製品レポート

Product Report

夏を乗り切るCPUクーラーはこれだっ!【水冷編】

CPUクーラーには大きく分けて2種類ある。ヒートシンクを直接CPUに固定してファンで冷やす空冷と、冷媒液を使ってラジエーターに熱を運び、ファンで冷やす水冷だ。一般的に、水冷の方が空冷よりも冷えるとされる。

CPUの発する熱を奪ってオーバーヒートを防ぐという意味では、両者のやっていることは基本的に同じだ。水冷の場合はCPUから離れたところにヒートシンク(ラジエーター)を固定できるのが特徴。取り付け場所をある程度自由にできるので、より大きなヒートシンクが使える。一方で、水冷は導入のハードルが高いことでも知られる。ポンプや継ぎ手などのパーツを自分で選ぶ必要がある上、組んだ後の定期的なメンテナンスも必要なためだ。これらの面倒な点をなくして人気となったのが「一体型水冷クーラー」や「簡易水冷クーラー」などと呼ばれる製品。本来パーツ単位で購入して自分で組み立てるところを、出荷時点で組み立て済み、冷媒液も封入済みとユーザーの手間を大幅にカットした。またメンテナンスフリーをうたっており、空冷クーラーと同じ感覚で使える手軽さが売りだ。

一体型水冷クーラーは基本的に後から構成を変えられない点も空冷クーラーと同じ。その分製品選びが重要となる。ここではタイプの異なる3製品を紹介する。これを参考に、自分に合った水冷クーラーを見付けてほしい。

Nepton 140XL(Cooler Master Technology)

Nepton 140XL 製品画像


対応ソケット LGA2011/1366/1156/1155/1150/775
Socket AM3+/AM2+/FM2/FM1
搭載ファン 直径14cm×2
ファンの回転数 800~2000回転/分
ファンの騒音値 21~39dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅139×奥行き171×高38mm


ファン1個分のラジエーターのモデルは12cm角ファンを採用する場合が多い中、ワンサイズ大きい14cm角相当のファンを2個搭載した。ラジエーターもその分大きくなっており、高い冷却能力が期待できる。付属ファンには風が拡散しにくい形状の羽を採用し、低ノイズで効率よく冷却できるとしている。

ファンが14cm角だと使えるPCケースが限られてしまいそうだが、その点もしっかりフォローしている。ラジエーターには12cm角ファン用のねじ穴も空いており、別途12cm角ファンを用意すればPCケースが14cm角ファンに対応していなくても大丈夫だ。

ヘッドは銅製

ヘッドは銅製。内側には細かいフィンが密集しており、効率よく冷媒液に熱を移動させる。

ファンはPWM対応で、800~2000回転/分で動作

ファンはPWM対応で、800~2000回転/分で動作する。ねじ穴付近には防振ゴムが貼ってあり、振動によるノイズを低減する。

付属品が多く、組み立ての手順も多い

付属品が多く、組み立ての手順も多い。ただマニュアルは文字が無く、全て絵で解説しているので分かりやすい。写真のケーブルは2個のファンを1個の電源端子につなぐためのもの。

Water 3.0 Extreme(Thermaltake Technology)※販売終了製品

Water 3.0 Extreme 製品画像


対応ソケット LGA2011/1366/1156/1155/1150/775
Socket AM3+/AM2+/FM2/FM1
搭載ファン 12cm角×2
ファンの回転数 1000~2000回転/分
ファンの騒音値 20dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅120×奥行き270×高27mm


