aegis NVXなら通常はPINコードの入力だけで使え、必要な時にだけ機能を有効にしてセキュリティを強化できる。流出が許されない重要なデータを持ち運ぶ機会が多い人は、Aegis NVXの導入を検討してはいかがだろうか。
ハードケースが付属しており、安全に持ち運べる。ゴム製のベルトが付いているため開けた際に落としてしまう心配はない。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
CPUの性能を引き出すには、CPUクーラーの高い冷却性能が必要だ。近年のCPUは温度が上がりやすくなっており、特に上位モデルでは簡単にサーマルスロッティング(処理性能を落として発熱を抑えること)が発生してしまう。設定で発熱を抑えることも可能だが、そのぶん性能が落ちてしまうのは避けられない。CPUクーラーの性能はこれまで以上に重要になっていると言えるだろう。
CPUクーラーには空冷式と水冷式があり、一般的に水冷式の方が冷却性能は高い。水冷式にはパーツ単位で購入し、自分で組み立てる「本格水冷クーラー」もあるが、今回は組み立て済みの「一体型(簡易)水冷クーラー」を紹介する。
一体型水冷クーラーを選ぶ際のポイントは、ラジエーターのサイズ、ファンの性能、デザインの3点がある。ラジエーターは原則として大きいほど冷却性能は高くなる。ファンは風量(CFM)と静圧(mm/H2O)の数値が高いほどよい。静圧はファンが空気を押し出す力のことで、高いほどラジエーターの細かい隙間により多くの風を通せるようになる。
一体型水冷クーラーはどの製品も構造がほぼ同じのため、見た目が似たものになりやすい。そこで各メーカーはデザインにも力を入れている。カラーバリエーションもそうだが、ヘッド部のカバーやファンにRGB LEDを搭載してライティングを楽しめるようになっているモデルが多い。
これらを踏まえて、自分にあった製品を探してほしい。
目次
対応ソケット | Intel:LGA1700/1200/1151/1150/1155/1156 AMD:Socket AM5/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2/FM2+/FM2/FM1 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載)×2 |
ファンの回転数 | 650~1750rpm(PWM対応) |
風圧 | 最大1.86mmH2O |
風量 | 最大71.93CFM |
騒音値 | 最大27.2dB(A) |
ポンプコネクター | 3ピン |
ポンプ騒音値 | 最大12dB(A) |
ラジエーターサイズ | 幅277×奥行き119.6×高さ27.2mm |
型番 | MLW-D24M-A18PZ-RW |
JANコード | 4719512137703 |
アスクコード | FN1928 |
ヘッド部の根本以外は真っ白な一体型水冷CPUクーラー。240mm級のラジエーターを採用しており、2基の120mmファンで冷却する。ファンにはアドレサブルRGB LEDを内蔵しており、鮮やかに光らせられる。新設計のポンプとフィンの表面積を増やしたというラジエーターを搭載し、冷却性能を強化している。
エントリー向けとなる「MasterLiquid Lite」シリーズということもあり、特殊な機能はないシンプルな構成だ。RGBコントローラーは付属しておらず、発光パターンを変更するにはマザーボードの機能を使う。アドレサブルRGB LED用の分岐ケーブルが付属しており、マザーボード側の端子は1個でまかなえる。
対応ソケット | Intel:LGA2066/2011/1700/1200/1151/1150/1156 AMD:Socket AM5/AM4/sTR4 |
搭載ファン | 120mm(RGB LED搭載)×2 |
ファンの回転数 | 550~2100rpm(PWM対応) |
風圧 | 最大2.68mmH2O |
風量 | 最大65.57CFM |
騒音値 | 最大34.1dB(A) |
ポンプコネクター | iCUE COMMANDER CORE経由 |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅277×奥行き120×高さ27mm |
型番 | CW-9060072-WW |
JANコード | 0840006683513 |
アスクコード | FN1851 |
こちらも240mm級のラジエーターを搭載したホワイトモデル。「CAPELLIX RGB LED」と呼ぶ高輝度LEDを採用しているのが特徴だ。CORSAIRは同社製のCPUクーラーや周辺機器などを一括管理する独自の「iCUEソフトウェア」を提供しており、CPU等の温度監視、ファンの回転数制御、LEDの発光パターン設定などは全てこのソフトから行える。
LEDとファンのコントローラー「iCUE COMMANDER CORE」が付属しているも特徴。アドレサブルRGB LED用とファン用の端子をそれぞれ6個備えており、PCケース内に同社製のLED付きファンを増やしてもまとめて管理できる。付属ファンは2基なので、あと4基追加可能だ。ここにケーブルを集約させる形になるので、裏面配線でケーブルを隠しやすいメリットもある。
ヘッド部のカバーはアクリル製プレートで、ねじを外せば簡単に交換できる。ヘッドを取り付けた際にロゴが横倒しになっていた場合にも付け直せるのは便利だ。柄違いの交換用プレートも2種類付属している。
対応ソケット | Intel:LGA2066/2011/1700/1200/1151/1150/1156 AMD:Socket AM5/AM4/sTR4 |
搭載ファン | 140mm(アドレサブルRGB LED搭載)×2 |
ファンの回転数 | 500~1500rpm(PWM対応) |
風圧 | 最大2.75mmH2O |
風量 | 最大99.68CFM |
騒音値 | 最大32.1dB(A) |
ポンプコネクター | SATA |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅315×奥行き143×高さ30mm |
型番 | RL-KR28E-W1 |
JANコード | 0810074842266 |
アスクコード | FN1881 |
「Kraken Elite 280 RGB White」は280mm級のラジエーターを搭載した水冷CPUクーラー。ラジエーターに取り付けるファンが140mmと大きくなるため、そのぶん高い冷却性能が期待できる。本製品の特徴は、ヘッドカバーに液晶ディスプレイを搭載しており、センサー情報や画像等を表示できる点だ。CPUやクーラントの温度、画像やGIFアニメ等、好きなものを表示させてPCを演出できる。
組み立てはケーブル周りが特徴的で、ヘッド部につなぐ専用ケーブルに多くの機能を集約させている。ファンやポンプの電源だけでなく、マザーボードとの接続もこの専用ケーブルで行うため、配線が分かりやすくなっている。ファンのRGB LEDについては別途付属している「RGBコントローラー」に接続する。ファンの回転数を含め、設定はマザーボードの機能ではなく独自のCAMソフトウェアで行う。CAMソフトウェアではほかのNZXT製品の設定も可能だ。
対応ソケット | Intel:LGA2066/2011-3/2011/1700/1200/1151/1150/1155/1156 Socket AM5/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2/FM2/FM1 |
搭載ファン | 140mm×2 |
ファンの回転数 | 500~2000rpm(PWM対応) |
風圧 | 最大3.54mmH2O |
風量 | 最大119.1CFM |
騒音値 | 最大33.2dB(A) |
ポンプコネクター | 3ピン |
ポンプ騒音値 | 非公開 |
ラジエーターサイズ | 幅314×奥行き140×高さ27mm |
型番 | CL-W320-PL14BL-A |
JANコード | 4713227527972 |
アスクコード | FN1584 |
「TOUGHLIQUID 280 ARGB Sync」は280mm級のラジエーターを採用した水冷CPUクーラーだ。特徴は風量、風圧ともに強力な140mmファン「TOUGHFAN 14」を付属している点。温まったクーラントを素早く冷却できる。ヘッドにはRGB LEDを搭載しており、マザーボードのRGBライティング機能で発光パターンを設定可能。マザーボードが対応していない場合でも、ヘッド部にあるボタンで発光モードや色、変化スピードを変更できる。
ヘッド部のLEDはケーブルが独立しており、光る機能が不要ならケーブルの本数を減らせる。その場合、ヘッドカバーは鏡面仕上げになっているため、そちらで見せ方を工夫することもできる。
対応ソケット | Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1700/1200/1151/1150/1155/1156 Socket AM5/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2/FM2+/FM2/FM1 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載)×3 |
ファンの回転数 | 500~2000rpm(PWM対応) |
風圧 | 最大2.34mmH2O |
風量 | 最大56CFM |
騒音値 | 最大33.2dB(A) |
ポンプコネクター | 3ピン |
ポンプ騒音値 | 最大22dB(A) |
ラジエーターサイズ | 幅392×奥行き120×高さ27mm |
型番 | FD-W-L1-S3612 |
JANコード | 4537694317634 |
アスクコード | HS1442 |
「Lumen S36 v2 RGB」は360mm級のラジエーターと3基の120mmファンを搭載したモデルだ。冷却部が大きいため、そのぶん冷却性能で有利になる。特徴は、ポンプをヘッド部ではなくラジエーター側に内蔵した点。ヘッド部に接続するケーブルが少なくなり、裏面配線でケーブルを隠しやすくなる。
大型ラジエーターの水冷クーラーでは使用するファンの数が増えるため、接続するケーブルも増えて配線をまとめることが難しくなる。本製品では、電源ケーブルがファンとポンプで4本、LED用ケーブルもファンとヘッド部で4本と、合計8本になる。これらを全部マザーボードにつなごうとすると、端子の数も足りなくなってしまう。そこで、本製品の付属ファンのケーブルはデイジーチェーンに対応している。ファンのケーブル同士をつなげられるため、マザーボードの端子はファン用とLED用それぞれ1個で済む。
ヘッド部の発光ギミックは独特。ヘッドカバーが半透明な樹脂でできており、光っていない時は黒一色のおとなしいデザインとなっている。一方、LEDが点灯するとカバー全体が淡く光るようになり、他の製品にはない雰囲気を出せる。ただし、LEDコントローラーは付属していないためマザーボードのライティング機能を利用する必要がある。
それでは、各モデルの冷却性能と静音性を見ていこう。ただ、冒頭で触れた通り、最新世代のCPUは全力で動作させると発熱が大きく、以前のように負荷時のCPU温度を60~70度に抑えるようなことは難しい。設定で発熱を抑えることは可能なので、今回の結果はあくまでこのテスト環境での数値である点は注意してほしい。
CPU | Intel Core i7-13700KF |
メモリー | DDR5-4800 16GB×2 |
マザーボード | ASRock Z790 LiveMixer |
SSD | CORSAIR MP510 960GB |
グラフィックボード | MSI GeForce RTX 3060 GAMING X 12G |
PCケース | なし |
電源ユニット | CORSAIR RM750(CP-9020195-JP) |
OS | Windows 11 Home(22H2) 64ビット |
テスト時の室温は25~27度。CPUの負荷には「CINEBENCH R23」(MAXON Computer)の「CPU(Multi Core)」テストを使用し、10分間の連続テストを実行した。CPU温度は「Extreme Tuning Utility(XTU)」(Intel)の「Package Temperature」の値を使用した。PCケースには収めず、テストはベンチマーク台で行った。
テストで利用したASRockの「Z790 LiveMixer」のBIOS設定には、「CPU Clooler Type」(利用するCPUクーラーの設定)という項目がある。この設定で「Long Duration Power Limit」の項目が変化し、負荷時に利用する電力を変えられる。ここでは実質制限なし(265W)となる「360~420mm Liquid Cooler」を選んだ。CPUの最大温度を決める「CPU Tj Max」は、CPUの仕様に合わせて100℃に設定している。
まず冷却性能を見てみよう。下のグラフに、システムがアイドル時のCPU温度と負荷時のCPU温度の平均をまとめた。いずれもテスト中に100度に達した瞬間があるため、最大値は省略している。
いずれのモデルも高い冷却性能を備えているものの、平均CPU温度は90度を超えた。Pコアの平均動作クロックは5.00~5.07GHzとなり、CINEBENCH R23の負荷テストの最後に表示されるスコアも約1.3%と小さい差の間に収まった。CPUの性能を引き出すことはできていると言えるだろう。その中で、最も結果が良かった製品は「TOUGHLIQUID 280 ARGB Sync」。スペック表からも分かるように付属ファンの風量、風圧の数値が高く、有利に働いたようだ。
大抵の場合、CPUクーラーのファンはマザーボードのPWM制御で回転数を変化させている。そのため、CPU温度を抑えられればファンの回転数も下がり、騒音値を抑えられる。しかし、今回のテストではCPU温度が90度を超えていることもあり、全てのモデルが負荷時に100%の回転数で動作していた。そのため、事実上各モデルの最大騒音値の比較となっている。また、今回のテストはベンチマーク台で実施しており、PCケースに収めた場合はもう少し動作音は小さくなるはずだ。
計測には佐藤商事の騒音計「SD-23SD」を使用し、ベンチマーク台とほぼ同じ高さ、約50cmの距離に設置した。
アイドル時はいずれのモデルも30~32dB(A)と静か。PCの隣に立っていても動作音はほとんど聞こえないほどだ。負荷時の動作音がひときわ大きかったのは「TOUGHLIQUID 280 ARGB Sync」。静かだったのは「Lumen S36 v2 RGB」だ。
騒音値は各モデルで結果がばらけた。最も静かだったのは「Lumen S36 v2 RGB」。120mmファンを3基搭載しているため静音性の面では不利なはずだが、今回の5製品の中で最も静かだった。冷却性能でラジエーターサイズの小さいモデルと差がつかなかったのは、付属ファンが静音志向のためだった可能性がある。
反対に動作音が大きかったのは「TOUGHLIQUID 280 ARGB Sync」。これは冷却性能も一番高かったため納得の結果だ。少し離れていてもはっきり音が聞こえ、目を離していてもファンの音の変化でテストが終わったことが分かるほどだった。
ファンの動作音は、BIOS(UEFI)の設定等で回転数を落とすことで下げられる。冷却性能は若干落ちるが、動作音が気になるようであれば検討すると良いだろう。
水冷CPUクーラーを5製品見てきた。第13世代Coreシリーズを使うと、水冷CPUクーラーでもCPU温度は90度以上まで上がってしまう。性能を引き出すには空冷CPUクーラーでは厳しいことが分かるだろう。
水冷CPUクーラーの魅力は冷却性能だけではない。RGB LEDを内蔵したファンによるライティングやヘッド部の装飾、液晶ディスプレイによる情報表示など、大型パーツならではの視覚的な楽しみ方もある。
暑くなる時期はCPU温度も上がりやすい。この夏、水冷CPUクーラーに挑戦してみてはいかがだろうか。
(文・写真=SPOOL)
※ 記載されている会社名および商品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
近年、CPUの仕様変更に伴ってCPUクーラーに求められるものも変化している。従来、CPUクーラーと言えばCPUの温度を低く保つことが重要な指標になっていた。CPUの温度が下がれば、ファンの回転数を落として静音化できる、オーバークロックで性能を伸ばせるといったメリットがあったからだ。しかし、現在はその指標でCPUクーラーを比較することは難しい。自動オーバークロック機能が進化し、CPU温度は上限まで上がることを前提とした仕様になっているためだ。
もう少し正確に言うと、CPUの発熱量は、特に自作PCではユーザーの裁量で操作できる部分が大きくなっている。BIOS(UEFI)の電力設定次第では、CPUの限界近くまで温度が上がるようなことはない。しかし、温度が上がらないような設定では、当然そのぶんCPUの処理性能も落ちる。CPUの性能を100%引き出すにはかなりの冷却能力が必要で、さらに上位モデルのCPUではよりハードルが高くなる。空冷のCPUクーラーでは、最大の電力設定でCPUが発する熱に対応することは残念ながら難しい。
しかし、だからと言って空冷CPUクーラーの価値がなくなるわけではない。最大の電力設定で性能が最大になるのは確かだが、設定を下げても性能への影響は限定的だからだ。また、一体型水冷CPUクーラーは空冷CPUクーラーと比べて価格が高め。予算面で、空冷CPUクーラーを選びたい人もいるだろう。
今回は3製品をテスト結果と共に紹介する。
目次
対応ソケット | Intel:LGA1700/1200/1151/1150/1155/1156 AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載) |
ファンの回転数 | 650~2050rpm(PWM対応) |
騒音値 | 最大27dB(A) |
ヒートパイプ | 4本 |
サイズ | 幅124×奥行き73×高さ154mm(付属ファン含む) |
重量 | 690g |
型番 | RR-S4WW-20PA-R1 |
JANコード | 4719512134092 |
アスクコード | FN1898 |
HyperシリーズはCooler Masterの人気シリーズで、さまざまな派生モデルが登場している。本製品は真っ白なヒートシンクにアドレサブルRGB LEDを内蔵したMF120 HALO2ファンを搭載していることが特徴だ。4本のヒートパイプを直接CPUに触れるように配置しており、このヒートパイプも白く塗装している。近年増えている白いPCケースと組み合わせるのに適している。
ヒートシンクの厚さは約45mm。シングルファンのタワー型クーラーとしては標準的なサイズだ。高さは154mmで、多くのPCケースに対応可能。トップにアルミ製のカバーを搭載しており、デザインのアクセントになっている。
取り付け方法がかなり簡略化されているのも特徴で、付属品は少ない。固定方法こそバックプレートにねじ留めする一般的な方式だが、バックプレートに必要な部品が取り付け済みのため、組み立てる工程がない。Intelプラットフォームなら、マザーボード裏からバックプレートをあてがってねじで留めるだけだ。ファンクリップも使いやすく、位置を合わせたらヒートシンクに向けて引っ張るだけで溝に固定される。
標準的なヒートシンクのサイズに取り付けやすい固定具、そして派手なRGB LEDと、今どきの要素を一通り備えている。初心者から上級者まで使いやすいスタンダードモデルとなっている。
対応ソケット | Intel:LGA1700/1200/115x/ AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | 120mm(アドレサブルRGB LED搭載) |
ファンの回転数 | 500~1800rpm(PWM対応) |
騒音値 | 17.2~27.5dB(A) |
ヒートパイプ | 4本 |
サイズ | 幅120×奥行き66×高さ159mm(付属ファン含む) |
重量 | 750g |
型番 | RC-TR120-W1 |
JANコード | 0810074840255 |
アスクコード | FN1804 |
T120 RGB Whiteは白いヒートシンクとファンが目を引くタワー型CPUクーラーだ。ファンのフレームのリングにRGB LEDを内蔵しており、本体の白に映えるライティングが楽しめる。ヒートシンクはHyper 212 Halo Whiteより若干細いが、ファン固定用のクリップが2セット付属しており、ファンを追加することで冷却性能を増強できるようになっている。
NZXTはPCケースも販売しているため、組み合わせて統一感のあるPCを組むことも可能だ。PCケースにファンコントローラー等が付属していれば、ケースファンと合わせてT120 RGB Whiteのファンも一緒に制御できる。
付属するバックプレートは両方Intelプラットフォーム用で、AMDプラットフォームでは標準のバックプレートを流用する。ケーブルはアドレサブルRGB LED用のケーブルを3ピン端子に変換するためのもの。ファン固定用のクリップは2セット付属しており、120mmファンを1基追加可能だ。
同社の提供しているCAMソフトウェアを使うと、ファンの回転数やLEDの発光パターンを設定できるほか、CPU温度の監視などもできる。本製品以外の同社製製品も同じソフトで管理できるのは便利だ。
対応ソケット | Intel:LGA2666/2011-v3/2011/1700/1200/1151/1150/1155 AMD:Socket AM5/AM4 |
搭載ファン | 120mm |
ファンの回転数 | 500~1850rpm(PWM対応) |
騒音値 | 最大31.5dB(A) |
ヒートパイプ | 5本 |
サイズ | 幅127×奥行き117×高さ158mm(付属ファン含む) |
重量 | 1040g |
型番 | R-AK500-BKNNMT-G |
JANコード | 4537694313841 |
アスクコード | FN1783 |
AK500は厚いヒートシンクを備えた、大型のタワー型CPUクーラーだ。ヒートパイプは他の2モデルより1本多い5本。メモリースロットとの干渉を避けるためにヒートシンクの中心をずらしたオフセットデザインを採用しているのが特徴だ。LEDは搭載しておらず、外観はおとなしい。
取り付けも分かりやすく、土台(リテンション)を組み立ててそこにねじ留めする。ヒートシンク側の固定用プレートは根本に固定されているため、位置合わせに苦労することなく取り付け可能。ヒートシンクのねじ留めの際に長いドライバーが必要になるが、付属しているので安心だ。
外観に派手さはないが、直線的なデザインにブラックとシルバーの配色は好きな人も多いだろう。取り付けイメージで使用したMSIのマザーボード「PRO X670-P WIFI」ともよく合う。LEDがないぶん、ケーブルもファン用の1本だけと配線の手間も少ない。大きさの割に扱いやすいCPUクーラーだ。
先述のように、空冷CPUクーラーでは全力で動作するCPUを冷却するのは難しい。そこで、マザーボードの設定でTDP 180W相当の環境を作って各製品の性能を測った。テスト環境は以下の通り。
CPU | Intel Core i7-13700KF |
メモリー | DDR5-4800 16GB×2 |
マザーボード | ASRock Z790 LiveMixer |
SSD | CORSAIR MP510 960GB |
グラフィックボード | MSI GeForce RTX 3060 GAMING X 12G |
PCケース | なし |
電源ユニット | CORSAIR RM750(CP-9020195-JP) |
OS | Windows 11 Home(22H2) 64ビット |
テスト時の室温は25~27度。CPUの負荷には「CINEBENCH R23」(MAXON Computer)の「CPU(Multi Core)」テストを使用し、30分間の連続テストを実行した。CPU温度は「Extreme Tuning Utility(XTU)」(Intel)の「Package Temperature」の値を使用した。PCケースには収めず、テストはベンチマーク台で行った。
テストで利用したASRockの「Z790 LiveMixer」のBIOS設定には「CPU Clooler Type」(利用するCPUクーラーの設定)という項目がある。ここで「120~140mm Liquid Cooler」を選ぶと「Long Duration Power Limit」の項目が「180」に設定される。これによりCPUの利用する電力に上限が設定され、TDP 180に相当する形で動作する。Core i7-13700KFの最大電力は253Wのため、70Wほど抑えた形だ。CPUの最大温度を決める「CPU Tj Max」は標準の「Auto」では100℃を超える場合があるため、CPUの仕様に合わせて100℃に設定した。
当然電力設定が最大の時と比べると性能は落ちるが、「CINEBENCH R23」の「CPU(Multi Core)」のスコアは10%以内の低下に留まった。これくらいであれば許容範囲という人もいるだろう。
まずはCPU温度から見ていく。空冷のCPUクーラーでどこまで冷えるだろうか。下のグラフはテスト中のCPU温度の最低値と平均値をまとめた。最低値はOSを起動してCPU温度がおおむね安定した時の最低値、平均値は負荷時のみの平均値だ。最大値は3モデルとも100℃に達するため、グラフには載せていない。
最大値が100℃になってしまうのは、短時間であれば設定よりも高い電力を使って動作するモードがあり、これが上記のCPUクーラーの設定では無効にならないため。テスト開始後少しの間はCPUの限界近くで動作し、その間に100℃に達してしまう。安全のために強制シャットダウン(Thermal Trip)する温度は130℃なのでCPUにとって危険ではないが、もう少し余裕を持って使いたい場合は「Short Duration Power Limit」の項目を「Long Duration Power Limit」と同じ数字に設定するとこの現象を防げる。
CPUの電力設定で重要なポイントは、「Long Duration Power Limit」と「Short Duration Power Limit」の項目。ここで設定した数値が従来のTDPに近い目安となる。
今回使用した設定は120~140mmラジエーターを搭載した水冷クーラーを想定したもので、空冷CPUクーラーには少し厳しめ。しかし3モデルともきちんと冷却できていたと言って良いだろう。Hyper 212 Halo WhiteとT120 RGB Whiteはテスト時間のほとんどで90℃前後となり、サーマルスロットリングは発生しなかった。大型ヒートシンクを搭載したAK500は80℃台前半に抑えられ、特に高い冷却性能を見せた。
静音性についても少し注意点がある。CPU温度が高いため、負荷時は基本的にファンの回転数が最大値まで上昇し、騒音値が高くなりがちなことだ。第13世代Coreシリーズは使用する電力が大きく、そのぶん発熱も大きい。高性能なCPUクーラーを選んでもCPU温度を下げることが難しいため、静音化するのであれば手動でファン回転数を絞ることになる。当然その分冷却性能は下がり、CPU性能に影響する。今回は標準設定なので、騒音値は製品の最大値となる。
音の聞こえ方やどんな音が気になるか、どの程度の大きさから気になるかなど、騒音の評価に関しては個人差が大きい。また、今回はベンチマーク台でテストしているため、PCケースに収めた場合とは聞こえ方が異なる。
各製品とも静音性を売りにした120mmファンを搭載していることもあり、アイドル時、負荷時ともに騒音値に大きな差は出なかった。ファンの設定をすればより静かにすることは可能だが、一般的にはPCケースに収めて使うことを考慮すると、そのまま使ってもあまりうるさいとは感じないのではないだろうか。
3製品の空冷CPUクーラーを見てきた。CPUの発熱が大きくなったことで、空冷CPUクーラーではきちんと冷却できないのではないかと心配している人もいるだろう。確かにCPUを性能の最後の一滴まで使い切ろうとすると、空冷CPUクーラーでは厳しい。
しかし、電力制限をかけることで、上位CPUであっても運用することはじゅうぶん可能だ。使用する電力とCPU性能はきれいな比例関係ではなく、上限に近付くほど性能の伸びは鈍くなる。そのため、空冷CPUクーラーでまかなえる程度に発熱を抑えても、高い性能を得ることはできる。性能を引き出す設定を模索するのは、自作PCならではの楽しみ方の1つだ。
性能面では、今回テストした中ではAK500の冷却性能が高かった。騒音値も他のモデルと同等で、使いやすいCPUクーラーと言える。一方、そのAK500でもCore i7-13700KFの100%の性能を出し切るのは難しい。それであればPC全体のデザインを重視してHyper 212 Halo WhiteやT120 RGB WhiteのようなRGB LEDを搭載したモデルを選ぶのも良いだろう。CPU温度には妥協が必要なものの、CPU性能はほぼ同程度まで引き出せた。
限界まで性能を引き出すには、やはり水冷CPUクーラーが必要。ただ、空冷CPUクーラーと比べて価格が高いのが難点だ。CPU性能も考慮したコストパフォーマンスは、空冷CPUクーラーの方が高い。あくまでCPU性能を求めるか、コストパフォーマンスや外観を求めるか、CPUクーラー選びは良い意味で悩ましくなっている。ぜひ納得の1台を探してほしい。
(文・写真=SPOOL)
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目次
念のため、先に用語を確認しておこう。本記事では音声を聞くために装着する機器のうち、イヤーピースを耳に入れて使うものを「イヤホン」、耳当てを耳にかぶせて使うものを「ヘッドホン」、マイク機能を備えたものを「ヘッドセット」と呼ぶ。これが一般的な使い方だと思われるが、厳密な定義があるわけではないため、メーカーによって別の呼び方をしている場合もある。今回扱うのはマイク機能を搭載したヘッドセットだ。
ヘッドセット選びでは、まず接続方法を調べることが重要だ。使いたい機器につながらなければ、そもそも使うことができない。接続方法によっては、用途と合わないこともある。
接続方法は、まず有線と無線に分けられる。さらにそれぞれ種類があるので、順に見ていこう。
ヘッドセットやイヤホン、スピーカーなど多くの機器で利用されている端子だ。モノラル用の2極、ステレオ用の3極、ステレオ+マイクの4極、ステレオ+ノイズキャンセル等の5極と、端子の種類によって対応する機能が異なる。オス側端子をプラグ、メス側端子をジャックと呼ぶ。
古めのPCやオーディオ機器では、オーディオ入力と出力で端子が分かれていることが多かった。現在は両機能がまとまった4極端子1個を採用することが多い。ケーブルと端子で種類が合わない場合は、分岐ケーブルで変換することは可能だ。ヘッドセット側の4極プラグを機器側の3極ジャックにつないだ場合は、マイクが利用できず音声出力のみ利用できる。
4極のプラグ/ジャックには「CTIA」と「OMTP」の2種類の規格があり、規格が合っていないと正しく利用できない。現在はCTIAが主流となっており、新しい機器でトラブルになることは少ないが、古い機器や古い機器に付属していたイヤホンなどが使えないということは起こりうる。
3.5mmミニプラグの魅力は、採用している機器が非常に多いことだ。PCだけでなくスマートフォン、家庭用ゲーム機、音楽プレイヤーなど幅広く利用できる。
USB接続のヘッドセットは主にPCで使う。PCがUSB規格の「USB Audio Class」に対応していればデバイスドライバーのインストールは不要で、ほぼ全てのPCで使えるのが魅力だ。PC以外の機器でもUSB Audio Classに対応していれば利用できるが、そこまで細かな仕様は調べられないことも多い。
USB接続ではヘッドセットそのものがUSBオーディオ機器として扱われ、PC本体のオーディオ機能は使わない。そのため、PCが対応していない仮想7.1チャンネルサラウンドなどの機能を追加することもできる。またレアケースではあるが、サウンド機能が故障などで動作しないPCでも使える。反面、マザーボードが搭載しているサウンド機能が使えなくなってしまうので、少しもったいない面もある。
無線接続では、Bluetoothの汎用性が高い。スマートフォンではほとんどの機器で利用できるのが魅力だ。ただし、仕組みが複雑で、少し分かりにくいのが弱点と言える。
Bluetoothは「プロファイル」という仕組みを使ってさまざまな機能を利用できるようにしている。オーディオは「A2DP」プロファイルだ。これと音声の圧縮、転送の方式を定めた「コーデック」を併せて利用し、音声転送を行っている。このコーデックによって、音質や遅延などの特性が変化する。特に標準コーデックの「SBC」は遅延が大きく、アクションゲーム等には向かない。低遅延が売りの「aptX Low Latency」コーデックや「aptX Adaptive」コーデックは対応する機種が限定される。
また、新しく「LEオーディオ」という方式も登場しているが、2023年5月時点ではまだ普及していない。
ゲーミングヘッドセットで人気の方式が、専用アダプターを使った無線接続だ。各メーカーが独自の低遅延無線技術を採用し、有線と変わらないほど遅延のない音声転送を可能にしている。
弱点は、専用アダプターはUSB接続のため、USB接続のヘッドセット同様に利用できる機器が限定されてしまうことだ。
ゲーミングヘッドセットでは、マイクの仕様にも注目しよう。ボイスチャットをしながらゲームをプレイする場合、声がクリアに聞こえないと連携を取りにくい。ポイントは、声以外のノイズを拾いにくくする仕組みだ。
1つはマイクの指向性。マイクの性質には大きく分けて単一指向性、双指向性、無指向性(全方向性)の3種類がある。単一指向性は1方向からの音を取り込み、他の方向からはほとんど取り込めない。双指向性は前と後ろに強く、左右からの音に弱い。無指向性は全方向の音を取り込む。マイク単体の製品は、用途によってこれらの性質を使い分けている。
周囲のノイズを拾いにくいのは単一指向性だ。ただし、少しポイントがずれると急に音を拾いにくくなるため、きちんとマイクの位置をセットする必要がある。
マイクにウインドスクリーンを付属している製品もある。マイク先端にあるスポンジのことだ。これがあると、マイクを吹いてしまった時のノイズを大きく低減できる。
ただし、自分の使うヘッドセットで低減できるのは自分の声のノイズなので、恩恵があるのは通話相手。相手への気遣いと考えるとよいだろう。
それでは、実際に製品を見ていこう。製品選びでは、接続方法とマイクのほかにデザインやイヤーパッドの質感、調節範囲、音量調節などの操作、付属ソフトなどさまざまな観点がある。装着感は顔の大きさや好みなどで評価が変わるため、可能であれば店頭でサンプルを試せると良い。
対応機種 | PC、PS5、PS4 |
ドライバーユニット | 50mm ネオジウム |
感度 | 114±3dB |
再生周波数帯域 | 20~20,000Hz |
インピーダンス | 32Ω@1kHz |
マイク指向性 | 無指向性 |
マイク感度 | -41±2dB |
マイク周波数特性 | 100~10,000Hz |
マイクインピーダンス | 2.2kΩ |
インターフェース | Bluetooth 5.2、2.4GHz Wireless |
ワイヤレス範囲 | Bluetooth接続時:最大9m 2.4GHz Wireless接続時:最大15m |
バッテリー持続時間 | Bluetooth接続時:最大37時間 2.4GHz Wireless接続時:最大24時間 |
重量 | 275g |
付属品 | ワイヤレスUSBアダプター、USB充電ケーブル(1.8m) |
HS65 Wirelessは、Bluetoothと独自方式に対応した無線ヘッドセットだ。「iCUE(アイキュー)ソフトウェア」という独自ソフトに対応し、OS上でイコライザーなどの設定ができる。「SoundID(サウンドアイディー)」による調整サポート機能にも対応しており、好みに合わせた設定が簡単に行えるのも特徴だ。
イヤーカップは大きく、耳を完全に覆うタイプ。側面に合皮、肌に触れる部分にファブリック素材を使用しており、肌触りが良い。非常に柔らかいメモリーフォームを内蔵しているため顔にフィットし、ヘッドバンド内側のクッションと合わせて装着感は柔らかだ。適度な締め付けにより、首を振ってもずれにくい。マイクは無指向性だが、開口部が口元にしかないため少し離すだけでかなり音を拾わなくなった。