長さ24cmのラジエーターを採用(実際のラジエーター部の長さは27cmだが、固定用のねじ穴が12cm角ファン2個分の位置のラジエーターは便宜上24cmと呼ぶことが多い)。12cm角ファンを2個横に並べて風を当てられる。冷却効率はよいものの、取り付けには上面パネルに12cm角ファンを隙間を開けずに並べた位置のねじ穴が必要。またマザーボートと上面パネルの間に十分なスペースがないと干渉する恐れがあるなど、PCケースとの組み合わせにも注意する必要がある。ここ1、2年はPCケース側も水冷クーラーを意識して設計されているため、冷却重視の製品ならまず問題は起こらない。古いPCケースと組み合わせる際には気を付けよう。また、Water 3.0 Extremeには専用の制御ソフトが付属している。CPU温度や冷媒液の水温、ファンとポンプの回転数をソフト上で確認できるほか、ファンの回転数を変更することも可能だ。

Water 3.0シリーズにはラジエーターが12cm角ファン1個分の大きさのモデルもある。ラジエーターの厚さが27mmの「Water 3.0 Performer」と49mmの「Water 3.0 Pro」の2種類だ。いずれも12cm角ファンが2個付属する。

ヘッドは銅製

ヘッドは銅製。周囲にある突起は固定具を留めるのに使う。

付属ファンは羽の曲面が2段になっている独自の「ダブルカーブファン」

付属ファンは羽の曲面が2段になっている独自の「ダブルカーブファン」。この機構により、従来のファンと比べて風量を38%も増やしたという。回転数を低く抑えても冷却能力を維持できる。PWM対応で、回転数は1000~2000回転/分だ。

様々なプラットフォームに対応

CPUを固定するねじなど多くのパーツを共通にしているため、様々なプラットフォームに対応する割には余るパーツが少ない。

Reserator3 MAX(Zalman Tech)※販売終了製品

Reserator3 MAX 製品画像


対応ソケット LGA2011/1366/1156/1155/1150/775
Socket AM3+/AM2+/FM2/FM1
搭載ファン 直径12cm×1
ファンの回転数 1000~2200回転/分
ファンの騒音値 18.9~20dB(A)
ラジエーター部のサイズ 幅120×奥行き145×高79mm


円形のラジエーターが特徴。外観からは分かりにくいが、ラジエーターは大小2個のフィンブロックで構成されている。冷媒液を通すパイプは4カ所で折り返し、フィンブロックとの接触面積を増やしている。固定用の穴は12cm角ファンと同じ位置なので、多くのPCケースに取り付けられる。

冷媒液はnm(ナノメートル、ナノは10億分の1)単位の微細な粒子を混ぜた「ナノ流体」を採用。一般的な冷媒液より熱伝導率を向上させられるという。ファンは直径12cmでフレームの無い構造。ラジエーターを覆うフレームに固定されている。ファンがむき出しなので、周辺のケーブルを巻き込まないように注意が必要だ。

ヘッドは銅製

ヘッドは銅製。内部には多数のフィンを備え、熱を素早く冷媒液に移す。LEDを内蔵しており、動作中は青く光る。

ファンはラジエーターに取り付け済み

ファンはラジエーターに取り付け済みで、基本的に取り外しはできない。こちらにも青色LEDを内蔵している。

ヘッドは小型だが、固定にはバックプレートを使う

ヘッドは小型だが、固定にはバックプレートを使う。ねじが3種類あるので、どれを使うかきちんと確認しよう。

製品選びのポイント

水冷クーラーはラジエーターが大きいほど冷却に有利なため、予算や後述するPCケースとの兼ね合いが問題無ければ大型ラジエーターの製品がお薦め。基本的に、ラジエーターが厚く、長くなるほどよく冷えると考えてよい。長さ24cmのラジエーターなら、ファンの数を増やして回転数を落とすといった工夫もしやすくなる。

最も高いハードルになるのが、PCケースとの組み合わせだ。空冷クーラーとは異なり、一体型水冷クーラーはラジエーターを取り付ける場所が必要になる。通常は背面か上面になる。取り付け用のねじ穴はファンと同じ。つまり、PCケースの対応ファンが、使える水冷クーラーのラジエーターの大きさに直結する。これからPCケースも購入するなら、ここも注目しておくとよいだろう。24cm、28cmのラジエーターのねじ穴は、ファンを2個くっ付けて並べた際の位置になる。隙間が空いていると、2個分の設置スペースがあっても穴の位置が合わなくなってしまう。