設定はiCUEソフトウェアで行う。イコライザーを使うと音の聞こえ方を変化させられる。ゲーム用途だけでなく、音楽や映画の鑑賞でも利用できるのは便利だ。
ドライバーユニット | 50mm ネオジウム |
感度 | 109±3dB |
再生周波数帯域 | 20~40,000Hz |
インピーダンス | 32Ω@2.5kHz |
マイク指向性 | 無指向性 |
マイク感度 | -42±2dB |
マイク周波数特性 | 100~10,000Hz |
マイクインピーダンス | 2.0kΩ |
LEDカラー | RGB |
インターフェース | Bluetooth 5、2.4GHz Wireless、USB、3.5mmステレオミニプラグ |
ワイヤレス範囲 | Bluetooth接続時:最大9m 2.4GHz Wireless接続時:最大18m |
バッテリー持続時間 | 最大15時間 |
重量 | 382g |
付属品 | ワイヤレスUSBアダプター、USB充電ケーブル(1.8m)、3.5mmステレオミニプラグケーブル(1.5m)、ポーチ、クイックスタートガイド |
VIRTUOSO RGB WIRELESS XTは接続方法が豊富な有線/無線両対応ヘッドセット。有線は3.5mmミニピンジャック、USBのいずれにも対応し、無線はBluetoothと独自方式の「SLIPSTREAM WIRELESS」が利用できる。これ1台で多くの機器に接続できるのが売りだ。「SLIPSTREAM WIRELESS」はCORSAIR独自の低遅延無線技術で、同社製の無線マウスや無線キーボードでも採用している。
2種類の無線方式を同時に使い、2台の機器に同時接続できるのもポイント。スマートフォンのアプリでボイスチャットをしながら、PCや家庭用ゲーム機でゲームをプレイするといったことが可能になる。マイクはHS65 Wirelessと似た仕様で、無指向性だが開口部が口元にしかない。
また、iCUEソフトウェア利用時にはドルビーの空間オーディオ「Dolby Atmos」に対応し、USB有線接続時にはハイレゾ音源の再生に対応するなど、ゲームだけでなく幅広いコンテンツが楽しめるのも特徴だ。
耳当て部には端子やボタン類を多く備えている。左側はUSB端子と3.5mmミニピンジャック、マイクブーム用端子、右側には音量調節用ダイヤルに有線/無線切り替えスイッチ、マルチファンクションボタンがある。Bluetoothのペアリングにはマルチファンクションボタンを使う。
ドルビーの「Dolby Atmos」に対応し、対応コンテンツでは音の鳴っている方向まで感じられるようになる。Windows 10/11では、マイクロソフトストアから「Dolby Access」アプリを導入すると利用可能だ。
ドライバーユニット | 40mm ネオジウム |
感度 | 107dB |
再生周波数帯域 | 20~40,000Hz |
インピーダンス | 32Ω |
マイク指向性 | 単一指向性 |
マイク感度 | -38dB |
マイク周波数特性 | 100~10,000Hz |
マイクインピーダンス | 2.2kΩ |
ケーブル長 | 1.2m(USB)、1.0m(3.5mmステレオミニプラグ) |
インターフェース | USB 2.0、3.5mmステレオミニプラグ |
本体サイズ | 210×185×100mm |
重量 | 約300g |
対応OS | Windows 10 |
Immerse GH61はMSIの有線ヘッドセットだ。耳当て部にマイクブームを収納可能、折り畳んでキャリーケースに収納できるなど、可搬性に優れている。オンキヨー製のオーディオドライバーを採用しているのも特徴だ。接続方法は3.5mmミニプラグが基本で、付属するUSBアダプターを使ってUSB接続で利用することも可能。
マイクは単一指向性。マイクブームが柔らかいので、口元に配置しやすい。USBアダプター利用時はボタンでミュート機能が利用できる。
サウンド調節ソフト「Nahimic for Headset」に対応しており、コンテンツに合わせて音声の特性を変更できる。基本的な使い方は用途に合わせてプリセットを選ぶだけと簡単。プリセットを選んだ後で、さらに好みに合わせて効果の強弱を調節することも可能だ。
ドライバーユニット | 53mm |
再生周波数帯域 | 20~40,000Hz |
インピーダンス | 23Ω |
マイク指向性 | 単一指向性(カーディオイド) |
ケーブル長 | 1.2m(3.5mmステレオミニプラグケーブル) 1.6m(USBサウンドアダプタ) |
インターフェース | 3.5mmステレオミニプラグ USB(USBサウンドアダプタ使用時) |
付属品 | USBサウンドアダプタ(1.6m) 延長スプリッターケーブル(2m) クイックスタートガイド |
REACT+はプロゲーミングチームの「Fnatic」が手掛けるゲーミングブランド「Fnatic Gear」のヘッドセットだ。付属ソフトのないシンプルな構成が特徴で、パッケージから出してPCや家庭用ゲーム機につなげばすぐ使い始められる。設定変更ができないため色々試したい人には向かないが、とにかく分かりやすいゲーミングヘッドセットが欲しい人に向く。
マイクは単一指向性。ウインドスクリーンを標準で搭載しているので、マイクを吹いてしまってもノイズが乗りにくいのはメリットだ。
付属のUSBアダプターを利用すると、仮想7.1チャンネルサラウンド機能が利用できる。こちらも設定用のアプリ等はなく、使う際はボタンで有効にするだけで良い。
ラインアップには「+」が付かない「REACT」もあり、こちらはUSBアダプターが付属しない。
付属品はイヤーカップ用クッション、USBアダプター、3.5mmミニプラグの分岐ケーブル。こちらも交換用のクッションは表面がファブリック素材だ。装着済みのクッションはPUレザー製。分岐ケーブルは4極から3極×2となっており、ヘッドホンとマイクで端子が分かれている場合に使う。
以前は、無線方式は遅延が酷くゲームプレイに向かなかった。しかし現在は製品を選べば無線でも違和感なく利用可能だ。無線方式なら、ちょっとパソコンの前を離れる際にいちいちヘッドセットを外す必要がなくなる。着脱の手間だけでなく、ボイスチャットを中座しなくてもよくなるなどメリットは多い。そのためゲーミングヘッドセットは無線方式の製品が増えている。
一方、有線方式はバッテリー残量を気にしなくて良いため長時間のプレイでも安心。接続の設定も不要なので、PCの設定に苦手意識がある人にも使いやすい。
7.1チャンネルや空間オーディオといった機能面だけでなく、こうした性質も踏まえると製品選びがしやすくなるだろう。ぜひ自分に合った一品を見付けてほしい。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
目次
使い方によって選ぶべきストレージの種類は異なる。まずは、使い方から2台目の構成パターンを考えてみよう。
1つ目は、あまり使わないファイルを保管しておく倉庫としての使い方だ。ソフトはOS用のSSDにインストールし、普段使いでは基本的にそちらを使う。終了したプロジェクトのファイルや旅行の写真など、あまり頻繁にはアクセスしないデータを2台目のストレージに保存する。この場合、2台目に読み書き速度はあまり必要なく、容量が大きい方が良い。
2つ目は、特に使い分けは考えず2台目のストレージにもソフトをインストールする使い方。OS用のSSDの容量を拡張するイメージだ。この使い方では、容量に加えて読み書き速度もある程度高い方が良い。
3つ目はPCの外にストレージを設けるパターン。PCから独立させることで、トラブル時にデータを守りやすくなる。ただし、基本的にソフトのインストール先としては使えない。
次に使用するストレージの組み合わせのパターンを考えてみよう。OS用のSSDはM.2の高速なモデルを使うと想定し、今回は2台目のストレージとして5パターンを見ていく。
1つ目は基本形とも言える、SSD+HDDのパターンだ。高速なSSDにOSやソフトをインストールし、低速だが大容量のHDDにデータを収納する。SSDとHDDの良いとこ取りの使い方だ。SSDが普及し始めた頃は容量が64GBや128GBなど小さかったため、この使い方が流行した。この考え方は今でも有効だ。新しく自作PCを組む場合でも、この組み合わせを選ぶ人は多いのではないだろうか。
OS用にSSD、データ用にHDDという組み合わせ。HDDは4TBや6TBといった大容量のモデルが手頃な価格で購入できるので、データ倉庫用として適している。ただし、OS用SSDとの使い分けには気を使う必要がある。
ただし、HDDは読み書き速度が低いため、頻繁にアクセスするファイルを保存するのには向かない。せっかく高速なSSDを使っているのに、HDDにばかりアクセスしていては本末転倒だ。作業中のファイルはSSDに置いておき、プロジェクト等が終わったらHDDに移すといった工夫が必要になる。
①SSD(CORSAIR MP510 960GB)
②HDD(Seagate Technology IronWolf 4TB)
「CrystalDiskMark 8.0.4」(ひよひよ氏)で読み書き速度を計測した。①がOS用に使用したSSD(CORSAIRの「MP510 960GB」)、②がHDD(Seagate Technologyの「IronWolf 4TB」)の結果だ。非常に大きな差があるのが分かる。
常にSSDとHDDの使い分けを意識しなければならないという点は弱点と言えるだろう。SSDの価格が下がり、容量も大きくなった今、この使い方が最適とは限らない。他のパターンも考えてみよう。
2つ目のパターンとして、OS用のSSDに、同等かそれ以上の速度を備えたSSDを追加するケースを考えてみる。両者の速度差が小さいため、ソフトのインストール先として使っても違和感がない。ドライブレターが分かれるため1台での運用とまったく同じとはいかないが、あまり使い分けを意識せずに使える。
SSD+SSDという組み合わせ。1台目のSSDの容量が足りないのなら、2台目を追加すればよいというシンプルな考え方だ。速度差による使い分けを気にしないで良いのがメリット。
例えば、AAAクラスと呼ばれる大型の3Dゲームタイトルはデータ量が多く、インストールしたストレージの速度によってデータロードの待ち時間が変わる。快適にプレイするなら高速なSSDを使いたい。そのためにOS用SSDの空き容量を確保するといった工夫が不要な点は便利だ。
①SSD(CORSAIR MP510 960GB)
②SSD(CORSAIR MP600 PRO XT 2TB)
①がSSD(CORSAIRの「MP510 960GB」)、②もSSD(CORSAIRの「MP600 PRO XT 2TB」)のテスト結果。購入するタイミングによっては、追加するSSDの方が速いということもあるだろう。
ただし、高速なSSDはHDDと比べて価格も高めなので大容量モデルを選びにくい。保存するデータの増え方が速い場合はHDDを選んだ方が良いだろう。
また、SSDの高速化のペースは速く、マザーボードのM.2スロットが使いたいSSDの速度に対応しているかは要確認。マザーボードによっては、M.2スロットによって対応速度が異なるということもある。
追加するSSDに、SATA接続の2.5インチSSDを使うパターン。メリットは価格と速度の両立だ。読み書き速度は高速SSDより低いものの、HDDと比べれば圧倒的に高く、価格は高速SSDより控えめとなる。追加する2.5インチSSDは基本的にデータ置き場になるが、そのデータへのアクセスも高速になる。多少遅くなることを許容できれば、ゲームのインストール先としても使える。
追加するSSDに2.5インチモデルを選ぶ。価格が高速SSDよりも安いため、大容量のモデルを選びやすいのがメリットだ。
コンシューマー向けの2.5インチSSDはSATA接続になるため、扱いやすい点もメリットだ。M.2 SSDは高速な代わりに、M.2スロットの数や対応する転送速度などマザーボードの対応状況の確認が必要。SATAは6Gbpsで高速化が止まっているため、そうした心配は不要だ。
①SSD(CORSAIR MP510 960GB)
②2.5インチSSD(Crucial MX500 250GB)
①がSSD(CORSAIRの「MP510 960GB」)、②は2.5インチSSD(Crucialの「MX500 250GB」)のテスト結果。2.5インチSSDはM.2の高速SSDと比べると遅いが、HDDよりかなり高速だ。
このパターンは速度と価格のバランスを取ることが重要。2.5インチSSDは1台あたりの最大容量がHDDより小さく、価格も高い。さらに容量が一定以上になると急激に価格が上昇するため、容量あたりの価格が安い1TB~2TBの容量帯から選ぶとよい。それより大きな容量が欲しいのであれば、このパターンは諦めてHDDを選んだ方が良いだろう。
データ用のドライブをPCの外に置くというパターンだ。これには内蔵ストレージとは違ったメリットとデメリットがある。メリットはPCの不調の影響を受けにくいことと、データの移動や移行がしやすいこと。例えばPCの調子が悪い時、他のPCにつなぎ変えればデータを引き継いで利用できる。外付けならPCケースを開ける必要もなく、USBケーブルを着脱するだけで済む。
デメリットはPCの他に設置スペースが必要になることだ。モデルによっては別途電源も必要になる。この点はPCケース内に収まる内蔵型の方が管理しやすい。
2台目のストレージを外付けにする。PCケースを開ける必要がなく、増設の作業は最も簡単だ。写真はGlyphの「Blackbox Pro 2TB」。
Blackbox Pro 2TBのテスト結果。HDDは高速なモデルでも最大250MB/s程度なので、USB 3.0以降で接続していれば最大速度が頭打ちになることはない。
一方で、外付けのストレージへソフトをインストールすることは推奨されないため、用途はほぼデータ置き場に限定されてしまう。それもあり、USB接続の外付けストレージを使うのであればHDDが良いだろう。大容量のモデルが比較的安価に購入できる。
外付けのHDDは、PCが故障した際でもデータを簡単に取り出せるため、データのバックアップ先としても優秀。メーカーがバックアップソフトを提供していることも多い。
外付けストレージをさらに発展させるとNASになる。NASは「Network Attached Storage」の略で、名前の通りネットワーク(LAN)越しにアクセスする外部ストレージだ。NASは独自のOSを搭載しており、モデルによってはアプリをインストールして機能の追加もできる。PCと直接ケーブルをつなぐ必要がないため、データを完全にPCと切り離せる。
NASはネットワーク経由でアクセスする外付けストレージ。USB接続のHDDとは違い、ストレージそのものが様々な機能を備えている。写真はSynologyの「DiskStation DS720+」。
PCが不調になっても影響を受けない、機器間のデータのやり取りをしやすいといった点はUSB接続のHDDと同じだが、複数の機器から同時にアクセスできる点や、設置場所の自由度が高い点など、メリットは多い。ネットワークに接続するため、外部ストレージをつないでいるという意識なしに使えるのも便利だ。インターネット経由でファイルを送るなど、クラウドストレージのような使い方もできる。
NASの読み書き速度はネットワークの速度で決まる。1Gbps対応の有線LANに接続している場合は最大で110M~120MB/s前後となる。
Synology製のNASは「DiskStation Manager(DSM)」という独自OSを搭載している。Webブラウザー上で操作し、搭載したドライブの管理やファイル操作、アプリの追加などができる。
また、NASはRAIDに対応しているモデルが多く、故障への対策にもなる。自作PC向けのPCケースでは3.5インチベイが減少傾向にあり、マザーボードがRAID機能を備えていても利用しにくい。NASに任せてしまうのも有力な選択肢だろう。
ただし、機能が多いぶん使いこなすために覚えることが多いため、導入の手間は少し多い。価格もUSB接続のHDDと比べると高価だ。
SSDとHDD、内蔵と外付けの組み合わせで5つのパターンを紹介した。追加するストレージに何を保存するか、どんな効果を求めているかで選択は変わる。
例えば、写真や動画が溜まって空き容量が少なくなった場合、HDDを追加して移行させればOS用SSDの空き容量は簡単に増やせる。反対に、ゲームを大量にインストールしたことで空きが少なくなってしまった場合は、HDDを追加してもあまり解決にならない。読み書きの遅いHDDにゲームをインストールするより、ゲーム用のSSDを追加する方が有効だろう。
ゲームのインストール先としての適性を調べるために「3DMark」(UL)の「Storage Benchmark」を試したのが下のグラフだ。
「3DMark」の「Storage Benchmark」の結果を比較した。「バンド幅」はテスト実行中の平均読み書き速度だ。HDDは総合スコア、バンド幅共に非常に低かった。
【テスト環境】CPU:Intel Core i5-13600K、メモリー:DDR5-5200 16GB×2、マザーボード:ASRock Z790 LiveMixer、SSD(OS用):CORSAIR Force MP510 960GB、OS:Windows 11 Home
Storage Benchmarkはゲームのインストールや起動などを実行した時のデータアクセスをシミュレートしたテスト。高速なSSDのスコアが高いのは当然だが、HDDのスコアの低さが際立つ。SATAのSSDもスコアは低いが、HDDとは比較にならない。やはりゲームはSSDにインストールした方が良いだろう。
バックアップが目的であれば、外付けストレージが良い。バックアップでは速度が高いよりも容量が大きい方が良いため、SSDよりもHDDの方が適している。NASは使いこなしに少し慣れが必要だが、多機能でバックアップ以外にもできることが多いのが魅力だ。
今回外付けSSDを紹介していないのは、ドライブレターが変わってしまいやすく、ソフトのインストール先として使いにくいため。データ用倉庫として使うのであれば、大容量モデルを選びやすいHDDの方が良いだろう。常につないだままにする前提であればトラブルは起こりにくいため、小型PCなどで内蔵ストレージの増設が難しい場合に検討すると良い。