大型ラジエーターを使う際は、上面にファン用のねじ穴が必要

大型ラジエーターを使う際は、上面にファン用のねじ穴が必要。写真の「Define R4」(Fractal Design)のように、12cm角、14cm角用の穴があると安心だ。ちなみに、Define R4は12cm角用の穴が2カ所空いており、干渉を避けるためにマザーボードから少し離してラジエーターを付けられるようになっている。

背面ファンの位置につける場合

背面ファンの位置に付ける場合、バックパネルの分マザーボードから浮いた状態になるので、ヒートシンクとの干渉はまず起こらない。


また、ねじ穴だけで搭載可能か判断するのは早計だ。マザーボードと上面の間にあるスペースも確認しよう。ここが狭いと、マザーボードの基板やVRMのヒートシンクがラジエーターと干渉する恐れがある。マザーボードを固定するねじ穴から5、6cm空いていれば大丈夫だろう。

取り付けやすさ

★★ Nepton 140XL
★★★ Water 3.0 Extreme
★★★ Reserator3 MAX


各製品を見て行こう。まずはNepton 140XLだ。

ファンが14cm角相当と大きいため、取り付けられるPCケースは限られてしまう。背面か上面に14cm角ファンを取り付けられることを確認しておこう。チューブはFEP樹脂製。柔軟に曲げられるので取り回しに苦労はしないだろう。ファン2個とラジエーターで厚みが合計8.8cmあるため、マザーボードをCPUソケット付近まで覆ってしまう。その下にある端子はアクセスしにくくなるので注意だ。

チューブが長めなので若干たるみができる

チューブが長めなので若干たるみができる。上面ファンやグラフィックスボードの有無でラジエーター側の接合部を上下どちらに向けるか決めるとよいだろう。

マザーボードのヒートシンクとはまず干渉しない

マザーボードのヒートシンクとはまず干渉しない。ただCPU用+12Vの端子にはアクセスしにくくなる。


Water 3.0 Extremeはラジエーターが大きいので背面ファンの位置には基本的に取り付けられない。ヘッドを軽く仮留めしてからラジエーターを固定し、最後にグリスを塗ってヘッドを取り付け直す、という手順だと作業しやすい。ファンとラジエーターで厚みが5.2cmあるため、マザーボードの上にそれ以上スペースがあるのが望ましい。付属ソフトで監視、制御する場合、ポンプから出ているUSB端子をマザーボードになぐ必要がある。

長さ24cmのラジエーターは上面に取り付ける

長さ24cmのラジエーターは上面に取り付ける。横から見るとファンしか見えない。

端子にアクセスしにくいといった状況は生まれやすい

マザーボードのレイアウトにもよるが、マザーボードの端にあるヒートシンクと干渉したり、端子にアクセスしにくいといった状況は生まれやすい。


Reserator3 MAXはファンも取り付け済みなので作業手順が少ない。ただ、フレームが無いのでファンの羽の部分を持ってしまわないように注意しよう。バックプレートは付属の両面テープでCPUソケットの裏側に固定できるので、ヘッドの固定もしやすい。

今回の3製品の中で最も他のパーツとの干渉が起こりにくいと思われる

今回の3製品の中で最も他のパーツとの干渉が起こりにくいと思われる。ラジエーターの固定も背面ファンが12cm角に対応していればOKで、導入のハードルは低い。

シャシーとの間に12cm角ファンを挟むことも可能

付属の長いねじを使うと、シャシーとの間に12cm角ファンを挟むことも可能。冷却能力を引き上げられる。

冷却性能

★★★ Nepton 140XL
★★★ Water 3.0 Extreme
★★ Reserator3 MAX


CPU Core i7-4770K
メモリー DDR3-1600 4GB×2
マザーボード MSI Z87-G45 GAMING
SSD OCZ Vector 150 240GB
PCケース Fractal Design Define R4
電源ユニット Fractal Design INTEGRA R2 750W
OS Windows 8.1 Update 64ビット

テスト環境はCore i7-4770K、Intel Z87搭載マザーボードなど一般的なもの。CPU温度の確認には「HWMonitor 1.25」の「Package」の数値を使用した。CPUへの負荷には「OCCT 4.4.0」を使い、開始後10分前後の温度を採用した。テスト中は側面パネルを閉め、ケースファンは全て動作させた。テスト中の室温は27℃。Water 3.0 Extremeは付属ソフトでファンの回転数を変えられるため、「Silent」と「Extreme」の設定でテストした。

いずれの製品も負荷時にCPU付属クーラーより20℃以上低くなっており、冷却性能の高さが伺える

いずれの製品も負荷時にCPU付属クーラーより20℃以上低くなっており、冷却性能の高さが伺える。Water 3.0 Extremeはラジエーターが最も大きいだけあり、「Extreme」設定では最も冷えて負荷時に60℃を下回った。Nepton 140XLも負荷時に1℃差とWater 3.0 Extremeに迫っている。

騒音

Nepton 140XL
★★ Water 3.0 Extreme
★★ Reserator3 MAX


水冷クーラーは冷却能力が高い、つまり静音化できる、と考えている人もいるだろう。しかし、これは必ずしも正しいとは限らない。冷却能力の高い空冷クーラーが静かにできるのは、大型のヒートシンクなどで放熱性を高め、少ない風量でもきちんと冷やせる仕組みだからだ。一方で水冷クーラーは空冷クーラーとは構造が異なる。水を循環させるポンプはもう一つの騒音源となるため、静音化するのはむしろ難しい。

今回の製品のテスト結果を見てみよう。騒音値はファンの大きさや回転数、数などに大きく影響される。Nepton 140XLは直径14cmファン×2、Water 3.0 Extremeは12cm角ファン×2、Reserator3 MAXは直径12cmファン×1だ。

騒音計は側面パネルから約25cmの距離に設置した。製品間の差を分かりやすくするため、測定中は側面パネルを外している。


負荷時はCPU付属クーラーが静かだ

CPU温度と比べて、結果に幅ができた。Nepton 140XLは飛び抜けて騒音値が高かった。温度測定の際にWater 3.0 Extremeに近い数値になったのはファンの回転数が高かったためだろう。テスト結果は最大値と考え、BIOSの設定などでファンの回転数が上がらないようにして使った方がよいと思われる。Reserator3 MAXも、最大回転数まで上がらなければ気にならないレベルだ。

Water 3.0 Extremeは「Silent」または「Extreme」に設定するとファンの回転数が固定されてしまう。そのためグラフではバーの部分がほとんど見えなくなってしまった。「Silent」設定ではCPU付属クーラーより静かだったので、これなら静音化対策として導入するのも有りだろう。

空冷クーラーより少しクセがあるものの、冷却性能は魅力

これまで見てきたように、一体型水冷クーラーは空冷クーラーより少し注意点が多い。しかし本格的な水冷とは比べ物にならない手軽さで、高い冷却性能が得られるのは魅力だ。製品のバリエーションが豊富なので、自分の環境に合わせて製品選びができるのも良い。これを機に、ぜひ一体型水冷クーラーの世界を体験してほしい。

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(文・写真=SPOOL

※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

紹介製品はこちら
Nepton 140XL
製品の詳細
Cooler Master
Nepton 140XL
冷却性能に優れるJetFlo 140ファンを2基備えたラジエータを採用する水冷一体型CPUクーラー
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Thermaltake
Water 3.0シリーズ
風量に優れる独自形状ファンと取り回しやすい薄型ウォーターブロックを採用する水冷一体型CPUクーラー
※販売終了製品
Reserator3 MAX
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Zalman
Reserator3 MAX
オリジナリティあふれる新設計の水冷一体型CPUクーラー

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