今回は2台構成の例を紹介した。用途や目的を考えると、意外に選択肢が豊富にあることが分かったのではないだろうか。SSDが大容量化した結果、SSD1台だけという構成のPCでも容量不足にはなりにくくなった。また、容量不足を補うための2台目としてもSSDを使う選択肢が生まれた。容量の大きさと価格の安さが強みのHDDは、条件に合えば使うという位置付けになったと言ってよいだろう。2台目にHDDという選択は定番ではあるものの、いつも最適とは限らない。目的に合ったストレージ構成を見つけてほしい。
(文・写真=SPOOL)
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目次
トラブルの早期解決には、初期診断がとても大切だ。原因となり得る事項はたくさんあり、優先順位を付けないと試す手間が膨大になる。
まず確認するのは「Windowsが起動するか」、「画面が映っているか」、「ファンが回っているか」だ。特に誰かから相談を受けた場合は、人によって「動かない」が何を指しているのかが異なるため、最初に明確にしておく必要がある。Windows>画面>ファンの順番で質問できると状況把握がスムーズだ。例えば、Windowsの起動トラブルであれば画面が映っており、電源も入っていることが分かるし、ファンも回っていないとなれば考えられる原因は限定される。このようにして試すべきことを減らしていく。
この段階では「Windowsが正常に起動しない」「画面は映るがWindowsの起動まで進まない」「ファンも回っていない」の3パターンまで絞れていればOKだ。Windowsが正常に起動した後のトラブルはソフトウェアや使い方の問題になるため、ここでは扱わない。
自作PCの場合、組み立て直後なのか動いていたPCが動かなくなったのかも重要になる。組み立て直後は組み立てミスの可能性もあるため、考えられる原因が多い。動いていたPCであれば、ひとまず組み立てミスは考慮せずに済む。
それでは、「ファンも回っていない」から1つずつ見いていこう。
ここで言う「ファンが回っていない」は、PCの全てのファンが動作していない状態を指す。一部のファンが動いているのであれば、それは動いているという判定で良い。
ファンが回らない原因は、突き詰めると1つだけ。電源がオンになっていないからだ。ほとんどの場合、どこかのパーツが故障していても電源をオンにすることは可能で、オンにさえなればファンは回る。
電源がオンにならない主な理由は、①電源ユニットが故障している、②ケーブルがささっていない、③電源ユニットの主電源ボタンがオフになっている、の3パターン。全く反応しないとつい故障を疑ってしまうが、まずはケーブルの接続状況を再確認しよう。嘘のような話だが、この症状の何割かはコンセントからケーブルが抜けていることが原因だ。PC側の電源ケーブルが抜けかかっている場合もある。きちんと差さっているように見えても、一度ケーブルを抜いて差し直してみるとよい。電源ユニットに主電源スイッチがある場合も、一度オフ、オンと切り替えてみよう。
非常にまれだが、PCケースの電源スイッチの故障も考えられる。マザーボードの電源スイッチピンにPCケースのリセットをつなぎ、リセットボタンで電源がオンになるようであればこれが原因だ。
どうやっても電源がオンにならない場合は、電源ユニットの故障を疑う。別の電源ユニットをつないで動作するようならほぼ確定と言ってよいだろう。
電源がオンになり、一瞬ファンが動いた後でシャットダウンしてしまうこともある。これは何らかの安全機構が働いている可能性が高い。マザーボードやCPUクーラーなどの付け直しを試してみると良い。
ファンが回っているものの画面は映らないという場合、さまざまな理由が考えられる。まずファンの挙動を確認しよう。
ファンが一定の間隔で停止し、再度動き始めるという動作を続けている場合、システムが再起動を繰り返している。この症状もマザーボードの安全機構が働いている可能性が高い。原因として考えられるのは主にCPUとメモリーだ。
CPUが原因の場合は、温度が上がり過ぎている可能性がある。電源をオンにした直後に上がり過ぎるのは、CPUクーラーがきちんと固定できていないことが原因だ。取り付けが不十分、固定する部品が破損して少し浮いているといった理由が考えられるため、一度外して付け直してみるとよい。
CPU温度はUEFIの設定画面で確認できる。正常な範囲はPCによって異なるが、ここで70度を超えているようであれば異常と考えてよいだろう。上の画面は、CPU付属クーラーのファンを停止させ、この画面で10分ほど置いたところ。
メモリーが原因の場合は、故障の疑いが強い。使用するメモリースロットの位置を変える、2枚搭載しているのであれば1枚外すといった検証を試そう。
マザーボードがPCケースとショートしている場合にもこの症状が出ることがある。組み立て直後であれば、マザーボードの下にねじがはさまっていないか、不要な位置に金属製のスペーサーが付いていないかなどをチェックすると良い。PCケースから取り出し、マザーボードにCPU、メモリー、(必要であれば)グラフィックボードだけをつないで動作するかも試すと良い。
PCケース内にねじを落とし、気付かずにマザーボードではさんでしまうことがある。この場合も再起動を繰り返す場合がある。似たケースに、マザーボードのねじ穴がない場所にPCケースのスペーサーが付いているという状況がある。
ファンが回っていて正常に動作しているように見えるものの、画面が映らない場合もある。この症状から原因を特定するのは困難だ。考えられる原因を1つずつ探っていこう。
使えていたパソコンがある日電源を入れても画面が映らなくなったというケースでは、メモリーが原因であることが多い。故障ではなく、ただ差し直すだけで直ることもある。何かの拍子でメモリーが外れかかっていたという場合もある。
故障したストレージ(HDDやSSD)がつながっていることが原因で、この症状が出る場合もある。Windowsの入ったストレージだけでなくデータ用でも発生するため、一旦全てのストレージを外してみると良い。
特定のUSB端子に特定の機器をつないでいると画面が映らなくなるということもあるため、周辺機器を全て外して起動してみるのも有効だ。
組み立て直後の自作PCの場合は、UEFI(BIOS)が取り付けたCPUに対応していない、マザーボードが取り付けたメモリーの動作クロックに対応していない、I/Oパネルの端子にバックパネルの出っ張りが入っている、CPU用8ピンやグラフィックボードの補助電源ケーブルがささっていないといった原因も考えられる。
PCは正常に起動しているのに、ディスプレイとの接続に問題があって画面が映らないこともある。グラフィックボードを使っているにも関わらずマザーボード側の映像出力端子にケーブルをつないでいる場合や、ディスプレイ側の表示設定で使用する端子がケーブルをつないだ端子とは別になっている場合などだ。映像ケーブルをつなぎ直した時などに発生する。
マザーボードのモデルによっては、異常を知らせるLEDランプやエラーコードを表示する液晶を搭載している場合がある。これらを活用すれば、問題の原因を突き止めやすくなる。
どうしても改善しない場合は、マザーボードが故障している可能性もある。マザーボード故障の診断は予備のパーツがないと難しいため、購入店などに相談するとよい。
画面が映っても、Windowsの起動画面まで進めない場合がある。このトラブルはUEFI設定画面でおおむね解決できる。
マザーボード上のファン端子は個別に管理されている。その中でもCPUクーラー用のファン端子は特別で、マザーボードのモデルによっては回転数が一定以下だとエラーと判断することがある。CPUクーラーの冷却が不十分だとPC全体の動作に悪影響があるためだ。エラーメッセージが表示されるなら、CPUクーラーのファンがきちんと動いているかチェックしよう。
CPUクーラーのファンを別のファン端子につないでいると、ファン自体は回っているのにマザーボード側では動いていないと判断されてしまう。組み立て直後やCPUクーラーを付け直した後などは間違えている可能性もある。まずUEFI設定画面でCPUクーラーのファンの回転数をきちんと検知しているか確認しよう。
なんらかの原因で、SSDやHDDをUEFIが認識していない場合がある。Windowsをインストールしたストレージがないため、当然起動はできない。この場合はストレージの付け直しやUEFIの設定リセットなどを試すと良い。SATA接続のストレージを使っているのであれば、ケーブルや端子を変えるのも手だ。
UEFIでの設定が原因の場合もある。古めのマザーボードではシステムの起動モードとして「BIOSモード」と「UEFIモード」が用意されている場合がある。この設定をWindowsをインストールした後に変更すると、UEFI上でストレージを認識しなくなり、Windowsの起動画面まで進めなくなる。
デバイスの起動順番も重要だ。Windowsのインストール先よりも優先順位の高いデバイスが設定されていると、そこで止まってしまうこともある。また、UEFIモードでWindowsをインストールした場合は「Windows Boot Manager」という項目を選ぶ必要がある。こうした設定も見直しておこう。
ストレージが故障していると、UEFI設定画面で型番が表示されなくなることもある。他の端子やスロットに移してみても認識しないようであれば、故障している可能性が高い。
Windowsの起動画面まで進むが、そこで画面が止まってしまう、再起動してしまうといった症状もある。あと少しのように見えるが、ここも原因の判別は難しい。
再起動するタイミングが毎回異なる場合、CPUやメモリーが疑わしい。特定のファイルが破損しているなどの理由なら似たタイミングで問題が発生する。画面が映らないケースと同じだが、CPUの熱暴走やメモリー不良は症状が不安定なことが特徴だ。
CPUが原因の場合は熱暴走の可能性が高い。UEFI設定画面でCPUの温度を確認しよう。CPUのモデルや室温によって目安は異なるが、UEFIの設定画面で70度を超えているならCPUクーラーの付け直しや交換を考えよう。
メモリーが原因の場合は、故障の可能性がある。画面が映らない場合と同様に、スロットを変える、枚数を減らすなどを試して動作するか確認する。
再起動するタイミングが同じなら、特定のファイルの読み込みに失敗している可能性がある。Windowsの修復を試してみると良い。Windowsのインストール用USBメモリーか、作ってある場合はWindowsの「回復ドライブ」から起動して修復を試みよう。Windowsのインストール先のストレージが故障している場合もあるため、可能であればメーカーのツールを使ってチェックできるとなおよい。
Windowsのファイルが破損している場合は、修復や再インストールを試す。Windowsをインストールした際のUSBメモリーがあれば試せる。インストール時に「コンピュータを修復する」を選ぶとトラブル対処用のメニューが開く。
Windowsの起動に失敗する場合は、UEFIの「Fast Boot」やWindowsの「高速スタートアップ」が原因の可能性もある。起動を高速化するために一部の起動時のチェックやファイル読み込みを省略するので、まれにうまく起動できなくなるようだ。これは一度電源を完全に切って高速化をリセットすることで改善できる。電源ケーブルを抜く、CMOSクリア(UEFIの設定クリア)をしてからUEFI設定画面を開くといった手段が考えられる。
PCが正常に動かない場合、どうしてもパーツの故障を疑ってしまいがち。しかし、ケーブルの抜き差しやメモリーの差し直しなどで解決できるトラブルも多い。簡単にできる診断や対応の方法を知っていると、いざという時に安心だ。
トラブルの原因はケースバイケースであることが多く、対応するのはハードルが高いと考えている人は多いだろう。自信がない場合は、まず最も手軽なメモリーの差し直しから試すのがお勧めだ。使っていたパソコンが動かなくなった場合は、これだけで改善することも多い。
自分でトラブルが解決できると嬉しいもの。PCが動かなくなった場合は、本記事を参考にして原因究明に挑戦してみてほしい。
(文・写真=SPOOL)
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CPUはサイズこそ非常に小さいですが、パソコンの中心とも言える重要なパーツです。CPUの速さがパソコンの速さに直結します。
CPUは「Central Processing Unit」の略で、「シーピーユー」と読みます。パソコン内で行われる処理の多くを担当し、WindowsなどのOSも、OS上で動作するアプリも、大部分はCPUが処理します。CPUが速ければアプリの起動が速くなる、画像処理が早く終わるなど、待ち時間が短くなります。
CPUにはほかの各パーツに命令を出す役割もあるため、人の頭脳に例えられます。もちろんCPUだけで全てが決まるわけではありませんが、一般的にパソコンが高性能、速いと言う場合は、上位モデルの高速なCPUを搭載していると考えてよいでしょう。
CPUの速さにはさまざまな種類があり、性能は一定時間で行った仕事量で測れます。人が走った距離に例えてみましょう。速く走れれば同じ時間で走れた距離は伸びます。速く走るには身体能力を上げる方法と走り方を改善する方法があり、新しい世代のCPUはそのどちらか、または両方で高速化を実現します。人数を増やすという方法もあり、2人以上で同時に走れば合計の走行距離は飛躍的に増えます。
この例えでの身体能力は「動作クロック」、走り方は「設計(世代)」、人数は「コア数」を表しています。動作クロックは高いほど、設計は新しいほど、コア数は多いほど高性能です。
マザーボードは端子やスロットをたくさん備え、他のパーツを取り付けられるようになっています。CPUもマザーボードに取り付けます。
マザーボードは各パーツを取り付ける基盤となるパーツです。マザーボードそのものもさまざまな機能を備えていますが、CPUやメモリー、拡張ボードなどを取り付け、使えるようにするのが主な役割と言ってよいでしょう。人体で例えると、道具を使うための手足、体になります。
反対に言うと、CPUやメモリーなどPCパーツの多くはマザーボードによって使えるかどうかが決まります。使えたとしても、パーツがきちんと性能を発揮できるかもマザーボードの種類に影響されます。マザーボード自体は基本的にパソコンの速度に影響しませんが、間接的にパソコンの性能を左右するパーツであるとも言えます。
マザーボードには組み合わせるPCケースによってさまざまなサイズがあり、マザーボードの選択によってパソコンのおおまかなサイズが決まるという側面もあります。
SSD(上)とHDD(下)は見た目が大きく異なりますが、同じ役割を持ったパーツです。現在はSSDの方がよく使われています。
ストレージという言葉はデータの保管場所を表し、特定のPCパーツを指す言葉ではありません。一般的に、パソコン内部で使われるストレージはHDD(Hard Disk Drive、ハードディスク)とSSD(Solid State Drive、エスエスディー)の2種類です。
人体で例えると記憶なので脳になりますが、CPUや後述するメモリーとの区別が難しくなるため、ここでは机と本棚に例えましょう。本はできるだけ机の上に置いてあった方が便利ですが、スペースには限りがあるため置き過ぎるとあふれてしまいます。そこで、すぐに使わない本は本棚に入れておきます。机の上からはなくなりますが、必要な時には取り出せます。この時の本棚がストレージです。
HDDは大容量で容量あたりの価格が安いですが、読み書き速度が低いのが弱点です。SSDは読み書き速度は高いものの容量ではHDDにかなわず、容量あたりの価格も高めです。パソコンでは速度を重視してSSDを使うことが多く、HDDは保存しておきたいデータが多い人が2台目のストレージとして使うものになっています。
メモリーはストレージより高速な読み書き速度を生かしてデータの一時置き場として利用します。容量が足りないと全体の処理が遅くなる場合もあります。
メモリーはデータを一時的に保存しておくところです。データの置き場所という意味ではストレージと同じですが、ストレージが長期で保管するのに対してメモリーは一時的な保存場所です。
使い方は、ストレージの本棚に対してメモリーは机の上です。CPUが次に使うだろうというデータを収めておきます。本を本棚から机に移動させておくことで、すぐに使える状態にするというイメージです。使い終わったら本棚(ストレージ)に戻します。
一般的にメモリーはストレージよりも高速なので、メモリーを利用することで頻繁に使うデータに速くアクセスすることができます。その代わりパソコンの電源を落とすとメモリーに保存したデータは全て消えてしまいます。そのためデータを保管するにはストレージが必要になるのです。
グラフィックボードの本来の役割はディスプレイに映像を出力することです。しかし、現在は他の使い方も増えています。
グラフィックボードは映像を出力する機能を備えており、ディスプレイにつないでパソコンの画面を映すためのパーツです。現在は他の機能で注目されがちですが、おおもとの機能は映像出力になります。グラフィックボードの機能はCPUが内蔵している場合もあり、その場合は別途グラフィックボードを搭載する必要はありません。
映像用の端子には種類があり、どの端子をいくつ使えるかもグラフィックボードで決まります。CPUのグラフィック機能を使う場合はマザーボード次第になります。通常マザーボードの映像端子は1個か2個なので、ディスプレイをたくさんつないで使うためにグラフィックボードを搭載するという場合もあります。
映像出力以外の機能としては、3Dグラフィックの計算があります。最新の3Dゲームを高解像度でなめらかに動かすには高性能なグラフィック機能が必要で、上位モデルのグラフィックボードはCPUが内蔵するグラフィック機能よりもはるかに高い性能を備えています。3Dゲームを動かさないのであれば、多くの場合CPU内蔵のグラフィック機能で十分です。
PCケースはパソコンの見た目を決めるパーツです。同時に、パソコンに搭載できるパーツの種類や大きさも決まります。
PCケースは各PCパーツを収める箱で、収納と外装の機能を備えています。人に例えると身に付ける服のようなものと言えるでしょう。
人は服や上着で見た目が変わりますし、ポケットの大きさや数で持ち歩ける物の量が決まります。同様に、PCケースは外観を決める大きな要素となり、内部構造によって搭載できるPCパーツの種類や数が決まります。
洋服でも素材によって熱を閉じ込めるものと通すものがあるように、PCケースも構造によって熱がこもりやすい、発散しやすいなどの特性があります。マザーボードと同様にパソコンの性能には直接影響しませんが、それ以外の特性を決めるパーツと言えます。
パソコンパーツの役割をおおまかに見てきました。図にまとめてみましょう。
パソコンパーツはそれぞれ役割があり、いずれもパソコンが動作する上でなくてはならないものです。ほとんどのパーツはマザーボードにつなぎ、マザーボードはPCにケースに取り付けます。
ひとくちに「高性能なパソコンが欲しい」と言っても、編集した動画の書き出しを速くしたい、3Dゲームを快適にプレイしたい、もっと多くのデータを保存したいなど、実際は人によって求めるものが異なります。目的によって重要なパーツも変わるため、各パーツの役割を知ることは自分のニーズに合ったパソコンを知るための第一歩となります。
パソコンのスペックには性能だけではなく、サイズ感や拡張性も含まれます。メーカー製の完成品パソコンはパーツの増設や交換が難しいこともあるため、目的がはっきりしているのであれば、自作パソコンに挑戦してみるのもお勧めです。
(文・写真=SPOOL)
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CPUの対応は、大きくIntel製とAMD製に分けられる。CPUソケットの形状が異なるため、間違うことはあまりないだろう。対応CPUの項目にはいずれかのCPUシリーズが記載されているため、使用するCPUに合わせて選べばよい。
MSIの「PRO Z690-A」の例。「12th Gen Intel Core」とあるように、Intelの第12世代のCoreシリーズと、その同世代のPentium Goldシリーズ、Celeronシリーズに対応している。
注意点としては、そのマザーボードより後に発売したCPUには正式に対応していないため、BIOS(UEFI)のアップデートが必要な場合がある。特にAMDプラットフォームは1つのCPUソケットを何世代にも渡って使い続けることが多く、CPUの取り付けはできるものの動作しないという事態が起こりやすい。メーカーによって異なるが、基本的に対応するBIOSのバージョンは対応CPU一覧から確認できる(MSIの場合は対応するバージョンのBIOSをダウンロードできる)。
Mini-ITXなど小型のマザーボードを中心に、プラットフォームとしては対応しているものの、個別のマザーボードがTDPの高いCPUに対応していないというケースもある。TDPが100Wを超えるCPUを使う場合は、念のため確認しておくとよい。
対応CPUはおおむねチップセットで決まるため、チップセットとCPUソケット、CPUの対応関係を覚えておくと製品選びがしやすくなる。
チップセットはマザーボードの機能をまとめる役割を担っており、ここからおおまかな仕様が分かる。ただし、マザーボードのスペック表ではチップセットの型番以上の情報は掲載していないことがほとんどだ。
チップセットは最上位モデルが最も多機能で、下位モデルになるほど機能が減っていく。モデル間の差となるのはCPUやメモリーのオーバークロック対応、PCI Expressの総レーン数、USB端子の数など。各チップセットの特性を覚えておくと製品選びに役立つが、特定のマザーボードの仕様を調べる上ではそれほど重要ではない。チップセットの仕様は複雑な上、マザーボードはチップセットの備える機能を全て搭載しているわけではないためだ。
Intel Z690を例に、USBの仕様を見てみる。USB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)を最大4個、3.2 Gen 2x1(10Gbps)を最大10個、3.2 Gen 1x1(5Gbps)を最大10個、USB 2.0を14個利用できるという仕様だが、全てを利用できるわけではない。
Intelのチップセットは「Flexible High Speed I/O」という機能を備えており、一定の範囲で高速なデータバスの役割を変更できる。USB 3.xに割り当てられたデータバスは10本で、5Gbpsと10Gbpsは1本、20Gbpsの端子は2本利用する。そのため配分によってはUSB 3.x端子は最大6個というケースもあり得る。画像はIntel Z690のデータシートからの引用。
基板サイズは規格で決まっているが、必ずしも守られているわけではない。サイズ感の確認というよりも、PCケースと合わせる際の参考にするとよいだろう。
規格の名称 | 標準サイズ |
---|---|
Mini-ITX | 約170×170mm |
microATX | 約244×244mm |
ATX | 約305×244mm |
Extended ATX | 約305×330mm |
SSI-CEB | 約305×266mm |
標準サイズから外れる場合は、基本的に小さくなる。大きくなるとPCケースに収まらないが、小さい分には問題ないためだ。例えば270×200mmのようにATXより大幅に小さいマザーボードでも、長辺がmicroATXよりも大きいため、これはATXとして扱われる。
通常のタワーケースを使用するのであればあまり影響はないが、小型のPCケースでは内部スペースに少し余裕が生まれるため、組み立てがしやすくなる場合もある。
対応するメモリーの仕様は少し複雑だ。順番に見ていこう。
まずメモリースロットの本数。これによって最大容量も決まる。2022年8月現在、コンシューマー向けDDR4/DDR5メモリーの1枚あたりの最大容量は32GBなので、スロットが2本なら最大64GB、4本なら128GBとなる。大容量が欲しい場合はメモリースロットが4本のマザーボードを選ぶと良い。
次に動作クロックを確認しよう。スペック表では、非オーバークロック状態での対応クロックと、オーバークロック時の最大値が記載されている。オーバークロックしない場合は対応している中で最も高い動作クロックのメモリーを選べば問題ない。ただし、CPUによって対応するメモリーの動作クロックが異なる場合もある。併せて確認しておこう。
複雑になるのがメモリーの種類による制約だ。オーバークロック時の最大値は、使用するメモリーモジュールの種類や構成によって変化する。
メモリーモジュールがメモリーチップを管理するまとまりを「ランク」と呼ぶ。CPUのコア数に似た考え方で、2ランクのメモリーモジュールは1枚で内部的に2枚相当として扱われる。ほとんどのメモリーモジュールが1ランクまたは2ランクだ。ランクの数が増えると管理の手間も増えるため、構成によって最大クロックが変わる場合もある。上図のスペック表で「1R」や「2R」とあるものがそれだ。
「DPC(DIMM Per Channel)」はチャンネルあたり何枚のメモリーモジュールを取り付けるかを表す。例えば「1DPC 1R Max speed up to 5100MHz」とある場合、1ランクのメモリーモジュールを1チャンネルあたり1枚(デュアルチャンネルの場合は最大2枚)使用した場合は5100MHzに対応するという意味。メモリーモジュールが2ランクになると4000MHzになる。内容を以下の表にまとめた。ランク数の合計値が大きくなると最大速度は下がるのが基本だ。
スペックの表記 | 内容 | スロット1-3、2-4の組み合わせでデュアルチャンネルになる場合の搭載例 |
---|---|---|
1DPC 1R Max speed up to 5100 MHz | 1チャンネルあたり1ランクのモジュールが1枚の場合、最大5100MHz | 1R/-/-/-、1R/-/1R/- |
1DPC 2R Max speed up to 4000 MHz | 1チャンネルあたり2ランクのモジュールが1枚の場合、最大4000MHz | 2R/-/-/-、2R/-/2R/- |
2DPC 1R Max speed up to 4266 MHz | 1チャンネルあたり1ランクのモジュールが2枚の場合、最大4266MHz | 1R/1R/-/-、1R/1R/1R/1R |
2DPC 2R Max speed up to 3600 MHz | 1チャンネルあたり2ランクのモジュールが2枚の場合、最大3600MHz | 2R/2R/-/-、2R/2R/2R/2R |
「XMP」や「A-XMP」はメモリーモジュールに搭載されたオーバークロック用情報(プロファイル)のことだ。オーバークロックメモリーは非オーバークロック状態の動作情報も備えており、初回起動時はそちらの設定で動作する。BIOSでXMPを有効にすることで製品のスペックにあるオーバークロック設定を利用できる。
「Dual Channel(デュアルチャンネル)」はメモリーの高速化機能だ。メモリーへのアクセス経路(チャンネル)を2本用意し、並列にアクセスすることで高速化する。2本あるチャンネルにそれぞれメモリーを追加すると有効になる。優先して利用するメモリースロットが指定されているのはこの機能のためだ。
「non-ECC, un-buffered memory」はECC非搭載、アンバッファードタイプのメモリーに対応するという意味。ECCとバッファードは共に業務向けシステムで利用する機能なので、コンシューマー向けのPCでは通常利用しない。反対に、ECC搭載やバッファードに対応したメモリーは通常コンシューマー向けマザーボードでは動作しないため、間違って購入してしまわないよう注意しよう。
拡張スロットの仕様は少し複雑だ。現行プラットフォームでは、Intel系、AMD系ともにCPUとチップセット双方にPCI Expressコントローラーを備えている。あるスロットはPCI Express 4.0、別のスロットは3.0という風に対応が分かれるため、どのスロットがCPUとチップセットのどちらに接続しているかが記載されている。CPUに接続しているスロットは、使用するCPUによってPCI Expressのバージョンが変わることもある。
拡張スロットとストレージの項目。こちらも画像はMSIのMAG X570S TOMAHAWK MAX WIFIのものだ。「PCI_E1」や「M2_1」の表記は、各スロットの番号。マザーボード本体やマニュアルにも載っているので、どのスロットを表しているのかが分かる。
M.2スロットには主にSSDを取り付ける。こちらもPCI Express接続が主流のため、拡張スロットと同じようにCPUとチップセットのどちらにつながっているかが記載されている。SSDの最大速度はPCI Expressのバージョンが大きく影響するため、使用するSSDの接続規格とM.2スロットが同じバージョンに対応していることを確認しておこう。
M.2スロットはPCI Express接続だけでなく、SATA接続のSSDにも対応する。ただし全てのスロットが両方に対応するわけではない。SATAのM.2 SSDを使用する場合は対応スロットの確認も重要だ。
最新プラットフォームではあまりないが、M.2スロットが他の端子やスロットと排他仕様になっていることもある。M.2のSSDが普及し始めた頃はプラットフォーム全体でPCI Expressのレーン数が足りず、M.2スロットにSSDを接続すると特定の拡張スロットが無効になることもあった。SATAに関しても同様で、M.2スロットにSATA SSDをつなぐと特定のSATA端子が無効になることもある。
MSIの「MEG Z590 UNIFY」の場合。M.2スロットの接続先をCPUに設定すると本来x16のPCI Expressスロットがx8での動作になること、特定のPCI ExpressスロットとM.2スロットが帯域を共有しており、同時利用には制約があることなどが注釈に書いてある。
USB端子の数はマザーボードを選ぶ際に気になる要素の一つだろう。通常、マザーボードのUSB端子の全てを使うことはできない。使用するPCケースによっても変わるため、よく確認しよう。マザーボードのスペック表では独特な表記があるため、きちんと読み取れるようになることは重要だ。
MSIの「PRO Z690-A」の例。速度と端子の数が記載されているが、I/Oパネルの端子と内部端子を合算しており、かっこ内に内訳を記載している。「back panel」とある場合はI/Oパネルの端子、「internal connector」は内部端子だ。
USB端子は、I/Oパネルに通常の端子が実装されていてそのまま使える場合と、ピンヘッダー等の内部端子で実装されている場合がある。内部端子はPCケースの前面端子とケーブルで接続して利用する。基本的に、内部端子のUSBはPCケースに接続できないと使えない(例外としてUSBの内部端子に接続する機器もある)。
多くの場合、PCケースの端子の数はマザーボードのピンヘッダーより少ない。さらに内部端子には種類が複数あるため、合わない場合は端子があっても使えないということもある。PCケースと合わせてよく確認しよう。
マザーボードのスペック表での記載はメーカーによってさまざま。USBだけ独立した項目を用意している場合や、内部端子とI/Oパネルの端子の一覧に含めてある場合など、メーカーによって大きく異なる。
端子と対応する内部ケーブルは以下の通り。
ファン端子は一見同じように見え、実際に使い方も同じ。しかし、実はCPU用や水冷ポンプ用、ケースファン用など役割がそれぞれ異なる。そのため、同じファン端子でも別の名前が付いている。
MAG X570S TOMAHAWK MAX WIFIの内部端子の一覧では、ファン端子はCPU用、水冷ポンプ用、ケースファン用で書き分けられている。「CPU fan connector」、「water-pump fan connector」、「system fan connectors」は全て4ピンのファン端子だ。
CPUファンはPC内でも特別重要なファンだ。故障で止まってしまうとCPUの冷却に深刻な影響を出してしまうため、ファンの回転数が一定以下になった場合にアラートを出す設定があるなど、他の端子より機能を多く備えていることが多い。
ポンプ用端子は水冷クーラーを使用する際に使う。ファンと同様にポンプの回転数を検知できるほか、消費電力が大きいこともあるため、他のファン端子より大出力の電力に対応していることもある。
ケースファン用は「FAN1」「FAN2」のように番号が振られていることが多い。BIOS設定画面の表示に対応しており、どのファンをどの端子につないだか記録しておけばファンの場所ごとに回転数の設定ができる。
RGB LED用端子には2種類ある。通常のRGBとアドレサブルRGBだ。通常のRGB端子はLEDの色を一括制御しかできない。全てのLEDを青にする、赤にするといった制御になる。アドレサブルRGBはLEDを個別に制御できるため、発光パターンの変更や専用ソフトで好きなパターンを作るといったことができる。上のスペック表では、アドレサブルRGB用は「RAINBOW LED connectors」と記載されている。マザーボード本体では、RGB端子は「RGB」と表記されることが多い。アドレサブルRGB端子はメーカーによって表記がまちまちなので、マニュアル等で確認しよう。
ネットワーク機能は、自作PCでは有線LANを使っている人が多いだろう。長い間有線LAN端子は1Gbps(1000BASE-T)が主流だった。2022年現在、上位モデルではより高速な2.5Gbps(2.5GBASE-T)、5Gbps(5GBASE-T)、10Gbps(10GBASE-T)に対応した端子を採用する例が増えている。ただし速度を生かすには他の機器も同等以上の有線LAN端子を備えている必要があるため、まだ活用できる環境は限定的だ。
無線LANを搭載したマザーボードも増えている。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応している製品が多いが、2.4GHz帯と5GHz帯に加えて6GHz帯を使えるようにした規格のWi-Fi 6Eに対応していることもある。
無線LANの仕様はチャンネル幅と最大速度を確認しておこう。Wi-Fi 6/6Eで主に使われるチャンネル幅は80MHzと160MHz。80MHzで接続すると最大速度は半分の1.2Gbpsになるため、無線LANルーターも160MHzに対応していることを確認しておくと良い。
マザーボードの仕様は、新しい機能やチップセットの仕様により、非常に複雑になる場合がある。記憶に新しいのは、PCI Express接続のSSDが普及し、マザーボードのPCI Expressのレーン数が足りなくなった時期に、複雑な排他仕様を採用したモデルが流行したことだろう。こうした新機能やトレンドによる複雑さは、最新規格にいち早く触れられる自作PCの宿命のようなものだ。
それでも、それぞれの項目のキーワードを覚えておけば、世代が変わっても情報を読み取りやすくなる。欲しい機能や仕様をスペック表から読み取れるようになれば、購入後に思っていたものと違ったというトラブルを避けられる。製品選びにも役立つはずだ。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
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目次
通常、NASは家やオフィスのLAN内で利用する。ファイルやフォルダー単位であれば共有機能でURLを発行し、外部からダウンロードできるようにすることは可能だが、あらかじめ用意しておく必要があり自由自在とはいかない。家の外からNAS本体のOS(DSM、DiskStation Manager)へアクセスし、ファイルのアップロードやダウンロード、設定変更などができれば便利。それを手軽に実現するのが「QuickConnect」だ。
QuickConnectを使わない場合、LANの外からもアクセス可能するには、ダイナミックDNSの導入やルーターのポート開放といった設定が必要になり、ハードルが高い。その上ポートを開放することはセキュリティ上のリスクになりうる。NASを標的としたマルウェアやランサムウェアも登場しており、狙われる可能性が高まるためこの方法は推奨されない。QuickConnectはSynologyの中継サーバーを通して通信する仕組みのため、ルーターのセキュリティレベルを下げずに使えるのがメリットだ。
QuickConnectはSynologyのサービスを利用するため、Synologyアカウントが必要。登録は無料なので、NASの初期設定を行った際に作っていなかった場合は先に作成しておこう。
QuickConnectの設定項目は「コントロールパネル」にある。有効にして「QuickConnect ID」を決めるだけなので、非常に簡単だ。セキュリティ面だけでなく、導入のしやすさでもダイナミックDNSを使う方法より優れている。
QuickConnectでNASに接続するとDSMにアクセスできる。できることはLAN内で接続した場合と同じだ。ただし利用できるのはWebブラウザー上のみで、エクスプローラーからのアクセスはできない。NASのフォルダーにドライブレターを割り当てて使っている場合などは注意しよう。
運用する際は、URLをWebブラウザーのお気に入り等に登録しておくと良い。URLを覗き見されるリスクなどが心配な場合は、パスワードを一定回数間違えるとそのIPアドレスをブロックする機能を有効にしておくと良いだろう。初期設定では5分間で10回間違えるとブロックするようになっている。
「コントロールパネル」の「セキュリティ」の項目にある「保護」タブを開き、「自動ブロックを有効にする」にチェックを入れる。初期設定では、5分間に10回ログインに失敗するとブロックする。うっかりでブロックされてしまった場合は、別の端末から接続して「ホワイト/ブロック リスト」から解除できる。
NASのセキュリティを高めると言っても、何をすれば良いか分からないという人も多いだろう。そんな時に便利な機能が「セキュリティアドバイザー」だ。NASを使う上でどんなリスクがあるかを紹介し、現在の設定で安全かどうかをチェックしてくれる。使い方によって推奨される対策レベルは異なるため、個人向けとビジネス向けから選べるようになっている。
チェック内容は、個人ユーザーの場合はマルウェアなど悪意のあるアプリがインストールされていないか、アカウント名やパスワードが適切か、アプリが最新版にアップデートされているかといったベーシックなものが中心。警告が出た場合も簡単に対策できることが多い。
例えば、パスワードに「1111」や「1234」など推測されやすいものを使っている場合は、外部から攻撃を受けた際に侵入されやすくなる。同様に、管理者アカウントの名称に「admin」を設定している場合も、よく使われる名前のため推測されやすい。こうした設定もチェックして警告してくれる。複数人で運用している場合は他のユーザーがどんなパスワードを設定しているか分からないので、パスワードそのものを明かしてもらうことなく強度をテストできるのは便利だ。
NASを運用する際、どのようにデータを保護するかは重要な要素となる。一般的には、NASの他にバックアップを作る、RAIDを構築してドライブの故障に備えるといった方法が多いだろう。ただ、これらの方法では対応できないケースもある。誤操作による喪失だ。バックアップやRAIDはユーザーが操作した結果を保護する機能のため、誤って削除や上書きをしてしまった場合でもその結果を残してしまう。
そうした人為的なミスからファイルを守るのが「スナップショット」機能だ。対象のフォルダー内にあるファイルの状態を保存し、変更があった場合に変更部分だけを別途保存する。毎日ドライブ全体をバックアップする形でも同様の効果は得られるが、毎回のバックアップファイルを全て残していると膨大な容量になり、維持が難しくなってしまう。スナップショットはファイルそのものをコピーするわけではないため、少ない容量で何世代も保持しておけるのが特徴だ。
復元の際は、対象にしたフォルダー全体をスナップショットの時点に復元するか、ファイル単位で復元する方法が選べる。スナップショットを定期的に取得しておくことで、誤って上書きした上に何日も気付かなかったという状況にも対応できる。
一方で、仕組み上故障への対策にはならない。バックアップやRAIDと併せて導入することでより強固にファイルを守れるという機能だ。
SynologyのNASでは、「Snapshot Replication」アプリをインストールするとスナップショット機能が利用可能になる。スナップショットは共有フォルダ単位で保存し、スケジュール設定で定期的に取得し続けるのが基本的な運用方法だ。
この機能は対応していない機種もある。具体的な対応情報は下記公式サイトで確認可能だ。基本的に「+(PLUS)」シリーズ以上のモデルは対応している。
復元する際は、共有フォルダ全体の場合はSnapshot Replicationから、ファイル単位の場合は「File Station」から行う。ファイル単位での復元はあらかじめ設定が必要になるため、そちらを見ていこう。
今回はNASを安全、安心に活用するための機能を紹介してきた。NASはストレージでありながら、独立したOSを持ったシステムでもある。インターネットに接続すれば一定程度のリスクは避けられず、対策も考えなくてはならない。SynologyのNASは利用できる対策機能が豊富で、日々アップデートされるため安心して利用できる。しっかり活用して安全に利用してほしい。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
Synology社の高性能なNAS製品は、導入をされるお客様のビジネスの規模に応じて様々な製品をご提供できます。HDD組込モデルや保守サービスのご提案もしております。是非ご検討ください。
]]>今回はプロ向けをうたうペンタブレットメーカー、Xencelabs Technologies(センスラボテクノロジーズ)とその製品を紹介する。まずはペンタブレットそのものの基本的な事柄を確認していこう。
ペンタブレットには、大きく分けて2種類ある。ペン入力する機能だけのものと、ディスプレイを搭載していて画面に直接ペン入力できるものだ。前者は「板タブ(板タブレット)」、後者は「液タブ(液晶タブレット)」とも呼ばれる。それぞれ特徴があり、どちらを使いやすいと感じるかは人それぞれだ。
板タブはPCのディスプレイを見ながら操作するため、通常のPC操作に近い感覚で利用できる。マウスの役割を代替をすると考えるとイメージしやすいだろう。一方、液タブは手元のディスプレイを見ながら操作するため、使用中の姿勢が紙に書く場合に近くなる。より直観的に使えるのは液タブだが、手元を見下ろす姿勢が使いにくい、疲れやすいという理由で板タブを選ぶ人もいる。
ペンタブレットは専用のデジタルペンを使って入力するユーザーインターフェース。ペンの形状やペン先の素材、タブレットの表面処理などの違いで、製品によって書き心地が異なる。ペン入力以外の機能にも違いが大きい。
ペンタブレットには入力方法が2種類ある。相対座標方式と絶対座標方式だ。相対座標方式はペンを少し浮かせて動かすことでマウスポインターを操作する。タブレットのどこで操作しても同じ結果になるので、サイズの小さいタブレットはこの方式を使うことが多い。絶対座標方式はタブレットの中央がディスプレイの中央、タブレットの端がディスプレイの端という風に両者が位置で対応する方式だ。ペンで指した場所にマウスポインターが瞬間移動するので、ポインターを動かす時間をなくせる。液タブは基本的に絶対座標方式で利用する。
Xencelabsは板タブを中心に製品展開しており、2022年8月時点で液タブは販売していない。
ペンタブレットはペンで操作する。指でのタッチ操作に対応する場合もあるが、ペンタブレットの機能としてはあくまで補助的なものだ。ペンの使いやすさが製品の使いやすさに直結する。
ペンには動作方式が複数ある。主流は「EMR(電磁誘導)方式」と「AES(アクティブ静電容量)方式」の2種類だ。EMR方式はペンを検知するために専用のセンサーが必要。その代わり高精細な読み取りが可能で、ペン側にバッテリーが不要という特徴がある。Xencelabsがペンタブレットに付属しているペンもEMR方式だ。AES方式はタッチ操作でも採用される静電容量センサーを使うため、2in1ノートPCやタブレット端末などと相性が良い。端末がタッチ操作に対応していれば、機能を追加する形でペンにも対応させられるためだ。ただし、この方式はペン側にバッテリーが必要となる。
また、ペンを動作させるにはソフト側の仕組み(プロトコル)も必要。動作方式が同じでも、プロトコルが異なる場合は利用できない。プロトコルは各メーカーが独自のものを採用するのが一般的だ。基本的にメーカーをまたいでペンを共有することはできず、同じメーカー内でも別の製品シリーズでは互換性がないこともある。
マイクロソフトの「MPP(Microsoft Pen Protocol)」、Googleの参加する「USI(Universal Stylus Initiative)」などペンタブレットのメーカー以外が主導した汎用プロトコルもある。ただしこれはノートPCなどがペン入力機能を導入する際に使われることが多く、単体で販売されるペンタブレットが対応していることはあまりない。
ペンタブレットのメリットは、マウスよりも直観的に操作ができることだ。ほとんどの人がPCを使い始める前からペンは使っていたはず。その馴染んだ動作でPCの操作ができるのであれば、より分かりやすいのは自然だろう。もちろんマウスでも同じようなことはできるが、イラストを描く、文章に線を引く、重要な部分に丸を付けるといった操作はマウスではやりにくい場合もある。
また、テレワークが普及した現在は冒頭で触れたようにPDFファイルに直接メモ書きをする、テレビ会議のホワイトボード機能を使うといった手書き入力を利用する機会は増えている。ペンが付属する2in1ノートPCも人気があり、次々と新しいモデルが登場しているほどだ。
PCが手書き入力の機能を内蔵しているのも便利だが、これはあくまでPCの機能の1つに過ぎず、カスタマイズ性はあまりない。単体で販売されているペンタブレットの強みは、機能やオプション品などを検討して使いやすい製品を選べる点だ。
また、ペンでやりやすくなるのは線を引くことだけではない。動画編集や写真のレタッチなど、画面内の場所を指定してドラッグするという操作を繰り返すシーンではペンの方が作業しやすい。プロカメラマンが撮影した写真の仕上げをするために導入していることも多い。
ただ、ペンタブレットは置き場所を確保するためにマウスよりスペースを取るという弱点もある。タブレットはキーボードの手前に置くことが多いため、少しキーボードは手元から遠くなってしまう。そこで、キーボードを操作する頻度を下げるため、タブレットはショートカットキーを搭載していることが多い。このショートカットの数や配置、登録できる機能の種類なども使い勝手に影響するポイントだ。
Xencelabsは米国のワシントン州バンクーバーに本社を置き、グローバルに製品展開をしているペンタブレットメーカーだ。現在は板タブを中心に販売している。プロ向けをうたっていることも特徴の1つで、アーティストとのパートナーシップやユーザーからのフィードバックを通して、クリエイターが使いやすい製品を作ることをミッションとしているという。
大きな特徴が、同社の販売するペンタブレットは全てデジタルペンが2本付属する点だ。ペンの使い心地は作業効率に大きく影響し、1つの形状で全ての人が使いやすいものを作るのは困難だ。ユーザーの視点でも、実際に使い比べてみないとどちらが良いという判断は難しい。そこで太めと細めの2種類を用意することで、ユーザーが使いやすい方を選べるようにしているというわけだ。2本のペンを両方収納できるケースも付属しており、細かなところまで配慮が行き届いている。付属品は全て単体でも購入可能で、長期間継続して利用するためのサポートも万全だ。
また、法人向けの製品も展開している。教育現場ではICT教育の一環でペンタブレットを導入するケースが増えているため、ペンタブレット10台とペン15本、専用ケースなどをセットにした「エデュケーションパック」を用意している。
次回は、そんなXencelabsの製品を実際に使ってみる
次の手順を見る(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
]]>製品名 | Xencelabs Pen Tablet Medium Bundle SE |
読取可能範囲 | 262.4×147.4mm(16:9) |
ショートカットキー | 3個 |
付属ペン | 3ボタンペン(PH5-A)、スリムペン(PH6-A) |
筆圧感知 | 8192段階 |
傾き検知 | 60度 |
インターフェース | USB Type-C(本体側)、無線(専用レシーバー付属) |
バッテリー駆動時間 | 16時間(充電時間:2.5時間) |
外形寸法 | 320.5×232.5×8mm |
重量 | 710.5g |
カラー | ネビュラ・ホワイト |
対応OS | Windows 7以降、Mac OS X 10.12以降 |
ペンタブレット Medium バンドル SEの特徴は、付属品が非常に豊富なこと。ペンの他に、必要なインターフェースからショートカットリモコン、二指用手袋、持ち運び用のケースまで同梱されている。
ペンタブレットを使うには、タブレット本体とペン、PCとつなぐケーブル等のインターフェースがあれば最低限OKだ。しかしペンタブレット Medium バンドル SEは通常のペンタブレット製品とは一線を画す、至れり尽くせりのパッケージとなっている。カラーは「ネビュラ・ホワイト」となっており、ホワイトとグレーのツートンカラーがお洒落だ。ペンタブレットはブラックが多いため、人とは少し違ったものが欲しいという場合にも良いだろう。
それでは内容物から見ていこう。
タブレット本体は320.5×232.5mmというサイズ。操作エリアは262.4×147.4mmで、アスペクト比は16:9だ。ショートカット用のボタンは奥側に3個と、見た目はシンプル。フロスト加工された操作エリアも特徴的で、表面に微細な凹凸が施されている。なめらかな触感ながら少し滑りにくくなっており、独特な書き心地となっている。
PCとの接続方法を無線と有線で選べるのも特徴で、無線接続では付属するUSBアダプターを使う。無線接続の際は内蔵バッテリーで動作し、最大16時間の連続使用が可能だ。
ペンが2本付属する点も特徴だ。ペンの太さや形状で使い心地は変わり、使いやすいかは人によって異なる。使い比べて自分に合ったものを選べるのは大きなメリットと言える。選ばなかった方は故障した際の予備としても使える。
ペン先もPOM(ポリオキシメチレン、またはポリアセタール)素材とフェルト素材の2種類が用意されており、好みで使い分けられる。POMは樹脂の一種で、硬く高い耐摩耗性が特徴。付属のペンに装着してあるのもPOM素材だ。フェルト素材は少し摩擦が強く、書く際に抵抗を感じる。その分紙に書く感覚に近い。
それでは、PCと接続して実際に使ってみよう。PCとの接続方法はUSBケーブルを使った有線方式と付属のアダプターを使った無線方式がある。購入直後はバッテリーの残量が分からないため、有線の方が確実だろう。
PCとつないだら、デバイスドライバーのセットアップに移る。デバイスドライバーはXencelabsのホームページのサポートページからダウンロードできる。OSごとに設定用のアプリがあり、アプリ上で各製品のデバイスドライバーをダウンロード、適用できる。製品ごとにダウンロードページを探さなくて良いのは便利だ。
アプリをインストールして起動すると、下のようにホーム画面に認識している機器が表示される。基本的にはこれでもう使い始められるが、アプリでどんな設定ができるか確認してみよう。
タブレット本体の設定では、ショートカットの機能と操作エリアの端を示すマークの色を変更できる。Windows Inkの有効/無効も変更できるが、標準設定で有効になっているので不都合がなければそのままで良いだろう。
タブレット本体のショートカットやペンのボタンにどの機能を割り当てるかで使い勝手は大きく変わる。右クリックやダブルクリックといった基本動作から、「進む」や「戻る」、拡大、縮小、キーボードのキー入力など設定の自由度はかなり高い。アプリに紐付けることで、使用中のアプリによって割り当て設定を切り替えることも可能だ。
マウスでのPC操作に慣れていると、ペン操作との違いで戸惑うこともあるだろう。特にマウスなら簡単にできたことがペンではやりにくくいというケースはあるはずだ。そいうった操作を各ボタンに割り当てることで、違和感は減らせるだろう。
次はクイッキーズリモートを紹介する。
製品名 | クイッキーズリモート |
ショートカットキー | 8個+ダイヤルキー |
インターフェース | USB Type-C(本体側)、無線(専用レシーバー付属) |
バッテリー駆動時間 | 52時間(充電時間:2.5時間) |
外形寸法 | 157.6×63×12mm |
重量 | 142g |
カラー | ブラック |
対応OS | Windows 7以降、Mac OS X 10.12以降 |
単体で購入できるクイッキーズリモートはブラックモデル。ホワイトモデルはペンタブレット Medium バンドル SEの付属品のみだ。
ペンタブレットを使っている間は、PCのキーボードはタブレットの奥に置いている人が多いだろう。その分体から離れてしまい、キーボードは使いにくくなってしまう。代わりにタブレット本体のショートカットボタンなどを使うのだが、ヘビーユーザーにとってはそれだけではボタンの数が足りない。そこで便利な機器がクイッキーズリモートだ。これはショートカットボタンを追加するためのアクセサリーで、タブレットやペンのボタンに割り当てられる機能を一通り設定できる。
機能を設定できるボタンは8個+ダイヤル。ダイヤルは拡大/縮小や画像の回転など、連続して操作することの多い機能を割り当てて置くと便利だ。ボタンは5個、ダイヤルは4個の機能セットを設定可能で、切り替えボタンで使用するセットを切り替えられる。つまり、最大で40個+4個の機能をこの1台に登録しておけるということになる。
それだけの機能を登録すると、どのボタンにどの機能を割り当てたか覚えていられないという人もいるだろう。しかし、中央の有機ELパネルで各ボタンの機能を表示できるためその心配もない。キー入力を割り当てた場合などは、表示する機能名を自分で設定できる。ダイヤルは機能を切り替えた際に使用可能になる機能名が表示されるようになっている。
中央の有機ELパネルに各ボタンの機能名が表示されるため各ボタンの機能を覚えておく必要はない。ダイヤルの中央と写真右端には切り替えボタンがあり、機能セットを切り替えられる。切り替えボタンは機能変更できないようになっている。
ペンタブレット Medium バンドル SEとクイッキーズリモートを見てきた。既にペンタブレットを利用している人なら、機能や付属品が充実していることが分かるだろう。特にショートカットをタブレットから独立させ、好きな場所、好きな方向で配置できるクイッキーズリモートはとても使いやすく、作業の効率化を助けてくれる。
一方、プロ向けとはなっているものの、ペンタブレット Medium バンドル SEは1台目のペンタブレットとしてもお薦めだ。ペンタブレット未経験者はどんな製品が良いのか、ペンやペン先を変えると使用感がどう変わるのかといった経験がない。ペンと替え芯が2種類ずつ付属するペンタブレット Medium バンドル SEを選んで使い比べをすれば、次の製品選びの際には自分に合ったものをより探しやすくなるはずだ。
板タブの製品選びで迷っている人は、ぜひ一度Xencelabsのモデルをチェックしてみてほしい。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
USBは「Universal Serial Bus(ユニバーサル・シリアル・バス)」の略称。規格は「USB Implementers Forum(USB IF)」で策定されており、Webサイトでは規格に関する情報が公開されている(一部は関係者のみ閲覧可能)。
USBの強みは後方互換性だ。基本的に新しいバージョンが出ても古いバージョンの機器が使えなくなることはない。「機器をつないで使える」ということは当たり前のようだが、移り変わりの激しいPC業界で、20年も前の機器を最新PCにつないで使えるのは驚異的と言える。ただ、表裏の関係ではあるものの、弱みとなってしまうのはその複雑さだ。バージョンごとに機能や速度の仕様を新しく追加し、オプション仕様(必須機能ではなく機器によって対応/非対応が分かれること)も増やしたことにより、バージョン名や端子の形状を見てもどの速度・機能に対応しているのかが分かりにくくなってしまった。
その結果、現在のUSBは簡単さと難しさが同居した規格になったと言って良いだろう。正しく性能を引き出すには正しい組み合わせで使う必要がある。1つずつ見て行こう。
まず重要な要素がデータ転送速度だ。PCと周辺機器、それらをつなぐケーブルが全て対応して初めて本来の速度が得られる。しかし、それぞれの対応する速度を確認するのは思いのほか大変だ。速度はバージョンと共に向上してきたため、併せて見ていこう。
2022年現在で使われているUSBの速度は480Mbps、5Gbps、10Gbps、20Gbps、40Gbpsの5種類。一方バージョンは2.0、3.2、4の3種類だ。以下の表に速度とバージョン名の関係をまとめた。なお、USB 2.0とUSB 3.xは数字の前にスペースを入れるが、USB4はくっつけるのが正しい表記だ。
データ転送速度 | バージョン名 |
---|---|
480Mbps | USB 2.0 |
5Gbps | USB 3.0(3.1 Gen 1、3.2 Gen 1) |
10Gbps | USB 3.1 Gen 2(3.2 Gen 2) |
20Gbps | USB 3.2 Gen 2 x2 |
20Gbps | USB4 Gen 2 x2 |
40Gbps | USB4 Gen 3 x2 |
基本的にUSBの速度とバージョン名は対応する。USB 3.1以降は「Gen x」、3.2以降は「x2」の表記が追加されているのが特徴だ。
途中からバージョン名が長くなっているのは、USB 3.1で速度を表す「Gen x」、USB 3.2で「デュアルレーン」を表す「x2」の表記が追加されたためだ。手前の数字に関わらず「Gen 1」が5Gbps、「Gen 2」が10Gbpsとなるため、覚えておくとPCや周辺機器のスペック表を読みやすくなる。
デュアルレーンは両端がUSB Type-C端子のケーブルで使える高速転送モードで、最大速度が2倍になる。規格上はGen 1 x2(10Gbps)も存在するが、対応製品はない。
USB4はThunderbolt 3の技術をベースに作られた規格で、厳密には異なるものの、事実上イコールと考えて良いだろう。USB4には「Thunderbolt 3互換モード」が定義されており、オプション仕様だが基本的に対応しているためだ。2022年5月現在、USB4端子はほぼThunderbolt 4/USB4端子の形で実装されている。Thunderbolt 4とUSB4の関係は第3回で解説する。
USB 3.xではバージョン名が細かくアップデートされて分かりにくくなった。そのためUSB IFは下の表のように速度を基準にした名称を策定し、こちらが一般ユーザー向けの呼び方だとしている。ただ、パソコンのスペック表などでこの表記が使われることは少ない。USBはバージョン名で呼ぶ習慣があることや、USB 2.0もまだ現役で使われているのに新しい名称が付けられなかったことなどが原因だろう。
データ転送速度 | 名称 |
---|---|
480Mbps | USB 2.0 |
5Gbps | SuperSpeed USB 5Gbps(SuperSpeed) |
10Gbps | SuperSpeed USB 10Gbps(SuperSpeedPlus) |
20Gbps | SuperSpeed USB 20Gbps |
20Gbps | USB4 20Gbps |
40Gbps | USB4 40Gbps |
USB 2.0はそのまま、USB 3.xは「SuperSpeed」の後ろに速度、USB4はバージョン名の後ろに速度を続けるというのが一般向けの名称。かつては「SuperSpeedPlus」やGen 1とGen 2を合わせて「Enhanced SuperSpeed」という呼び方も使っていたが、後ろに速度を付ける書き方に統一された。
呼び方が増えて余計に複雑になっているようにも見えるが、名称に速度が含まれるため、そこは分かりやすい。
パソコンや周辺機器の対応する速度が分かりやすいよう、USBはロゴもさまざまなものが用意されている。
USB IFの公開しているロゴの使用ガイドからの引用。USB 3.x以降に対応したロゴには速度を表す数字が入っているため、ロゴを見付けられれば判別は簡単。こうしたロゴは周辺機器のパッケージなどで見られる。
黒一色のロゴはPCの端子の横に印字されていることもある。ただし、端子付近のロゴはないことも多く、判別手段としてはあまり頼りにならない。
USBはケーブルの種類が多いことも特徴だ。PCケースの内部ケーブルも併せて見て行こう。ケーブルの種類が多いのは、単純に端子の種類が多いからだ。まず端子の種類と分類をType、対応速度、サイズの3要素でまとめよう。
USB端子には多くのバリエーションがあるが、Type-AとType-B、Type-Cの3種類に分類できる。Type-Cは次回詳しく解説するとして、ここではType-AとType-Bを見ていく。
ちなみにType-A、Type-Bという呼び方は正式なものではない。しかしType-Cの登場以降、PCメーカーや周辺機器メーカーも使うようになり、デファクトスタンダードとなっている。
今では曖昧になっているが、もともとUSBは機器の役割が親機(ホスト)と子機(デバイス)ではっきりと分かれている。そしてType-A端子はホスト側、Type-B端子はデバイス側につなぐことを分かりやすく示すものだった。この原則は今でも変わっていない。
事情が怪しくなったのは、スマートフォンに代表されるようなホストにもデバイスにもなる機器が登場したためだ。スマートフォンにUSBメモリーをつなぐと(対応していれば)スマートフォンはホストとなり、USBメモリー内のデータにアクセスできる。一方、PCにつないだ場合はスマートフォンはデバイス(外部ストレージ)となり、PCからスマートフォン内のデータにアクセスできる。こうした事情からUSB Type-Cではホストとデバイスの判別を機器側で行うようになり、端子の区別がなくなった。
対応するデータ転送速度は端子とケーブルの長さで決まる。ここでは端子の形状とサイズを見て行こう。
USB端子にはサイズの違いでStandard、Mini、Microの3種類があり、それぞれ「Standard-A/B」、「Mini-A/B」、「Micro-A/B」などと呼ぶ。Standard-A/Bが仕様書でも利用されている名称で、通常サイズを表す。現在、Type-A/B端子と言えばStandard-A/B端子を指す。
ただ、初期のUSBのホストはほとんどがPCだったため、使われるのはType-AばかりでMini-AとMicro-Aはほとんど使われなかった。長くPCを使っていても見たことがない人の方が多いだろう。Mini-BとMicro-Bは広く普及し、Micro-Bは今でも現役だ。
スマートフォンのようにホストとデバイスのどちらにもなれる機能を「OTG(On The Go)」と呼ぶ。USB 2.0端子は信号ピンが2本、電源ピンが2本で合計4本のピンで構成されているが、Micro端子にはOTGへの対応を示すための5本目のピンが追加されている。
OTG対応のメス端子はMicro-ABという名称だが、本来使われるはずだったこの端子は普及せず、代わりにMicro-B端子を使っているケースがほとんどだ。
速度による端子のバリエーションはUSB 2.0とUSB 3.xの2種類。USB 3.xには5Gbps、10Gbps、20Gbpsと3種類の速度があり、5Gbpsと10GbpsはUSB 3.x端子を使う。20GbpsはUSB 3.x対応のType-C端子でのみ使える。USB 3.x対応のType-C端子は5Gbpsと10Gbpsも利用できるため、上位互換と考えてよいだろう。
USB 3.x端子のピンは9本あり、USB 2.0の4本から5本増えている。この追加分を同じサイズの端子に収めているのはType-A端子だけで、Type-B端子やMicro-B端子は形状が変わっている。Mini端子にはUSB 3.xの仕様はない。
USB 3.x用Micro-B端子
Micro-B端子は隣にUSB 3.x用のピンが増設されている。端子のUSB 2.0側にUSB 2.0用ケーブルをつなぐことは可能だが、機器が動作するかは製品次第だ。
Gen 1(5Gbps)とGen 2(10Gbps)は同じ端子を使い、ケーブルは厳密に区別されていない。Gen 2対応をうたったケーブルは当然10Gbpsで通信できるが、Gen 1対応ケーブルでも10Gbpsで通信できる場合がある。参考になるのはケーブルの長さだ。おおむね1m以下であれば、10Gbpsで通信できる可能性が高い。
USB IFの公開しているUSB Type-Cの仕様書からの引用。「Nominal Cable Length」が目安のケーブル長だ。USB 3.2 Gen 2は1m以下となっている。ただし注釈で「informative(参考)」となっており、厳密に決まっているわけではない。また、USB Type-C以外のケーブルには長さを直接定めた規定はない。
自作PCではPC内部用のケーブルも使う。主にPCケースの前面端子と接続するためのケーブルだ。この内部端子にはUSB 2.0用とUSB 3.x用、そしてUSB Type-C用の3種類がある。
内部配線ではケーブルの長さの問題がより深刻になる。PCと周辺機器をつなぐケーブルに前面端子とマザーボードの間のケーブルが加わり、ケーブル長が伸びてしまうためだ。そのため、自作用PCケースの前面端子はUSB 3.x Gen 1に留まることが多い。
今回はUSB規格のデータ転送速度とケーブル・端子について見てきた。ここまでをまとめたのが以下の表だ。USB機器の本来の速度を引き出すには、機器の対応するバージョンを合わせることと正しいケーブルを使うことが重要になる。端子の形状は合っていても長さで速度が出ないこともある点は注意が必要だ。
特に10Gbps以上に対応した機器は、接続先の機器が5Gbpsまでしか対応していなかったり、旧規格のケーブルを使うと明確に遅くなる。購入した外付けSSDなどが思ったより遅いと感じたなら、ケーブルや接続端子の仕様を確認するとよい。製品を買った際に付属品を使わず、手持ちのUSBケーブルで代用した経験は多くの人が持っているだろう。トラブルを避けるには、ケーブルの使い回しはしないのがベストだ。
データ転送速度 | バージョン名 | 名称 | ケーブル |
---|---|---|---|
12Mbps | USB 1.0 / 1.1 | USB 1.0 / 1.1 | 現在は使われていない。 |
480Mbps | USB 2.0 | USB 2.0 | USB 2.0用 |
5Gbps | USB 3.0 / 3.1 Gen 1 / 3.2 Gen 1 | (SuperSpeed) SuperSpeed USB 5Gbps |
USB 3.x用 |
10Gbps | USB 3.1 Gen 2 / 3.2 Gen 2 | (SuperSpeedPlus) SuperSpeed USB 10Gbps |
USB 3.x用(1m以下) |
20Gbps | USB 3.2 Gen2 x2 | SuperSpeed USB 20Gbps | USB 3.x Type-C(1m以下) |
20Gbps | USB4 Gen 2 x2 | USB4 20Gbps | USB4 Type-C(1m以下) |
40Gbps | USB4 Gen 3 x2 | USB4 40Gbps | USB4 Type-C(80cm以下) |
40Gbps | USB4(Thunderbolt 3互換) | Thunderbolt 3 | USB4 Type-C(80cm以下) またはThunderbolt 3 |
ここまでの話を表にまとめた。バージョンや速度とケーブルが1対1で対応しない点も複雑になる要因の1つだろう。それぞれの対応については覚えるしかない。
次回はUSB Type-Cについてもう少し詳しく紹介する。
USB Type-C編を見る(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っております。取り扱いメーカーや詳しい製品情報については下記ページをご覧ください。
]]>USBケーブルは両端で異なる端子を搭載していることもあるため、本稿ではこれ以降、別途補足がない限り両端がUSB Type-C端子のケーブルを単に「USB Type-Cケーブル」と呼ぶ。
まずはケーブルと端子の構造から解説する。USB Type-CはUSB 3.1と同時期に発表された端子とケーブルの規格だ。特徴は小型で上下対称のデザインを採用した端子形状。上下逆さにつないでも使えるという点が売りの1つとして登場した。しかし、本当の価値はさまざまな機能が利用できる汎用性の高さだ。
これを支えているのが24ピンというピン数の多さ。USB 2.0端子は4ピン、USB 3.x端子は9ピンだったので、2.5倍以上になっている。写真で見ると違いは一目瞭然だ。
端子のピンアサインは以下の図の通り。同じ役割のピンが複数あるため、ケーブル内部の配線は18本だ。
USB Type-Cの仕様書に掲載されているケーブルのピンアサイン表。上がレセプタクル(メス側端子)、下がプラグ(ケーブル側の端子)。USB 3.x用のピンが2セットあるのがポイントだ。USB 3.x用の配線を省略したUSB 2.0専用ケーブルもある。
「D+/-」がUSB 2.0用のピン、「TX+/-」と「RX+/-」がUSB 3.x用のピンだ。USB 3.x用のピンが2セットあるのが分かるだろう。これが非常に重要で、USB Type-Cケーブルが他のUSBケーブルとは違った使い方ができる理由となっている。「CC」は「Configuration Channel」を表し、ホストとデバイスが通信するために使うピン。ケーブルが上下どちらの向きでつながれたかもこのピンで認識する。これは従来のケーブルにはなかったものだ。
USB Type-Cケーブルもさまざまな種類があって混乱しやすいが、実はピンと内部配線の物理的な仕様はUSB 2.0用とUSB 3.x用(「Full Featured Cable」と呼ぶ)の2種類しかない。ケーブルによって対応する機能が異なるのは、「eMarker」と呼ぶチップに記録された対応情報による。ただし全ての機能がeMarkerの情報を必要とするわけではない。例えば、最大60WのUSB PDはeMarkerを搭載していないケーブルでも利用できる。
USB Type-Cケーブルは端子に「eMarker」と呼ぶICチップを内蔵している(USB 2.0ケーブルではオプション仕様)。ここに対応する機能が記録されている。写真はUSB 2.0の5Aケーブルだ。
USBの機能でありがながら、USB Type-Cケーブルでしか利用できない機能もある。ポイントは先述のCCピンと2セット目のUSB 3.x用ピン。追加されたピンは旧来のケーブルには存在しないため、これらのピンを利用する機能は使えないという単純な理由だ。同様に、一方がUSB Type-C端子、もう一方がUSB Type-C以外の端子のケーブルではUSB Type-C固有の機能は使えない。
「デュアルレーン」はUSB 3.x Gen 2 x2(20Gbps)などで利用される動作モードだ。「x2」の部分がデュアルレーンを表している。USB 3.x用のピンを2セットとも使うことで高速なデータ転送を可能にしているため、1セットしかない従来のケーブルでは利用できない。また、当然だがUSB 2.0用のUSB Type-Cケーブルでも利用できない。
「USB PD(Power Delivery)」はUSB Type-C端子でのみ使える給電/受電機能だ。従来のUSB端子は電圧が5Vしか使えず、充電用規格のUSB BC(Battery Charging)を利用しても最大7.5W(5V/1.5A)だったのに対し、USB PDは最大100W(20V/5A)まで対応しているのが特徴。ノートPCやスマートフォンの充電に使われることが増え、広く普及している。
おおまかな仕様として、USB PDには5V、9V、15V、20Vの電圧が設定されている(一部の製品は旧バージョンにあった12Vにも対応する)。5~15Vでは最大3Aの電流を流せるようになっており、20Vのみ後述の対応ケーブルでは3Aを超えて5Aまで上昇する。
ケーブルをつなぐと、ACアダプター側は機器側に利用可能な電圧・電流の組み合わせのリストを送り、機器がその中から1つを選んで充電の仕様を決めるという仕組みだ。この時にケーブルのチェックも行っており、5Aに対応していない場合は最大3Aのリストしかやり取りされない。そのため過剰な電力が供給されて機器が故障するといったことは起こらない。バージョン3.0からは「PPS(Programmable Power Supply)」という機能が追加され、より細かく電力を調整できるようになった。
これはUSB Type-Cケーブルの基本機能となっており、全てのケーブルで利用できる。またUSBのバージョンとは独立した機能なので、USB 2.0用、USB 3.x用いずれのUSB Type-Cケーブルでも問題なく使える。
注意点は、どのUSB Type-Cケーブルでも利用できるのは60W(20V/3A)までということ。61W以上は最大5Aまでの電流に対応する「5Aケーブル」が必要になる。5Aケーブルの判別にはeMarkerを利用し、5A対応の情報があれば最大5A、ない場合、もしくはeMarkerそのものがない場合は最大3Aとなる。5A非対応のケーブルは5Aケーブルに対して「3Aケーブル」と呼ぶ。
現行の規格の最大電圧が20Vのため、ケーブルの扱える最大電力は3Aケーブルなら60W、5Aケーブルなら100Wとなる。例えば、ACアダプターが最大100Wの出力に対応していても、3Aケーブルを使っていると最大電力は60Wに制限される。
USB PDは既に次世代の規格が策定されており、最大240W(48V/5A)に拡張される予定。こちらも別途ケーブルの対応が必要になる。
種類 | 最大転送速度 | 最大電流値 |
---|---|---|
USB 2.0 | 480Mbps | 3A |
USB 2.0 | 480Mbps | 5A |
Full Featured | 20Gbps | 3A |
Full Featured | 20Gbps | 5A |
USB Type-CケーブルにはUSB 2.0用とFull Featured(USB 3.x以降用)の2種類があり、それぞれに3A/5Aケーブルがある。これがUSB Type-Cケーブルの基本4パターンだ。Full FeaturedケーブルはeMarkerの情報によって対応する機能が変化する。
最大の特徴と言えるのが、USB Type-CケーブルでUSB以外の信号を扱える「Alternate Mode」だ。ホストとデバイス両方が同じ種類のAlternate Modeに対応している必要があるものの、USBケーブルを全く別の用途で使えるようになる。
代表的なものがDisplayPort Alternate Modeだ。USB Type-Cケーブルが映像ケーブルになり、DisplayPortケーブルの代わりに使える。この時、USB 3.x用のピンと配線を使って映像を転送する。USB 3.x用の配線が2セットあることで、DisplayPortケーブルと同等の帯域を利用可能だ。
ユニークな機能として、2セットあるUSB 3.x用のピンのうち、片方をDisplayPort、もう片方をUSB 3.xという風に使い分けることもできる。USB Type-C対応の液晶ディスプレイを利用した際、映像とUSBハブをケーブル1本でつなげられる。もちろん映像用の帯域が半分になるため、解像度にある程度の制約が発生する。片方だけで4K解像度(3840×2160ドット)を表示すると、リフレッシュレートが最大30Hzに制限されてしまう。USB 2.0は別のピンを使うため、USB 2.0のハブなら4K/60Hzと同時に利用できる。
ディスプレイ解像度 | リフレッシュレート | USBハブ |
---|---|---|
4K未満 | 60Hz | USB 3.x |
4K | 60Hz | USB 2.0 |
4K | 30Hz | USB 3.x |
USB Type-Cケーブルでディスプレイと接続した際の、解像度とUSBハブの仕様。ケーブル全体では4K解像度を60Hzで表示可能だが、USB 3.xハブを同じケーブルで接続すると帯域が足りなくなる。そのためハブをUSB 2.0で妥協するか、リフレッシュレートを30Hzに下げるか、もう1本USB 3.xケーブルをつなぐかを選ぶ形になる。
Thunderbolt 3もAlternate Modeで利用する機能の1つだ。Thunderboltはさまざまな種類のデータをまとめて転送する「トンネリング」という転送方法を採用している。データの転送速度も最大40GbpsとUSBよりも高い。
ただし、よく使われているのはこの2つだけ。HDMIの映像を出力するHDMI Alternate Modeは規格の策定はされたものの対応する製品は登場していない。VRゴーグルを想定した「VirtualLink」という規格も作られたが、Valveが対応する変換ケーブルを発表したもののキャンセルとなり、その後製品は登場していない。コンソーシアムも作られたが、現在は活動していないようだ。
自作PCにおけるUSB Type-C端子は扱いが難しい。ケーブル長の制限があるため、前面端子で使う場合は高速な転送モードで使いにくいためだ。I/Oパネルにある場合も、使う際は取り回しのために結局長いケーブルがほしくなる。USB PDやDisplayPort Alternate Modeに対応せず、ただのUSB端子となっていることも多い。
第12世代Coreシリーズに対応したマザーボードはThunderbolt 4端子を搭載していることがあり、その場合は映像出力もできる可能性が高い。USB PDは製品によって対応していないこともある。また、ケーブル長の心配がない小型ベアボーンPCでは活用できる製品が増えている。
ここまでUSB Type-C端子の構造と機能を見てきた。USB Type-Cならではの機能は、CCピンの通信が基準になることが多い。CCピンはUSB PDやAlternate Modeを有効にする際の通信を担当しているためだ。反対に言うと、CCピンを持たない従来のケーブルではこれらの機能を有効にできないため、片側がUSB Type-C以外の端子のケーブルでは利用できないということになる。
次回はUSB Type-Cケーブルの選び方について解説する。
USB Type-Cケーブル編を見る(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っております。取り扱いメーカーや詳しい製品情報については下記ページをご覧ください。
]]>全ての機能に対応したUSB Type-Cケーブルを作ると、コストがかさみ高価な製品になる。しかし安く買いたいというニーズは当然存在する。そこで登場するのがUSB 2.0対応ケーブルだ。
USB 2.0のUSB Type-Cケーブルは高速データ転送用の配線を省略しているため、USB 3.xのデータ転送もAlternate Modeも利用できない。しかし、転送速度がUSB 2.0でも構わない、USB PD充電だけ利用したいといった用途ならこれで十分だろう。安価に販売されているUSB Type-Cケーブルは、基本的にこれだ。
USB PDで60Wより大きな電力を扱いたい場合は5Aケーブルが必要。こちらはUSB 2.0でも1mで1000円前後からとそれほど安くない。
また、USB Type-Cの規格では充電専用ケーブルは存在しない。通信できないケーブルは独自に通信用の配線を省略しており、規格に沿っていないということになる。USB PD以外の急速充電規格は電力の決定に通信用の信号線を使うことがあるため、充電専用ケーブルでは反対に遅くなることもある。
最も複雑で分かりにくいのがUSB 3.xケーブルだ。先にバージョン名で整理しておこう。USB Type-CはUSB 3.1と同時期に発表されたため、厳密にはUSB 3.0 USB Type-Cケーブルは存在しない。USB 3.1ではUSB 3.0相当の5Gbpsを「Gen 1」と改称し、10Gbpsの「Gen 2」を追加した。USB 3.2では「デュアルレーンモード」が追加され、20Gbpsの「Gen 2 x2」が登場した。
問題は、どのUSB Type-Cケーブルでどの速度が利用できるかということだ。USB Type-Cの規格はUSB本体から独立しており、バージョン名とは対応していない。また前回紹介した通り、USB 3.xに対応したUSB Type-Cケーブルは「Full Featured Cable」の1種類しかない。つまり、原則としてどのケーブルでも全ての速度を利用できる。
ただし、高い転送速度に対応していないケーブルもある。ポイントはケーブルの長さ。USB 3.x Gen 1(5Gbps)はおおむね2m、Gen 2(10Gbps)とGen 2 x2(20Gbps)はおおむね1mまでとなっている。規格で厳密に決まっているわけではないが、標準的な仕様ではこの程度の長さが限界だ。またUSB 3.1時代の古いケーブルは20Gbpsなどの高速なデータ転送を想定していないため、うまく動作しないケースはありうる。
種類 | 最大転送速度 | ケーブルの種類 | 長さの目安 |
---|---|---|---|
USB 2.0 | 480Mbps | USB 2.0 | 4m以下 |
USB 3.1 Gen 1 | 5Gbps | Full Featured | 2m以下 |
USB 3.1 Gen 2 | 10Gbps | Full Featured | 1m以下 |
USB 3.2 Gen 1 | 5Gbps | Full Featured | 2m以下 |
USB 3.2 Gen 2 | 10Gbps | Full Featured | 1m以下 |
USB 3.2 Gen 2 x2 | 20Gbps | Full Featured | 1m以下 |
USB4 Gen 2 x2 | 20Gbps | Full Featured ※対応ケーブルが必要 |
1m以下 |
USB4 Gen 3 x2 | 40Gbps | Full Featured ※対応ケーブルが必要 |
80cm以下 |
バージョン名を省略せずに表にするとこうなる。長さの目安を除くと、USB 2.0以外は同じ構造のケーブルだ。USB 3.xのケーブルは、1m以下なら基本的にどの速度でも利用できる。
こちらも標準仕様ではUSB PDの電流値は最大3Aとなっており、60Wを超える電力を扱うには5Aケーブルが必要。5A対応のケーブルはそのぶん高価だ。
USB4はThunderbolt 3をベースに作られた規格だ。厳密には互換性のない独立した規格であるものの、ほぼ同じものと考えて良い。USB4には「Thunderbolt 3互換モード」という動作モードがあり、USB4端子でThunderbolt 3の機器が使えるためだ。2022年5月時点でUSB4はまだ普及しているとは言い難く、USB4対応機器もまだない。
Thunderbolt 3互換モードはオプション仕様のため、将来的にはUSB4でしか利用できない周辺機器が登場する可能性もある。しかしそれまでは明確な差はないと言っても良いだろう。
Thunderbolt 3とUSB4は異なる規格のため、それぞれに対応ケーブルがある。しかし現状USB4ケーブルでしか使えない機器はなく、使い分けを意識する場面はほぼない。
USB4とThunderbolt 3はともに20Gbpsと40Gbpsの動作モードがある。USB 3.x同様こちらもケーブルの長さで制約があり、おおむね80cmを超えると20Gbpsまでとなる。店頭に並んでいるUSB4ケーブルのほとんどが80cm以下なのはこれが理由だ。
より長いケーブルで40Gbpsの速度を利用するには、「アクティブケーブル」という信号強度を補強する機能を備えたケーブルを使う。ただしThunderbolt 3のアクティブケーブルはUSB 3.xと互換性がなく、USB 2.0とThunderbolt 3でしか利用できないという制約がある。USB4のアクティブケーブルについては、規格は策定されているものの2022年5月時点で未登場。どれほど普及するかは未知数だ。
アクティブケーブルに対して、通常のケーブルを「パッシブケーブル」と呼ぶ。コンシューマー用途でアクティブケーブルを使う機会はほぼなく、明記されたケーブル以外はパッシブケーブルと考えてよい。
USB4とThunderbolt 3への対応はUSB Type-Cケーブルが内蔵するeMarkerの情報で識別する。Thunderbolt 3対応の周辺機器を使うにはいずれかに対応したケーブルが必要になる。例外として、ホスト(主にPC)の端子がUSB4の場合はUSB 3.x用のFull Featured cableでThunderbolt 3機器を使うことができる。もっとも速度は80cm以下でも20Gbpsに制限されるため、対応ケーブルが見つからない時の急場しのぎ以外では利用しない方がよいだろう。
USB PDへの対応についてはUSB 3.xケーブルと同じで、標準は電流値が最大3A(60W)。5Aに対応するケーブルなら最大100Wまで利用可能だ。
何にでも使えるケーブルがほしい場合は、Thunderbolt 4ケーブルを選ぶとよい。現状、購入できるほぼ全ての機器で全ての機能を利用できる。
Thunderbolt 4の主だった仕様はUSB4と同じ。というのも、Thunderbolt 4はUSB4の最低要件を引き上げて認証を必須にした規格だからだ。USB4自体がThunderbolt 3の技術を取り込んだ規格なので、事実上Thunderbolt 4は同3のリフレッシュ版と言ってよいだろう。
ケーブルそのものはFull Featured cableで、ピンや内部配線が増えたわけではない。しかし最低要件が高い分ケーブルに求められるノイズ対策等のスペックも高くなる。そのためThunderbolt 4ケーブルが最も互換性の高いUSB Type-Cケーブルとなる。
Thunderbolt 4は「ユニバーサルケーブル」を採用しており、アクティブケーブルとパッシブケーブルの区別をなくしているのも特徴。Thunderbolt 4ケーブルは最大2mで40Gbpsの速度を利用可能だ。長いケーブルの実態はアクティブケーブルなのだが、Thunderbolt 3ケーブルとは異なり、USB 3.xとの互換性を保っている。制約がなくなっているため、違いを意識する必要がないというわけだ。その代わり、アクティブケーブルなので価格は高い。
Thunderbolt 4はUSB PDも5A(100W)へ対応することが基本となっており、3A(60W)ケーブルはない。この点も安心だ。
ここまで見てきたように、USB Type-Cケーブルは見た目がほとんど同じにも関わらず種類が多い。以下がまとめた表だ。
種類 | 最大転送速度 | ケーブルの種類 | 長さの目安 | 備考 |
---|---|---|---|---|
USB 2.0 | 480Mbps | USB 2.0 | 4m以下 | - |
USB 3.1 Gen 1 | 5Gbps | Full Featured | 2m以下 | - |
USB 3.1 Gen 2 | 10Gbps | Full Featured | 1m以下 | - |
USB 3.2 Gen 1 | 5Gbps | Full Featured | 2m以下 | - |
USB 3.2 Gen 2 | 10Gbps | Full Featured | 1m以下 | - |
USB 3.2 Gen 2 x2 | 20Gbps | Full Featured | 1m以下 | USB Type-Cのみ |
USB4 Gen 2 x2 | 20Gbps | Full Featured | 1m以下 | 要対応、USB Type-Cのみ |
USB4 Gen 3 x2 | 40Gbps | Full Featured | 80cm以下 | 要対応、USB Type-Cのみ |
Thunderbolt 3 パッシブケーブル |
40Gbps | Full Featured | 80cm以下 | 要対応、USB Type-Cのみ |
Thunderbolt 3 アクティブケーブル |
40Gbps | Full Featured | 80cm以上 | 要対応、USB Type-Cのみ |
Thunderbolt 4 | 40Gbps | Full Featured | 2m以下 | 要対応、USB Type-Cのみ |
速度がケーブルの長さによって影響されるようになってからは、5Gbpsが2m、10Gbpsが1mというように、速度と長さが対応するようになっているのが分かる。Thunderbolt 4ケーブル以外はUSB PDの3A/5A対応があるため、種類はこの約2倍になる。
USB Type-Cケーブルは製品によって価格の幅が広い。ケーブル選びの際は、用途に合わせて選ぶと良いだろう。スマートフォンの急速充電で利用したいだけであればフルスペックのケーブルは不要なため、USB 2.0のケーブルで十分。USB 3.xの10Gbpsや20Gbpsを利用するのであれば短いケーブルを選べばよい。あれこれ悩みたくなければThunderbolt 4ケーブルがお薦めだ。ただしThunderbolt接続の機器を利用しないのであれば、Full Featuredの5A対応、1m以下のケーブルがあれば困ることはないはずだ。
ここまでUSBのさまざまな仕様を見てきた。あえて触れなかった仕様も多いが、それでも非常に複雑だということが分かったと思う。しかしUSBの真の魅力は、細かな仕様が分からなくても使えるという点だ。
始めに触れたように、USBは後方互換性が非常に優れている。高速なデータ転送速度が利用できない場合は速度を落として動作するという原則があり、バージョンが違うから動かないということはほぼない。USB PDやAlternate Modeなど付帯的な機能は利用するのに条件があるものの、USBのデータ通信ができないという状況は非常にまれ。この「つないだらとりあえず使える」という使い勝手のよさが他のインターフェースを廃れさせ、一人勝ちとも言える状態を生んだと言える。
一方で、詳しく知れば知るほど正しい製品選びができる、調べがいがある点もユニークだ。使えるがゆえに本来の速度が出ていないことに気付いていないというケースもあるため、一度PCと周辺機器の環境を見直してみるのも良いかもしれない。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っております。取り扱いメーカーや詳しい製品情報については下記ページをご覧ください。
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